米国カンファレンスレポート

新たな小売店舗「b8ta」とは? ストア内の情報をメーカーと共有

「b8ta(ベータ)」は最新のIoT製品のβ(ベータ)テストを行いながら販売する店舗。販売数にかかわらずメーカーは出品手数料を支払い、マージンの支払いは不要というビジネスモデル。2015年にシリコンバレーで誕生し、Googleなどとパートナー契約を結んでいます。ニューヨークにある「b8ta」の店舗の様子をお伝えします。

川連 一豊

2019年9月17日 8:00

米国で人気急上昇の「b8ta(ベータ)」をご存じでしょうか? 最新IoT製品を展示・販売をする店で、筆者も大好きなお店です。お店を見つけるとすぐに入っていろんなアイテムをチェックしています。 今年のRetailX(@IRCE2019)でも、「b8ta」のパートナーシップ責任者のジョン・ケネリー(John Kennelly)氏のセッションがありました。今回は講演の内容と実店舗の様子から、「b8ta」のすごさをお伝えします。

b8ta(ベータ)公式サイト
「b8ta」の公式サイト https://b8ta.com/

「b8ta」は製品のβ(ベータ)テストを行いながら販売するお店。2015年にシリコンバレーで誕生し、現在、全米で79店舗(旗艦店15店舗、パートナー店64店舗/2019年6月現在)を展開しています。「最先端のアイテムをチェックするならb8taで」と言っても過言ではない存在で、VRをはじめ最新のIoT製品が集まっています。

b8ta(ベータ)店内
ニューヨークの新しいショッピングセンター「ハドソン・ヤード」にある「b8ta」の実店舗
b8ta(ベータ)店内
たくさんの人が最先端のアイテムをチェックしていました
b8ta(ベータ)店内
人気の商品は順番待ち。なかなか触れない

4年間で79店舗という急激な店舗展開ができた理由はパートナーシップ。アイテムを製造する企業とユーザーを結びつける強力なビジネスモデルが注目され、Googleやメイシーズともパートナー契約を結んでいます。このパートナーシップを進めているのが、IRCE2019に登壇したジョン・ケネリーです。

IRCE b8taのパートナーシップ責任者のジョン・ケネリー(John Kennelly)氏
「b8ta」のパートナーシップ責任者のジョン・ケネリー(John Kennelly)氏

「b8ta」は販売数に関わらず、メーカーから月額固定の出品料を徴収するというビジネスモデルです。出品料を支払う代わりにメーカーは「b8ta」で商品が売れてもマージンを支払う必要はなく、売上は100%メーカーに入ります。

店員はタブレット

「b8ta」には店員がほとんどいません。来店客は商品の横に置かれたタブレットで商品説明や価格、動画を見ます。「b8ta」はユーザーが説明をどの程度読んだのか、動画をどこまで観たのかといった、ECサイトでいうアナリティクスのリアル版のデータを収集し 、それをGoogleアナリティクスのような画面でメーカーに提供しています。

Qualitative and Quantitative data for makers
IRCEのスライドから。チラッと数秒だけ見せてくれた「b8ta」のアナリティクス。メーカーのために質的、量的なデータをリアルタイムで提供しています

興味を持ったと思われるユーザーに関する情報や、ユーザーがタブレットをどう使い、どのように見たのかといったユーザーの反応を、リアルタイムで詳細に知ることができるため、メーカーは製品の改良やマーケティングを合理的、効果的に実施できます。この点をメーカー側はメリットととらえているわけです。

さらにカメラやセンサーなどで「b8ta」店内を動くユーザーの行動データや会話データも収集し、データ化しているとのことです。

IRCEのスライドから
店内ではたくさんのカメラで来店者の行動をデータ化している

「b8ta」では店員さんから話しかけられることがほとんどないので、私のようにコミュニケーションが苦手な人にとっては好都合。タブレットで丁寧に説明してあるので、自分で触って確認できれば十分です。ちなみにこのタブレットの説明もユーザーの動向によって随時修正、改善されているということでです、まさに優秀な営業マンがいる感じです。

IoT製品だからこそ必要な実店舗

最近のGoogle ホームのような先進的なアイテムは、実際に触ってみないとわからないものが多いですよね。アップルに惚れ込んでいるユーザーならiPhoneに触らなくても購入できますが、新しいIoT製品はサイトで紹介されている内容を見ただけではなかなか手が出ません。ユーザーとってもメーカーにとっても、商品に触接触れられる場というのは、とても貴重だと思います。

製品の体験を実際に触れる
VRも体験しないとわからないですね。ディスプレイの重さやケーブルの有無なども体験の1つ
IRCEのスライドから
ドラムが演奏できるアイテム。実はスティック側にセンサーがあるのでパッドは不要
b8ta(ベータ)店内
タブレットでの動画説明。どこでもドラムができるので練習でもパーティでも使えそうです

Google & b8taの今後に注目

Googleはこの 「b8ta」でリビングやオフィスなど、実際に利用するシーンを再現し、「Made by Google」で発表したアイテムを実際に手に取れるようにしています。今後、Googleが作るスマートホームテクノロジー製品もここで紹介されることでしょう。

Amazonはすべてのデータを自社で収集し、必要なデータだけをセラーに提供していますが、Googleとb8taの取り組みではネット上のデータと店舗内のデータをリアルタイムで共有するのです。そこからどんな変化が生まれてくるのか? おもしろい展開になるのでははいかと想像しています。

前回のコラムでご紹介したダグ・スティーブンス氏の「データ企業ではなくエクスペリエンス企業になるべき」という提言にも関連してきますが、Googleだけではできないことが「b8ta」を使うことでとまさしくエクスペリエンス(体験)になるわけで、このGoogleと「b8ta」の取り組みからは目が離せません。

as a maker, traditional retailers are often a barrer to reaching the consumerw
IRCEのスライドから。「b8ta」はマーケットプレイスリテイラーとして、メーカーとリテイルの障壁を取り払おうとしている

最近のプレスリリースによると、「b8ta」はトイザらスともパートナー契約をしたようで、次のホリデーシーズンには新商品も登場するようです。おもちゃの世界も触らないとよくわからないアイテムが多くなっていますから、体験型のお店は人気が出るでしょう。

シリコンバレーやニューヨーク、シアトルに行く機会があったら、ぜひ「b8ta」で最先端のアイテムを体験してみてください。私が興奮した理由をわかっていただけると思います。

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