「TikTok Shop」で売上を伸ばすには? 他の国との違いは? 動画制作はマスト? 中国「Douyin」で成功したインアゴーラCEOに聞く
中国向け越境ECプラットフォーム「豌豆(ワンドウ)」を運営するInagora(インアゴーラ)は、日本で最も「TikTok Shop」を熟知している企業の1社である。中国版「TikTok」の「抖音(Douyin)」に日本企業第1号として出店。4年以上にわたる運営で数々のアワードを受賞、日本を代表するブランドの運営代行も手がける。間もなく日本で始まる「TikTok Shop」を攻略するためのポイントは何か。日本の「TikTok Shop」にも出店するというインアゴーラの翁永飆CEOに聞いた。

インアゴーラが「抖音(Douyin)」で積み重ねてきた実績
インアゴーラが「Douyin」に出店したのは2021年4月。化粧品、サプリメント、日用品などを扱う総合ショップ「ワンドウ」を運営する。これまでの販売数量は538万件超(「Douyin」越境部門1位)で、店舗評価は4.95+(5点満点)という高評価。
2022年に「Douyin W11 Big Day 売上ランキング」1位、「Douyin 818 EC売上ランキング」2位、2023年に「Douyin グローバル厳選輸入スーパー 優秀パートナー」を受賞するなど、「Douyin」で活躍する日本企業である。
「Douyin」で事業を展開したい日本ブランドの運営代行も展開。これまで、ミキハウスなど日本を代表する約10の有名ブランドの運営代行も手がけてきた。
2023年9月に始まった米国の「TikTok Shop」にも出店し、ラーメンを販売。7月以降にスタートするとされている日本の「TikTok Shop」の出店準備も進めている。
「Douyin」の登場で大きく変わった中国EC市場、「TikTok Shop」の可能性
「Douyin」が登場する前の中国EC市場。Alibabaと京東(JD.com)というECプラットフォームがEC市場の大きなシェアを占めていた。それが「Douyin」の参入で大きく変わり、「数年でEC市場の大きなシェアを獲得する規模にまで拡大した」(翁CEO)
なお、インアゴーラの調べによると、2024年のGMV(流通総額)、アリババ(タオバオ、天猫など)が8兆元、拼多多(Pinduoduo)が5兆元、京東(JD.com)が4兆元、抖音(Douyin)が3.5兆元と推定している。
アメリカでも「TikTok Shop」は急速に成長。すでに日本円で月間1300~1700億円規模の流通総額に達しており、年間では1.5兆円、近く2兆円に迫る勢いという。
日本市場では、「楽天市場」「Amazon.co.jp」の流通総額はそれぞれ4兆円超。翁氏は「『TikTok Shop』の登場で数千億円から、場合によっては1兆円単位の新たなマーケットが生まれる可能性がある」と指摘。既存マーケットからユーザーが移行するか、あるいは新しい需要が生まれ新たなマーケットが創出されると予測する。
「抖音(Douyin)」と日本版「TikTok Shop」の違いは?
翁CEOによると、「抖音(Douyin)」と、アメリカですでに展開され、日本でも今後展開予定の「TikTok Shop」は、「アクセスするサーバーのデータベースが異なる点を除けば、他の国と機能的には“ほぼ同じ”」と言う。
中国で「Douyin」がローンチし、その後、東南アジア(マレーシアなど)に拡大。その後、北米で急速に成長した。
日本はこれらの地域に比べて導入が遅れているが、最終的には中国版やアメリカ版と同じような機能を実装するだろう。(翁CEO)
たとえば、「Douyin」では購入履歴、配送の追跡、物流ルートの確認など、ECに関するすべての業務がシステム内で完結できる仕組みが整っている。こうしたECに関する全機能について、日本の「TikTok Shop」は半年間かけて段階的に実装していく予定という。
インアゴーラが「Douyin」で成功した秘訣
翁CEOは、「Douyin」で成功した秘訣(ひけつ)を「総合力」と説明する。その「総合力」は、動画やライブといった「コンテンツの制作力」、適切な「インフルエンサーとの連携」、効果的な「広告運用」、そして最も重要な「データ分析力」という複合的な要素を指すという。
「TikTok Shop」での販売手法は大きく分けて「動画」と「ライブ」の2つ。「動画」は長期的な売り上げと認知度向上に役立つ一方、「ライブ」は短期間で集中的な売り上げを創出するための施策になる。
「TikTok Shop」の「ライブ」はフィード(おすすめ表示)に表示されるため、フォロワー以外の新規視聴者が流入しやすい。「Instagramライブが主に既存のファン層にリーチするのとは大きく異なる点」と翁CEOは言う。
「ライブ」は広告とオーガニック流入を組み合わせた集客が重要で、コンテンツの質だけでなく、「TikTok」のアルゴリズムに対応する“トラフィック対策”のような多岐にわたる対策が必要になる。ライブ配信中には分単位でのデータ分析に基づく対策が求められ、視聴者のエンゲージメント(関心度)を高める工夫が売り上げを左右する。(翁CEO)
「TikTok Shop」では、アフィリエイト(成果報酬型広告)機能の活用も重要という。「TikTok」内のインフルエンサーやクリエイターはアフィリエイト機能を活用し、自身の収益を伸ばすことができる。そのため、「TikTok」クリエイター自ら、“売れる動画やライブ”を作成し、配信しようとする。
アフィリエイト機能は固定費を抑えながら成果報酬型で販売を促進できるメリットがある。また、フォロワー数が少ないKOC(Key Opinion Consumer、特定の分野に詳しい一般消費者)も収益を得られるチャンスがあるので、新たな経済圏が生まれる可能性がある。ブランディングと販売促進を両立させるためには、固定費によるトップインフルエンサーの起用(たとえば、自社で制作する動画にインフルエンサーを起用するなど)、アフィリエイトを活用した販売が重要だと考えている。(翁CEO)
なお、翁CEOによると「TikTok Shop」の管理画面には「インフルエンサー検索」「アフィリエイト機能」「広告システム」「ライブ機能」などが統合された仕組みが実装されている。たとえば、このプラットフォーム内にあるマッチング機能を利用すると、インフルエンサーやアフィリエイターを検索し、ビジネスを依頼できる。
そのため、「自社に動画制作のノウハウがなくても、動画を制作できる適切なインフルエンサーやアフィリエイトと連携できるため、中小企業でも参入しやすい環境が整っている」(翁CEO)

