通販新聞 2022/3/17 7:00

本紙が2月中旬に実施した「主要通販各社の新卒採用調査」によると、2022年春に入社予定の新卒社員の採用数は、前年と比べて減少した企業が多い結果となった。一方で、採用活動自体は学生側が有利となる「売り手」市場を感じている企業が多かったようで、優秀な人材の争奪戦は依然として激しさを増していることが窺えた。コロナ禍で取り組みが進んだ、主要通販実施企業各社の新卒採用活動の状況を見てみる。

2022年新卒採用状況、人数を抑える傾向に

本紙が主要な通販実施企業約30社を対象に調査を実施し、有効回答を得られた各社の今春の新卒採用の状況は別表の通りとなった。前年との採用人数の比較について増減数を回答した企業の内、「増加」したのが4社、「減少」したのが10社となった。また、「前年と同数」とした企業は2社だった。

通販新聞 通販実施企業約30社の2022年新卒採用状況
通販実施企業の2022年新卒採用状況

採用人数の前年比を見てみると、業容拡大などに対応するため増加したところがあった一方で、多くの企業が前年よりも採用人数を抑えている傾向が見られた。

最も増加幅が大きかったのはジャパネットグループで、前年比17人増。事業拡大に合わせて新卒採用を強化したことを理由に挙げている。回答企業の中では唯一の二ケタ増となっている。次いで、アスクルの同9人増、ゴルフダイジェスト・オンラインの同3人増となった。

一方で減少幅が大きかったのは再春館製薬所で前年比79人減。これは、採用計画の変更によるもので、これまでは、各職種の不足分を補う積み上げ式の採用計画であったが、全社員数を基にした必要人員の採用計画に変更したためとなる。

また、男女比率に関しては回答企業15社中、10社が男性よりも女性の入社人数が多くなり、同数だったのは1社。残りの4社は女性よりも男性の方が多かった。

採用活動「自社サイト」活用が最多

採用告知に当たって活用した手段(複数回答)としては、「自社サイト」が最も多く、次いで大手就活サイトの「マイナビ」、「新卒紹介会社」、「イベント参加(オンラインなども含む)」という順だった。

学生に直接アプローチする「ダイレクトリクルーティング」を行った企業も多く、従来からあった「合同説明会」や「インターンシップ」などの利用割合がやや低下した印象。

エントリー数については、各社でばらつきがあったものの多いところでは1万人程度、そのほかにも2000人~8000人の間で回答した企業が目立った。

多くの企業が6月の内定に向けて進行

採用活動の時期については、多くの企業が6月に内定を出すことをゴールに、おおむね半年前後の期間でスケジュールを設計。募集の開始時期については、2月からの企業がいくつか見られた一方、前年の12月からとするところも多く、インターン期間を含めると前年の夏から実施しているところもあった。

前年に、コロナ禍による採用活動の中断期間などが発生したため、例年よりもやや開始が遅くなってしまったという声も聞かれた。

採用活動オンライン化のメリット「場所・時間にとらわれない」

採用手法については、本項目に回答した17社の企業すべてが何らかの形でオンラインを取り入れたとしている。もともとはコロナの感染対策として導入が進んだものだが、コロナ禍2年目を迎えたことでそのノウハウが各社で蓄積されて更なる利用につながったもよう。

前年までは、会社説明会や初期面接などでオンラインを活用しているところが目立ったが、今回は最終面接を含めたすべての工程をオンライン化しているところも散見。なかには内定後のフォローアップや社員との交流会もオンラインで行ったケースがあった。

関連して、オンライン選考の利点について、主な回答では「場所や時間に縛られず学生が集まり、より企業側・学生側双方の視野が広まっていること」(RIZAPグループ)、「遠方の学生でも交通費や時間をかけずに選考に参加しやすいため、選考途中の辞退が少なかった」(ファンケル)、「学生側・企業側の移動負担が減り、より多くの学生と接触できる機会が増えた」(ジャパネットグループ)、「母集団形成が増える点」(オークローンマーケティング)、「立地的な不利を克服し、広く応募者を集められる」(再春館製薬所)、「現場社員を含めた工数削減。場所による制限がなくなるため、大人数での説明会実施が可能に(リアルで行っていた際は、最大でも20名ほど)」(ゴルフダイジェスト・オンライン)、「学生の移動時間がないため、学生の就活に使う可処分時間を増やすことにつながった点」(CROOZSHOPLIST)、「説明会の段階から対面形式の場合よりも顔と名前を一致して把握することができる」(新日本製薬)、「遠方学生からの応募が増えた」(マガシーク)などといった声があった。

課題は「企業の雰囲気をどう伝え、学生の本質をどう捉えるか」

その上で、今後の課題として感じた部分についても質問。

主な回答では「ロジックを超えた情緒的訴求(会社の雰囲気、人のよさなど)による意向上げ」(オルビス)、「企業の魅力付け」(オークローンマーケティング)、「学生が不安なく選考に進めるよう会社のことをより知ってもらうためのコンテンツの企画や工夫と考えている」(ジャパネットグループ)、「オンライン面接に慣れている学生に対する企業側の対策の難しさ。オンラインと対面での学生の面接ギャップによる面接通過率の予測が難しかった」(ジュピターショップチャンネル)、「学生の本質(振る舞いなどの人間性)をいかに計るかという点」(再春館製薬所)、「参加ハードルが下がったことで、事業理解、企業理解があまり深め切れていない状態の学生がいる」(ゴルフダイジェスト・オンライン)、「回線接続などのネットワーク環境の個人差、各イベント参加が容易であるが故のキャンセル率の増加、より深い学生の質の確認といった面で難しさを感じた」(DINOS CORPORATION)、「オフィスなどの『場』から感じ取れる社風などが伝わりにくい」(ZOZO)などがあった。

