お客とつながり続ける為に必要なこと―IRCEで米国EC企業が示した多様化する顧客接触方法
2014年6月のイベント開催で10年目を迎える世界最大のEコマースに関する勉強会と展示会「IRCE」(Internet Retailer Conference & Exhibition)2014に参加してきました。ソフトバンクの孫正義社長も指摘しているように、アメリカの最新事例が日本に影響するのは約半年後から1年後。過去にFacebookやtwitter、Googleの動向を一早く把握できたため、私が経営していた事業会社でもすぐに対応できたということもありました。IRCEに参加する理由は米国の最新事情を知り、日本の今後の動向を予見、対応するためなのです。
米国EC企業では「いかにお客様とつながっていく」かが重要な課題に
海外のイベント、特に米国のイベントは日本に与える影響がとても大きいと感じています。それは今までのIT業界の流れを見れば一目瞭然でしょう。キーノートやセッション、展示会を見た時に、何がどう日本に影響するのかを感じるのは、いわゆる目利き部分が必要となります。私がIRCEなどのイベントに参加する理由はこの目利きを鍛えることもあります。
2009年からIRCEに参加し、今回で3回目のエントリー。3年ぶりとなったIRCEですが、以前と比べて格段に大きなイベントになり、日本人も多く参加していました。今回私がIRCEに参加した目的は次の3つです。
- Eコマースの方向性は合っているか?
- 日本のEコマースがどうなっていくのか?
- 日本のEコマースに影響するのは何か?
今回参加できたのは、4つのキーノートと30のセッション。余談ですが、英語漬けの4日間は脳と体に影響します。「Eコマーステクノロジー」「リテールチェーン」「Eマーケティング」「スモールリテイラー」「デザイン&マーチャンダイジング」「モバイルEコマース」を中心にチェックしてきました。
細かいテクニックうんぬんの前に、全体の動向としての私感。この3つが基本になっていると考えられます。
- オムニチャネル、クロスボーダーは当たり前
- ロイヤリティではなく、エンゲージメント 「She's Socail」の言葉が印象的
- 3つの“F” 「FUN」「FAST」「FRESH」(楽しく、速く、新鮮)
以前までのクロスチャネル、マルチチャネル、オムニチャネルのテーマは、顧客との接触ポイントを重視している感じを受けました。今回、接触ポイントは大事なことですが、「いかにお客様とつながっていくのか」が重要で、「そのために何を行うか」が、各リテーラーで異なっており、さらに重視されていると今年は感じました。
手間を惜しまない徹底した戦略と方針、日本のEC事業者には参考になる
キーノートに登壇した、年商900億円の家具販売を手掛けるWayfair.comのNiraj Shaf氏は、上場する以前に、「顧客の要求をたくさん聞き、それを上回る施策をいかに行うかに集中した」と話していました。
その徹底ぶりは圧倒的なコンテンツになり、しかも増え続けています。この内容は、Eコマースのソリューション側やEC企業からすれば正直ゾーッとします。そこには、ありとあらゆるシチュエーションを作り続け、売れる商品をどんどんブランド化していく。そして手間をまったく惜しまないという徹底した方針と戦略があるのです。これは、中途半端になりやすい日本のEC事業者にとってとても参考になる部分です。
eBayのCEOであるJohn Donahoe氏は、オンラインとオフラインのレボリューションを行っているようです。「QRコードを使ってショーウィンドウをリアル店舗化する」「巨大タッチスクリーンを使ってポップアップショップにする」といったことがここ最近、eBayが取り組んでいることです。
こうしたレボリューションについて、消費者の利用は進んではいるが、特に決済については意外にゆっくりであるようです。しかし、「今後3〜5年間の競争上の優位性と革新の源の1つ」になると指摘していました。
これについては、私はシカゴの街でいろいろと実験を行いました。顧客動向を見ていても、ニュースで言われているほどのインパクトではないというのが実感です。消費者は企業側が思っているほど意識してその施策を使っているとはいえないのが実情と考えています。
しかし、現在の米国における消費者動向を見れば、遅かれ早かれもっと便利なショッピング体験ができるようになることは間違いないでしょう。それがeBayとしてはこの3〜5年の間になるということだと思います。
もう1つ気になったこと、それはパートナー制です。すべてのメーカーや小売業がに参画することで、競争ではなく一緒に成長するためのプラットフォームを築いているとのことです。このプラットフォームには展示会場でも多くの方が集まっていました。
日本とは異なると思いますが、米国においてはこのようなプラットフォームが脅威になると考えられます。それは、オフラインとオンラインをプラットフォーム化という従来の考えにプラスして、小売だけではなくあらゆるサービス業を含み、さらに街全体をすべてプラットフォーム化しようとしています。
日本でもある企業が同じような取り組みをしようとしていますが、まだまだ規模が小さいです。日本で取り組むのであればクローズドによる囲い込み戦略ではなく、もっとオープン化戦略を取っていくことが重要でしょう。
このようなeBay、Wayfair.comの動きを考えると、小さくまとまりがちな日本のEC事業者は、もっと広い考えで大きな取り組みを行う必要があると私は感じました。
次回レポートでは、スマートフォンを中心にした最新モバイルコマースについて報告します。
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