特にデータ分析の重要性が高いと翁CEOは言う。「Douyin」ではユーザーやコンテンツに関する膨大なデータが「ほぼ全開示」されるため、詳細な分析が可能。インフルエンサーやアフィリエイターの適切な選定、ターゲティング広告の配信などが実現できるという。
たとえば、100万人ものクリエイター(インフルエンサーやアフィリエイター)のなかから、フォロワーの属性(デモグラフィック)、コンテンツの種類、そのクリエイター経由の購入履歴や購買行動傾向などを分析することで、ターゲット層に合致するインフルエンサーやアフィリエイターを何百人、何千人とピックアップできる。(翁CEO)
「TikTok Shop」で成功するための運用ポイントと重要なこと
「Douyin」には「店舗スコア」と呼ばれる店舗を評価する仕組みがある。「日本のECサイトで言えばレビュー評価のようなもの」(翁CEO)。インアゴーラの「Douyin」の店舗評価は4.95+(5点満点)と高評価だ。
この仕組みは「TikTok Shop」でも採用される。消費者による購入判断の材料になるほか、インフルエンサーやアフィリエイターが提携先を選ぶ際の判断基準にもなる。コンバージョン率を悪化させる要因を排除し、インフルエンサーやアフィリエイターが提携したくなる評価を得る必要がある。(翁CEO)
なお、「店舗スコア」は配送スピード、顧客サポート(CS)、返品率などさまざまな指標で評価されるという。
そして、最も重視したいのがコストパフォーマンス。TikTok Japanも代理店も手探りの状態で始める日本版の「TikTok Shop」。それを踏まえ、翁CEOは「基本的な取り組みから始めることが重要だ」と言う。
基本的なこととは何なのか? 「TikTok Shop」のクリエイター(インフルエンサーやアフィリエイター)は基本的に自身で動画を制作できるため、固定費ではない成果報酬型のアフィリエイト機能を使い、まずは成果報酬型で「TikTok Shop」をスタート。徐々に、人件費やリソースが必要になる「ライブ」を使った販売などに着手する方法をお薦めするという。
翁CEOがインタビュー中、興味深い注意ポイントを指摘した。それは“片手間”での運用では「TikTok Shop」の成功は難しいということだ。
「TikTok Shop」はクリエイター選定、それを実施するためのデータ分析など“やること”が多い。それを踏まえて、翁CEOはこう注意を促す。
「TikTok Shop」の運営はInstagramライブのような「片手間」でできるものではない。「楽天市場」「Amazon」に出店するのと同様の認識で取り組む必要がある。
4年以上も「Douyin」に出店、米国「TikTok Shop」で販売し、日本の「TikTok Shop」でもビジネスを展開予定のインアゴーラは、最も「TikTok Shop」を熟知している企業と言っても過言ではない。
そのインアゴーラが日本での「TikTok Shop」スタートを前に、自社で培った知見やノウハウを披露する「TikTok Shopマスター 短期養成セミナー」を開催する。
「TikTok Shop」の仕組みや収益構造、広告運用などの仕組みの解説、「TikTok Shop」開店、インフルエンサーマーケティング、効果的な動画やライブの設計などを、全6講座で解説する講座を実施する。計6回で、場所はInagora東京本社(東京都港区芝4丁目1-28 PMO田町Ⅲ 2F)。参加費は6講座合計で15万円(税抜)。
▼詳細と申し込み▼
→ https://www.inagora.com/tiktokshop-seminar/

スケジュール(仮)と内容
インアゴーラによると、「TikTok Shop」のデモンストレーションも含めた、実践的かつリアリティのある内容を提供したいという。
そのため、日本国内での「TikTok Shop」が正式ローンチした後、内容を最新仕様にアップデートし、開催するという。
現段階(記事公開の6/25時点)では、日本での「TikTok Shop」のローンチ日が未定の為、スケジュールは仮で組んでいる。
基本的に「TikTok Shop」の正式ローンチ後、隔週・週2回夕方の開催を想定。スケジュールは、セミナー申し込み後、追って確定日程を案内するとしている。
- 第1回:2025年7月15日(火)17:00〜18:00
TikTok Shop とは何か? 楽天やアマゾンとの違いや新たな顧客層獲得の可能性について - 第2回:2025年7月16日(水)17:00〜18:00
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▼詳細と申し込み▼
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