独自の選考内容を実施する企業も

そのほか、選考過程での各社の特徴的な取り組みに関しては、ジャパネットグループが「自分の想い」を言葉や表情、行動で表現することを重視していることから、「1分間の自己紹介動画の提出」を実施

RIZAPグループでは面接内の即時フィードバックを実施。ジュピターショップチャンネルは、面接すべてを個人面接で行い、先輩社員との座談会も行う。CROOZSHOPLISTは、事業を伸ばすために行っている、社長と社員の間で行われる課題解決プロジェクトの会議の場に同席するフローを取り入れた

ベルーナは人事部面談、現場社員面談、レポート提出を実施。新日本製薬では二次面接合格後、最終面接までに自己プレゼン資料を作成してもらっており、人柄や性格などの判断材料にしているという。

学生の「働き方」への関心高まる、コロナへの対応姿勢を重視

2022年春入社の新卒採用市場について、企業が感じた印象を聞いてみた。本項目の質問に回答した15社の内12社が「売り手市場(学生側が優位)」と回答し、「買い手市場(企業側が優位)」と回答した企業は2社となった。「どちらでもない」は1社となっている。

前回調査では回答16社の内、7社が「買い手」とし、「売り手」は5社だった。前年はコロナ禍によって全産業で新規採用数の絞り込みが見られ、買い手市場の傾向が一時強まった印象も受けていたが、ここにきて再び売り手市場に転じたようだ。

「売り手」とした主な回答理由では、「採用オンライン化により、学生1人の選考参加企業数が増加した印象」(ジャパネットグループ)、「各社とも内々定通知を早期化しており、弊社選考過程で他社の内々定保有者が多数。そのため、内定承諾獲得に苦戦」(再春館製薬所)、「21年卒比という観点では、『売り手』となった印象(各社採用活動を再開した例年同様に行っていた印象)。一方で、数年採用を行っているが、現場で学生と接しながら採用を行っている立場から申し上げると、学生視点で見たら『買い手』、企業視点で見たら『売り手』なんだと感じる。双方、『有利』だとはまったく感じていない印象」(アスクル)、「採用数を絞った企業もあると思うが、引き続き売り手市場だったように感じる。しかし学生によっては、21年卒の先輩の内定取り消しなどを見たことで、焦りや不安を抱えている人も多少いるように映った」(ゴルフダイジェスト・オンライン)、「採用オンライン化により、学生が複数社選考を受けていることが多く、自社への志望度の醸成にも苦戦した」(DINOS CORPORATION)、「新型コロナによりオンライン中心のイベント・選考が主軸となっていくなかで、学生は場所にとらわれず多くの企業と接点を持ち、選択しやすい環境下になっていたように感じる」(RIZAPグループ)、「他社内定による選考辞退者や内定複数保有学生も多くいたため」(ジュピターショップチャンネル)、「例年に比べて就活生市場として内定率が上昇したこと、内定辞退率が上昇したことを考えても学生が企業を選ぶ機会が増えたように感じたため。ただ、採用数を絞っている(数名規模の)会社は応募数が増えたと聞く声も多いので買い手市場だと思う」(CROOZ SHOPLIST)、「内定辞退数は少なかったが、買い手市場の実感がないため」(ファンケル)、「大卒の有効求人倍率は1・5倍であったため」(ユーグレナ)などがあった。

一方で、「買い手」とした意見では、「新型コロナウイルス感染症の影響がまだ残っているため」(ベルーナ)といった声が聞かれた。また、「どちらでもない」の回答では、「弊社のターゲット人材では質問に該当するような印象を受けなかったため」(オルビス)との声があった。

「成長できる環境があるか」も注目

就職活動を行っている学生たちは、どのような項目を重視して企業選びを行ったのか。

企業側の捉え方としては「事業の安定性・成長性・働きやすさ。新しい事業に取り組んでいること」(マガシーク)、「企業側の選考フロー・勤務状況に関してリモート対応が出来ているかが重要なポイントだった。コロナ禍で学生自身も不安定な社会情勢を身近に感じ、自身のキャリア形成を意識している学生が多かった印象。入社後にどのようなスキルが身につくのか、成長できる環境・研修体制が整っているかを尋ねてくる学生は多かった」(新日本製薬)、「過去と比較すると、働き方(テレワーク・フレックス)に関する質問が多く、重視している印象を持った。またコロナへの対応で、企業の従業員へ対する姿勢を見ている印象を持った」(アスクル)、「例年以上に、企業の成長性が高いかどうか、市場のニーズや変化に柔軟に対応できるかを重視している傾向があった」(スクロール)、「自分のやりたいことができるかという目線、コロナの影響による働き方と、世の中の流れにどれだけ柔軟に企業が対応しているのかということを重視している学生が多かったように思える」(DINOS CORPORATION)、「職場環境、福利厚生、自分のやりたいことが実現できるか、若手の活躍。コロナ禍における会社の対応(在宅ワーク、時差出勤など)にも関心が高そうだった」(ファンケル)などがあった。

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