瀧川 正実 2016/8/3 8:00

中国政府は越境EC(中国向け)を促進していく」。中華人民共和国工業情報化部所管の電子商取引企業団体「中国電子商会」の彭李輝常務副秘書長は、中国政府機関を代表して、海外企業による中国向け越境ECを歓迎している状況をこう明かす。アリババや京東商城(JD.com)なども参加する「越境EC専門委員会」(中国電子商会内の委員会)のトップも努める彭氏。中国政府は越境EC(中国向け)をどのように捉えているのか。6月に来日した彭副秘書長を訪ねてきた。

中国政府が推進、日本企業の中国向けECを支援する認証制度

――税制制度のほか、通関の仕組みの変更詳細はこちらは、中国人の越境EC利用を厳しくするような動きに見えます。

中国に向けた越境ECに関する法改正(通関や税制度の変更)を行いましたが、締め付けを厳しくするものではありません。2016年の全国人民代表大会で、「越境ECは成長産業」という越境EC促進のメッセージを出しています。

今回の法改正は、中国向け越境ECを健全化するためのものです。事実、一般流通のように中間マージンが加わることがないので、中国人による越境ECを利用した購買活動には影響は出ていません。

中国としては、越境ECを促進することによって、多くの海外製品を市場に流通させることが目的ではありません。

ご存知かもしれませんが、中国人は「Made in China」に対して良い印象を持ってない。中国国内のメーカーや小売事業者に対して、越境ECが盛り上がっていくなかで、「どうやって生き残りますか?」「どうやってブランド力をアップさせていきますか?」と政府は問いかけ、海外企業に学びながら自社商品の品質アップなどを考えてほしいと思っているのです。

中国政府は中国向け越境ECをどのように考えているのか? 中華人民共和国工業情報化部所管の電子商取引企業団体「中国電子商会」の彭李輝常務副秘書長にインタビュー
6月に福岡で開かれたアジア通販サミット(JADMA主催)に参加した彭副秘書長

――中国向けECを検討・実施している日本の企業が知っておくべきことは?

中国電子商会は中国向けに輸出する商品を正規品として認定する「正規品認証サービス」を始めました。

中国の商品購入者は、スマートフォンアプリを用いて商品に貼り付けたシールを読み取るだけで、商品の流通ルートを確認し、正規品か否かを手軽にチェックできるサービスです。

海外のメーカーや小売事業者は、中国で自社商品の偽物が売り出されることを懸念するケースが多く、それが中国進出を妨げる1つの要因になっていると思います。

「正規品認証サービス」はその問題を解決するために立ち上げたものです。

メーカーが作った製品などを中国電子商会に「申請」すると、それを私たちが正規品と認定。その商品に固有の番号を発行します。

その固有の番号は「CECC正規品認証シール」に盛り込みます。このシールは、中国独自の二次元バーコード体系「GMコード」を専用にカスタマイズし、非公開の暗号化アルゴリズムによって生成します。

スマートフォン用認証アプリで読み取り、自動的に認証サーバーと通信、その商品が正規の商品かどうかを瞬時に判定します。消費者は表示される商品写真と突き合わせることで、判定結果の正しさをダブルチェックできます。

中国政府は中国向け越境ECをどのように考えているのか? 中華人民共和国工業情報化部所管の電子商取引企業団体「中国電子商会」の彭李輝常務副秘書長へのインタビュー
「CECC正規品認証シール」の仕組み

「CECC正規品認証シール」は、中国の消費者保護を目的に立ち上げた正規品認証事業です。中国政府が取り組む偽造品取締事業と連携し、偽造が疑われる商品を発見した場合には、中国国務院直属の取締機関へ通報する機能も搭載しています。

この取り組みの日本の窓口として、ワイドテックと提携しました。この仕組みに興味のある日本の事業者は、ワイドテックに問い合わせをするといいでしょう。

中国政府は中国向け越境ECをどのように考えているのか? 中華人民共和国工業情報化部所管の電子商取引企業団体「中国電子商会」の彭李輝常務副秘書長にインタビュー
正規品認証シール(横型・縦型)

――中国電子商会は今後、どのような取り組みを進めていきますか。

中国はまだまだ品質を高めていく段階です。国としての産業はいろいろありますが、他国の秀でている分野をすぐに追い越していくのは難しい。しかし、それをグローバルな取引によって補っていくことは可能です。

その1つとして中国電子商会が考えているのが「EWTO」の新設です。国際機関にWTO(世界貿易機関)がありますが、「EWTO」は電子商取引でのグローバル取引に関する国際組織としていきたいです。

2016年9月に主要20カ国・地域(G20)首脳会議が中国で開かれるので、その場でディスカッションできるように中国電子商会は案を出したい。世界のメーカーと消費者のオンライン取引をどうやって整備していくのか……こうしたことを中国がけん引していきたいですね。

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