中川 昌俊 2016/8/8 9:00

EC市場の拡大で、これまで実店舗を展開する企業もネット通販を行うことが当たり前の環境になりつつある。ただ、ECへの進出で問題が発生し、本業の販売に影響を与えてしまうケースも少なくないという。無印良品の子会社でデザイン家具を販売するIDEEもこうした問題を抱えていた1社。組織変更とオンラインサイトの位置づけの見直しを行い、実店舗とネット通販の展開によって生じる問題を打破している。

ECサイト運営によって低価格を求める顧客が集まってしまう悪循環

IDEEは、地方の消費者も商品を手に取ることができるようにECサイトの運営を開始。幅広く新規ユーザを獲得するため、2011年にecbeingを導入してECサイトをリニューアル。店舗で取り扱う商品と同等のラインナップをめざした。売り上げを伸ばすため、ECサイト限定商品なども企画販売した。

ECサイトは顧客の要望に応え、送料無料キャンペーン、割引キャンペーンなど実店舗以上のサービスを実施し、“お得感”を打ち出すようになった。すべては、伸び続けるEC市場に乗り遅れずに、自社のEC売り上げを伸ばそうという戦略だった。

一方で、IDEEが提案してきた「デザイン家具の価値しっかりと伝えることで商品を販売する」という想いとはかけ離れることに。

安さを求める消費者が実店舗にも訪れるようになり、なかには「どこで購入するのが一番安いか」という問合せも増え、実店舗運営にも影響を及ぼすようになっていた。

宣伝販促室 Onlineチーム・小林真紀課長

EC事業部を解体し、宣伝販促室の中にECチームを組み入れ

良質な家具を作り、お客さまに納得いただいて販売するという、当社の理念に立ち返ろうということになり、ECサイトの在り方を見直そうということになった。(宣伝販促室 Onlineチーム・小林真紀課長)

そこで行ったのが、EC事業部を解体し、宣伝販促室の中にECチームを作ることだった。

ECサイトの目的は「全社の宣伝販促のため」と明確化。加えて、売り上げの拡大を求めてきたECサイトだったが、広報という直接的な売り上げを求めない部署に組み入れることにより、全社単位での売り上げ拡大に貢献するということも明確化した。

店舗の従業員も、従来はネットに売り上げを取られたと考えることが多かった。広報管轄下にすることで、ECサイトを活用して店舗に来てもらえるようにすればいい、と考えるようになった。ECチームとしても、こうした要望に応えられるようになった。(小林課長)

また、現在の体制に移行してから、ECチームのロケーションを池袋本社から旗艦店である自由が丘店の一角に移動した。実店舗の状況を把握しながらEC運営を進められる環境を整えていったのだ。

ECチームが入るIDEE・自由が丘店の内観

ECサイトのデザインも大きく変化。従来は売れ筋商品を前面に押し出していたが、新たなサイトでは「ソファの選び方」「ダイニングテーブルの選び方」といった、商品への理解を高めるためのコンテンツを増やし、TOPページで紹介するようになった

「オリジナル家具ができるまで」という、自社で取材を行い、その様子を納めた動画も用意。Facebookやインスタグラムで紹介すし、商品への理解が高めることに成功。商品の売り上げが前年比160%になるなど、売り上げ増にも貢献している。

商品理解を深めるためのコンテンツを一番上に配置

今後もIDEEはECサイトを、店舗の運営をサポートするものとして活用していく考えだ。

お客さまに商品の良さをしっかり伝えることができれば、実店舗への集客はもちろん、結果的にECサイトにもお客さまが来てくれるようになると思うので、そのような結果を出していければと思っています。(小林課長)

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