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「アラジンと魔法のランプ」では、魔法のランプに助けを求めると、ジーニーという魔人が願いを叶えてくれます。スマートフォンは今、魔法のランプ。消費者たちが何か必要になったとき、最初に呼ばれる魔法使いになるべく、検索サイトや買い物アプリの競争も激しくなってきています。

そんな中で、大量の商品がほぼ最安値でほぼ翌日届くAmazonが、当代随一の魔法使いであることに疑いの余地はないでしょう。また、Amazon自身も先日スマートフォン「Fire Phone」(ファイア・フォン)を発表しました。「Firefly」というアプリでは、見たもの、聞いたものをすぐさま購入できます。Amazonは魔法のランプそのものも作ろうとしているのです。今回はそんなAmazonの注目すべき3つのアプローチについてお話しします。

①無人飛行機による配達「Prime Air」

昨年末話題になったのが「Prime Air」(プライム・エア)。「ドローン」と呼ばれる無人機で、物流拠点から16km圏内へ30分以内で配送、早ければ2015年にもサービスを開始したいとしています。ドラえもんのタケコプターが荷物を運んでいるような映像には本当に驚きました。

早いだけでなく、無人で注文主の家の庭まで運ぶというところが、このPrime Airのキモでしょう。時間の最短化と人手の最小化の2つが具現化されているのです。

おそらくAmazonのラボで次々と試作されているであろう、倉庫内ロボットの開発とともに、時間の最短化と人手の最小化の想像を超えた領域に向けて、Amazonはチャレンジしているのでしょう。

②他社倉庫を使った物流「Vendor Flex」

小田原に約6万坪規模の倉庫を稼働させるなど、自前の物流に力を入れているAmazonですが、米国、そして一部日本でも密かに進めているのが、「Vendor Flex」(ベンダー・フレックス)という仕組み。メーカーの工場倉庫にAmazonの領域を設定し、そこから消費者に直送するというものです。メーカー(または卸)からAmazonを経由して消費者へ商品が移動するよりも、時間、移動コスト、倉庫投資などを低減できます。

Amazonはクラウド型サーバーサービスのAmazon Web Services(AWS)で存在感を増していますが、倉庫についてはAmazonの倉庫から商品を消費者に直送するフルフィルメント by Amazon(FBA)のようなクラウド型と、メーカーの倉庫から消費者に直送するこのVendor Flexのようなパラサイト型の2つのやり方を進めています。3年ほど前からVendor Flexを採用している米P&Gをはじめ、大手が続々と採用しており、物流の最短距離への貪欲な試みは、日本でもじわじわと実現されていくでしょう。

③予測配達「Anticipatory Shipping」

今までネットショップは、消費者のニーズにどれだけ早く応えるかという競争をしてきました。それに加えてAmazonは「これを買った人はこれを買っています」という協調フィルタリングを利用したおすすめ機能により、利用者本人も気付いていないニーズを拾い出し、大成功しました。

私もよく、Amazonにおすすめされた商品を購入してしまいますが、このなんとなくコントロールされた感じが、買い物の楽しさを膨らませているのか、それとも削いでいるのか、たまに考えてしまいます。

このおすすめ機能をさらに進化させるべく、いわゆるビッグデータを利用して、注文前に配達するという特許をAmazonが取得しました。「欲しいと思った時にすぐ届ける」から、「欲しいと思う前にとりあえず届ける」という、人の意識よりも前を行く「Anticipatory Shipping」(アンティシパトリー・シッピング)の発想は、実現すれば画期的でしょう。

「ご主人様の欲しいものはこれではありませんか?」という執事のような魔法使いから、「あなたはこれが欲しいですよね。持ってきてあげましたよ」という支配的な魔法使いへ、Amazonは変身しようとしているのです。

◇◇◇

映画「マトリックス」では、コンピュータが支配した世界で、人間たちは水槽の中で夢を見させられています。Amazonが魔法使いとして完成されていくたびに、消費者はAmazonという水槽につながれた存在になってしまいそうで正直怖いような感覚さえ持ちます。

しかし逆に言うと、Amazonが叶えられないような圧倒的な体験や偶然性が、その新鮮さで消費者の心をつかんでいくような気もします。

Amazonが叶えられない魔法とは何なのか? ネットショップ担当者のみなさんはその答えを追求し、粘り強く消費者に伝えていくことが重要になるでしょう。

このコーナーはインプレスビジネスメディア主催のイベント「ネットショップ担当者フォーラム」のプログラム委員によるリレーコラムのコーナーです。

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村山 らむね

有限会社スタイルビズ

村山 らむね 有限会社スタイルビズ 代表取締役

慶応大学法学部卒。東芝、ネットマーケティングベンチャーを経て、消費者目線のマーケティング支援のスタイルビズ設立。企業のソーシャルメディア運営やeコマース関連のアドバイザーを務める。経済産業省消費経済審議会、ケンコーコム社外取締役など各種委員を歴任。日経BP「マーケティング最前線 スマホ・SNSでEC激変 専門家が説く最新販売手法」(共著)、日経MJ、奔流eビジネスなど連載多数。

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