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日本のネット通販業界、マーケティング業界などでは今、毎日のように「オムニチャネル」に関する記事を見かけます。先日、米国のシカゴで開かれた世界最大のECイベントIRCEに足を運びましたが、米国のEC業界でも「オムニチャネル」は主役中の主役だったと実感しました。今回は世界80カ国以上で化粧品を販売するスキンケアブランドによる、ポイントプログラムを活用したオムニチャネル事例を解説。実店舗とオンラインで効果を出したスキンケアブランドの取り組みを紹介します。

エンゲージメント高めて顧客接点ポイントを作るポイントプログラムの仕組み

私が取り上げたいのが、11日に行われた「Retail Chains」のワークショップ。スキンケアカンパニーの「dermalogica」(ダーマロジカ)によるセッションです。タイトルは「crafting your omni-channel loyalty experience」で、リワードプログラムとその進捗状況を聞きました。

スキンケアカンパニーの「dermalogica」のオムニチャネル戦略

「dermalogica」は世界80カ国で販売され、ECサイトの他、実店舗でも展開されている

「dermalogica」というブランドは、ロサンゼルスを拠点に、世界80カ国以上で販売され、エステサロンからも高く評価されている海外セレブ御用達のスキンケアブランドです。世界でも類のない超一流のスキンセラピストの教育機関を保有。肌の悩みを表面化し、その問題点をパーツごとにケアする本格的なスキンケアサービスを展開しています。事業を進める上で重要なポイントは、カウンセリングおよび販売を行っているスキンケアセンターに、いかにお客に足を運んでもらえるかということだそうです。ちなみに、米国では7店舗の直営店があります。

「dermalogica」の顧客は、50%が年間3回以上スキンケアセンターに来店するそうです。そして、オンラインでの購入経験がある顧客は32%という高い数字を記録しています。

今回リニューアルしたという「dermalogica」のリワードプログラムは、ポイントを一定以上ためるとクーポンや商品と交換できるというもの。ポイントを貯めてもらい、そこを通じて顧客接点を作るために、さまざまなポイントプログラムを提供しています。

このプログラムが始まり9カ月間で2万2000人超の登録があり、その内の30%以上が高いエンゲージメントを記録。そして、その15%以上がソーシャルメディア上でコンテンツのシェアを生み出し続け、ソーシャルエンゲージメントが高まっているそうです。

1人当たりの平均購入回数は6%増加。購入以外にメンバーがブランドに対して行うアクティビティ(オンラインだとソーシャルでつぶやいたりメールをしたり、オフラインだと肌診断をしたりすること)の1人当たりの平均回数は18%伸びたようです。そのリワードプログラムの内容は以下の通りです。

<オンラインでのポイント提供方法と提供ポイント数>

  • プログラム参加ポイント → 50pt
  • メールマガジン購読サインアップ → 100pt
  • Twitterフォロー → 50pt
  • Facebook、Twitterのアカウント連携 → 25pt
  • 友達にメール(URLつきでアプリから送信可能) → 50pt
  • レビュー投稿 → 50pt
  • オンラインでの商品購入ポイント → 1ドル1pt
  • TwitterへのURLつき投稿 → 25pt

<オフラインでのポイント提供方法と提供ポイント数>

  • チェックインポイント → 25pt  
  • 肌診断(フェイスマッピング) → 50pt
  • スキンケアサービス → 1ドル1pt
  • オフラインでの商品購入ポイント → 1ドル1pt

ポイントを400pt貯めると商品や20ドルのクーポンと交換できます。私もこのリワードプログラムを体感。FacebookやTwitterアカウントを連携してから、Twitterをフォロー。Twitterでつぶやき、そしてURL付のメールを友達に送ると・・・すぐに180ptが貯まりました!

残念ながら、今回のアメリカ出張中では時間がなかったためストアでチェックインをしたり、肌診断をすることはできなかったのですが、もしストアに行くことができ、それを実行していればあと75ptは獲得できました。そしてその感想などをTwitterでつぶやいたりするとまた25pt貯めることができるので、すぐに300ptくらい獲得できます。50ドルくらいのトライアル商品を購入し、レビューを書けばおそらく400ptです。

タッチポイントの強化、エンゲージメント向上でブランドアンバサダーを増殖する方法は日本でも効果を発揮する

また、アカデミー賞が行われるオスカーウィークエンドには、このプログラムのプロモーションが行われ、2月26日から3月3日までの6日間でダブルポイントキャンペーンを行ったところ、プログラムメンバーからの収益は37%増加したそうです。

