ネットショップ担当者フォーラム プログラム委員 リレーコラム

カゴ落ちを減らすために、あなたが今すぐできる3つのこと

あなたのサイトにとって最適な決済とは? いますぐできる3つのポイントでその答えを探りましょう。

秋山 恭平

2014年5月19日 12:51

決済のようにショッピングカート内にかかる改善は、純粋な販売サイト内の改善と比較するとインパクトが小さいと見られ、後回しにされる傾向にある。しかしそれは間違っている。購買(売上)というゴールに対する距離を意識してほしい。サイトに訪れた10人とショッピングカートに商品を入れた10人、両者の購買までの距離を考えてみれば、決済を最適化し、カゴ落ち防止(離脱防止)策を取ることが非常に重要な改善項目だと自ずと分かるはずだ。

あらゆる決済方法を揃える必要はない

最近まで私はマルチペイメントの重要性を説いてきた。多様な価値観を持つ顧客がいるのだから、決済手段を絞るのではなく幅広い決済手段を用意することで顧客満足を実現し、それがカゴ落ち防止につながる、と。

確かにこれは正しい。ただし、これはネットショップ担当者からすれば分かっているけど簡単ではない選択だ。なぜなら、「決済」と言ってもクレジットカード、代引き、銀行振込、ネット銀行、電子マネー、後払いなど、数多くのサービスが存在し、導入サービス数に比例してシステムの改修・保守、そして何より運用負荷が増えるからだ。

 

下記は弊社が独自で取得した商材軸で切った「利用したい決済」の実態調査だ。

インターネットショッピングの際に利用する決済方法(N=2,064人) 調査:マクロミル
図:インターネットショッピングの際に利用する決済方法(N=2,064人)
調査:マクロミル

一目瞭然だが、どの商材でもクレジットカードは根強い支持を得ている。ただし、2番目以降に希望する決済は商材によって異る。この顧客属性を把握し、適切な決済手段を用意することでカゴ落ちを防ぐことができるのだ。

ここでのポイントはあらゆる決済を揃えるのではなく、まずは必要最低限の決済の選択肢を準備することにある。無理せず将来的に選択肢を増やしていけば良いのだ。

カゴ落ち防止のための3つのポイント

次に,実際のネットショップが取り入れている決済の最適化のポイントを3つご紹介する。利用しているカートによってカスタマイズの可否はあるものの、比較的取り組みやすいことばかりなので、一度試してみてはいかがだろうか。

①決済の表示順とデフォルト値を設定する

あるリピーターが多いサイトではクレジットカードを上位に表示し、新規顧客が多いサイトでは代引きや後払いのように追加の情報入力が不要な決済を上位に表示することで、カゴ落ちを大幅に改善することに成功している。また同じ販売サイトでも携帯サイトについては簡単な認証番号でワンクリック決済が可能なキャリア決済を上位に表示し、デバイスごとの最適化を図っている。

このように、サイトに訪れる顧客属性や利用デバイスに合わせて決済順位を変えるだけでCVRをアップさせているのだ。非常にシンプルな作業だが効果は高いようだ。

また、デフォルト値を設定することでさらに効果を発揮する。選択させるのではなく、最も使われている、または使われると想定される決済方法を最初から選択している状態に設定することで、細かな離脱も抑えることができる。

②縦スクロールを横スクロールに変更する

もしカート内のカスタマイズが自由であれば、レイアウトそのものを変えてみることも検討してほしい。私が知る限り、現存する決済選択画面は9割が縦のレイアウト構成になっている。1つの決済手段をクリックすると決済説明と必要事項の記入欄が現れる。

あるネットショップでは決済手段を3つに限定し、縦レイアウトでなく横レイアウトを採用している。これによりスクロールせずに決済手段を確認でき、かつ、プルダウンすることなく各決済の説明を読める。よりユーザー視点に立ったUIにすることで離脱の防止に成功しているのだ。

③顧客の属性に合わせて仮説を立てA/Bテストを繰り返す

同じように食品を扱っていても、20代がメインのショップもあれば40代がメインのショップもある。また男性向けと女性向けでも属性は大きく異なる。あるショップは、商材を切り口に顧客属性をクロスさせ、A/Bテストを繰り返すことで決済の最適化を図っている。

例えば就業世代の男性がメインターゲットであれば、クレジットカードの利用度が高くなるので表記を一番上にする。シニア女性がメインターゲットであればカード利用度は低く、取引ごとの支払いを好む傾向にあるので、郵便振替やコンビニ払いを目に止まりやすい箇所に表記する。さらにシニアにもやさしい表記を心がけ、文字を大きくし、読みやすい色で表示している。

また、各決済利用時のキャンペーン情報なども記載すると「いま買う」理由付けとなり、離脱を抑えることができるそうだ。

◇◇◇

スマホに代表されるマルチデバイス化、かつてのEC利用者の高齢化、カタログ通販企業のEC参入など多くの要因を受け、ECは若者からシニア層まで幅広い世代に利用され、成長し続けている。今やECはすべての世代に利用される社会的なサービスであると言っても過言ではない。

世代の幅や利用シーンが広がったことでECに求められる価値も多様になってきている。商品の品揃えや価格だけでなく、配送スピードや決済手段など、EC利用者が重要視するポイントも多岐にわたるようになってきているのだ。

また、運営側の注力ポイントが集客から接客にシフトしつつある。来店した顧客にどれだけコンバージョンしてもらえるか離脱を防ぐことができるかどれだけリピートしてもらえるか、それらがEC運営で重要な成功要因になっているのだ。

今回挙げた①から③の3つのポイントは、できるところからで良いのですぐ始めてほしい。いま1%でも離脱を抑えることは、将来の大きな売上効果につながるからだ。

このコーナーはインプレスビジネスメディア主催のイベント「ネットショップ担当者フォーラム」のプログラム委員によるリレーコラムのコーナーです。

プログラム委員会は、ネットショップ事業者や周辺の支援ベンダーなど、業界事情を熟知したスペシャリスト12名で構成されており、イベントのテーマや構成、講演していただく方々の選定や調整などをしています。

このコーナーではネットショップ担当者のみなさんのために、最新トレンドや具体例を交えて役に立つ記事をお送りする予定です。「こんなテーマの記事を書いてほしい」などのリクエストやご質問をFacebookTwitterでおよせください。

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