「ロコンド」のジェイド田中社長が語る「Z-CRAFT」ロイヤルの経営不振の理由+「7つのお宝」とは
靴や衣料品の通販サイト「LOCONDO.jp(ロコンド)」を運営するジェイドグループは、民事再生手続き中のカジュアル衣類やシューズなどの輸入販売店舗「Z-CRAFT」を運営するロイヤルに対し、スポンサーとして再生支援をするスポンサー契約に名乗りをあげた。ジェイドグループの田中裕輔社長が「株主への手紙」で、再生支援への思いを語っている。
5つの改革ポリシー
ロイヤルが民事再生に至った背景には、売り上げのメインである並行輸入業が急激な円安の影響を受けたことがあると指摘。その上で5つの改革ポリシーをあげた。

① 競合優位性のない事業群をジェイドグループシナジーで再構築へ
ロイヤルは3C(Company、Competitor、Customer)分析の観点で「市場(Customer)」視点だけを短期目線で伸びるかどうかを判断していた面が強かったと指摘。今後は、3C分析の視点で丁寧に精査し「中長期的に成長する市場において唯一無二のビジネスモデルを構築できる」と判断した戦略のみを実行していく。ジェイドグループとのシナジー創出の視点を常に考え、すべての事業を他社と差別化された唯一無二にしていくという。
②広げすぎた事業やブランド。商品群に「選択と集中」を
ロイヤルは事業やブランド、商品群を「広げすぎ」てしまったと指摘。それぞれへの投資が抑制され、中途半端な武器になり消化できなかった在庫が数多くあるという。年商100億円規模の会社は「ココだけなら負けない」という領域に「選択と集中」を推進すべきと指摘。ジェイドグループはその領域に対して経営資源を投下していく。事業やブランド、商品群も「聖域なき選択と集中」を進めていくとしている
③経営インフラへの投資遅れをジェイドグループの物流 x IT 基盤導入で最新鋭へ
新しいビジネスへの投資を優先していたため、経営インフラやヒトモノカネの「経営資源」への投資が遅れ、生産性向上のボトルネックになっていたという。ジェイドグループが持つ社内システムをロイヤルに導入、投資への遅れを挽回(ばんかい)。Slackの全導入やChatGPTの組み込みなど、ジェイドグループのノウハウを生かしてDXを一気に進める。
④キャッシュマネジメントの不備をキャッシュマージンで徹底管理
ファッション業界や小売業界の経営不振の最大の要因は在庫で、その消化が遅れることによるキャッシュの欠如と指摘。PL(損益計算書)上の粗利率が高くても業績不振に陥るのは、BS/CF(貸借対照表/キャッシュフロー計算書)視点での経営管理が甘い場合が多いという。
ジェイドグループは、BS、PL、CFを可視化しキャッシュ創出力を測定する「キャッシュマージン(CM)」で仕入れを厳密に管理していく。なお、ジェイドグループはここまで、M&Aを繰り返しながらも金融機関からの借入金はゼロの無借金経営。この経営管理をロイヤルにも導入し、稟議プロセスなども刷新していく。
⑤整理・整頓・掃除・清潔の不備に徹底的な4Sポリシーを
ジェイドグループが徹底する整理・整頓・掃除・清潔を、ロイヤルにおいても徹底していく。
ロイヤル「7個のお宝」
田中社長はロイヤルには「7個のお宝」が存在すると言及。ECモール事業、プラットフォーム事業、ブランド事業の3事業を展開するジェイドグループは、ロイヤルを「何とかして獲得したかった」(田中社長)と言う。

①人気ブランドのスニーカーの仕入網
「ロコンド」にはさまざまなショップが出店し、スニーカーを販売しているが需要に対して供給が追いついていないという。仕入網強化が課題だったロコンドは、ロイヤルの獲得によってこの課題の解決につながるとしている。
②隠れたセレクトショップ「Peace Park」
ロイヤルのリアル店舗はほとんどが赤字もしくは低利益率であったものの「Peace Park」の2店舗(石川県、富山県)は月商1000万円、営業利益率10%という。課題はあるものの、マーケティングの4P(Product、Price、Place、Promotion)にこだわって投資すれば「Peace Park」は日本中に支持される自信があると言及。「Peace Park」の自社ECサイトはジェイドグループが展開する運営代行サービス「BOEM」を導入、ECモールは「ロコンド」で展開すればシナジーを創出できるとしている。
③「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」「amazon」などのECモール運営ノウハウ
ジェイドグループは「LOCOMALL」の屋号で「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」など他社ECモールでも販売している。ただ、ジェイドグループはECモールはパートナーでありながら、同時に競合でもあるため注力していない。ロイヤルは「楽天SOY」で総合4位になるほど、ECモール運営に長けている。そのノウハウや知見を「LOCOMALL」運営に生かすとしている。
④4大都市をカバーする卸の販売網
ジェイドグループが販売権を保有する「Reebok」のEC化率はおよそ30~40%。他のスポーツブランドと比べて卸売上を拡大しきれていないという。業務強化の検討のなかで、支社や店舗ラウンドが必要なケースがあったという。ロイヤルの獲得で、名古屋、大阪、福岡支社がグループに加わり、4大都市圏をカバーする卸の販売網を構築できる。
⑤全業種へリーチできる物流の営業機能
ジェイドグループの物流拠点「LOCOPORT」の物流フローは国内でもトップクラスで、「e-3PL」という形で「ロコンド」出店ショップの物流業務受託を手がけている。ただ、出店ショップ向け営業のための物流に特化した営業機能はなく、増床した新倉庫もまだ稼働率という面では改善余地が大きいという。
「倉庫の空きキャパシティをECモール事業または物流受託で活用できていれば営業利益が10億円は変わっていたのではないか」と田中社長。ロイヤルの3PL事業が加わることで、営業機能を強化できるとしている。
⑥ファッション以外のカテゴリーの人気商品
猛暑で靴や服が売れないという長年の課題を抱えていた。ただ、「カテゴリーを拡大しても失敗するのは目に見えていた」(田中社長)ため、他カテゴリーの強化もしくはM&Aを考えていたという。
ロイヤルはスマートテーブルで家電領域をヒットさせ、多くの店舗が扱っている。他にもポータブルファンやキッチン用品でそれぞれ1型で1億円程度のヒット商品があり、コスメの輸入ルートも保有する。ファッション以外の強化という面で、ロイヤルは大きな可能性を秘めているとしている。
⑦生産の品質をさらに向上させるための海外検品機能
ジェイドグループはブランド事業を強化するために、「検品機能の強化」を重要なテーマの1つに掲げている。ただ、海外工場国に支社を構えて検品スタッフを抱えることが必要だが、ブランド事業単体ではそこまでの規模ではなく、高コスト体質にもなってしまうという課題を抱えていた。ロイヤルは中国の検品子会社を抱えているため、それを最大限に活用するという。
田中社長はロイヤルの民事再生のスポンサー契約の締結は「最高の結婚」であると形容。ロイヤルの民事再生の原因にもなった課題をジェイドグループのシナジーを軸とする5大改革ポリシーで解決。ロイヤルの「7個のお宝」を活用しジェイドグループの弱点を強化していく。
お互いのニーズに完璧に合う結婚だと思っても時には上手くいかないのがこれまた結婚、良い結婚にするのか悪い結婚にするのかはこれからの「実行」次第。良い結婚にできれば2026年度こそは営業利益30億円以上の事業計画が立てられるとみている。これから半年かけて実行しながら精査も進めていく。(田中社長)
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