ポイント変倍プロモーションなどは、今は珍しくないプロモーションです。変倍でポイント還元率が10%になると、その期間中の売上高が通常売上の200%以上となることもあるので、それと比較すると37%増加というのは、やや少ない気もします。

しかし、「dermalogica」の場合、ポイントを獲得してもオンライン上ではプレゼント交換のみ。そして20ドルのクーポンと交換する場合は、ニューヨークかサンタモニカなど、限られた スキンケアセンターに足を運ばなければ交換できません。そしてそのクーポンはオンラインでは利用できず、スキンケアセンターのみで利用可能。「お得感」はそれほどないので、このあたりは代理店販売を重視しているメーカー側の配慮なのでしょうか。

それにもかかわらず、収益が37%増という収益力。オンラインとオフラインの両面でブランドと接触できるようにし、ソーシャルメディアでブランドについて語るエンゲージメントの高いメンバーに対するプロモーションは、高いレスポンスが見込めるということなのでしょう。

ちょっと残念だなと感じたのは、このプログラムをユーザーが実行するにはパソコンのWeb画面経由になること。スマホアプリはもちろん、スマホに最適化されたページでユーザーがリワードプログラムに関するオペレーションをすることはできません。それが実現できれば、もっと数字は伸びていたのではないかと思います。

ポイントが貯まるツイート、お友達への紹介メール、レビュー書き込みは現状ではパソコン版となり、アプリもスマホ版もこの機能に対応していません。

スキンケアセンターのスタッフにも、リワードプログラムの教育を徹底し、販促TシャツやPOPなど、ストア側でも力を入れているのにもかかわらず、なぜスマホ対策をしなかったのかは、気になるところ。アプリのバージョンアップを期待したいです。

また、一度400ptを達成した後、より一層メンバーのエンゲージメントが高まるような仕組みが用意されていると、ブランドアンバサダーを世の中にどんどん送り出していけるのではないかと思いました。もともと、クチコミ力のあるリピーターの多いブランドですので、その力は絶大になりそうです。

◇◇◇

日本では「dermalogica」のようにセラピストが重要な役割を担っていたり、サロンを併設した売場を持つスキンケアブランドは少なくありません。しかし、フィジカルストアとEコマースやサロンが上手に連携し、そのスキンケアシステムの効果を最大限ユーザーに体験してもらうような施策が行われている日本の売り場は、まだ少ないと思っています。

肌に悩みを持つ女性にとって、スキンケア商品選びは永遠のテーマです。自分に合った商品を探し求めるための情報収集は積極的。商品が気に入ればリピートしますし、ブランドが持つ効果を最大限に自分のものにしたいという欲求も強くなります。オンライン・オフラインに関わらずタッチポイントを強化、エンゲージメントを高め、ブランドアンバサダーを増殖していく施策が、日本でも効果を発揮することは間違いないでしょう。

当社のユーザーにはコスメ・スキンケアブランド企業が多いので、「dermalogica」の事例は大変興味深い取り組みです。今後、日本で販売しているスキンケアブランド企業も是非、トライして欲しい取り組みだと感じています。


フューチャーショップからのお知らせ

フューチャーショップではEコマースのプラットフォーム「FutureShop2」に加え、オムニチャネルに対応する「ECショップ×実店舗 ポイント統合ASP FutureShop2X」を提供しています。

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星野 裕子

フューチャーショップ

星野 裕子(ほしの・ゆうこ)

株式会社フューチャーショップ 代表取締役

滋賀県出身。京都産業大学経営学部卒業後、リサーチ会社に勤務。ITバブル期にインターネットにハマり、ITベンチャーの創業メンバーとしてWebサービスの開発に携わる。
2002年9月、京都のレンタルサーバ会社、株式会社フューチャースピリッツにジョインし、「ショッピングカートASP FutureShop」の開発に従事。稼働店舗数900店を超えた2010年に、カート事業を分社化。株式会社フューチャーショップを設立し、ショッピングカートASP「FutureShop2」を提供している。

2016年4月現在、稼働店舗数2100店超。2015年の流通総額は710億を超えるECプラットフォームに成長。
最近はオムニチャネル対応プラットフォーム「FutureShop2X」と、越境ECに取り組める「FutureShop2 OVERSEAS」にも力を入れている。

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