ジャパネットたかたの髙田明前社長、エイチ・アイ・エスの澤田秀雄会長が考える仕事論とは? 「企業トップの最も大切な仕事」「事業を成功させるためのマインド」など、経営の要諦とも言えるテーマについて、大物企業家2人が本音で語り合った。一代で大手通販企業に育てあげた髙田氏らの言葉から、今後のEC業界を生き抜くヒントを見つけてほしい(対談は「第18回 企業家賞授賞式」で行われた)。

澤田 秀雄
澤田 秀雄 エイチ・エス証券 代表取締役社長、エイチ・アイ・エス 取締役会長
髙田 明
髙田 明 ジャパネットたかた創業者

経営トップとして、一番大切な仕事は何だと考えていますか?

経営トップの仕事は「人材育成」と「夢を語ること」

澤田会長(以下澤田 企業とは「人」だと思う。トップの仕事で最も大切なのは、人を選ぶこと、それから人を育てること。そしてトップが会社の5年後、10年後のビジョンを、企業としてのポリシーを語ることも大切だ。素晴らしい理念、熱意を持ち、努力する社長が率いている企業は必ず発展していく。

髙田前社長(以下髙田 僕も人を育てることが大切だと思う。社員に対して「10のうち9は叱って、褒めるのは1だけ」という態度で接した。自分なりに「お前たちに関心があるんだ、家族と同じように愛があるんだ」ということを伝えたかったから。

社員から好かれるのは簡単。しかし、好かれるだけの上司は長続きしない。好かれて、さらに尊敬もされる必要がある。僕は社員が大好きで、大好きだからこそ、本当に社員のことを考えて9割を叱り続けた

人を育てる上で、トップは常に夢を語り続けることも必要だと思う。仕事のスキルはマニュアルを作れば教えることができるが、それだけでは不十分。トップが夢を語り、価値観を従業員と共有することで、スタッフのやる気を引き出すことができると思う。

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孤独を感じたこと、つらくて誰かに代わってもらいたいと思ったことはありますか?

成功するまで諦めなければ失敗ではない

髙田 僕は正直、孤独だと感じたことは1回もなかった。なぜなら1回も失敗したことがないから。67歳まで1回も。なぜ失敗がなかったかというと、結果が出なくても、それは失敗ではなく「試練」と受け止め、次のチャレンジを続けたから。チャレンジを続けることで一段一段、目標に向かって上っていく。他人からは失敗に見えることでも、自分にとっては失敗ではない。

澤田 僕は今まで、たくさん失敗してきた。何かに挑戦したとき、失敗するとその原因を見つけ、改善してもう一度チャレンジする。でもまた失敗する。それでも諦めずに、失敗した原因を解決してチャレンジする。そうやって3回目で成功すると、世間からは「あいつは成功した」と評価される。過去の2回の失敗は消えてしまう。つまり、1回の失敗でやめてしまうから失敗になる。髙田さんが「失敗したことがない」と言われたのはそういうことかなと。

髙田 まさしく、澤田会長のおっしゃった通り。5回チャレンジして、5回目で成功したら、過去の4回の失敗は失敗とは考えない

今までで一番大きな試練は何ですか?

「覚悟」があれば試練を乗り越えられる

髙田 ジャパネットたかたは2010年に売上高が1,759億円となり、過去最高になった。エコポイントや地デジ化の流れで、テレビが最も売れていた時代。DVDやブルーレイ、テレビ台などを含むテレビ関連の売り上げだけで960億円もあった。

しかしその後、テレビの需要がなくなったため、2年後の2012年に会社の売上高はピーク時から600億円も下がった。利益も135億から73億円に半減した。そうしたらネット上に「ジャパネットはヤバい」なんてことを書かれた。

そのとき、僕は会社が潰れるなんて全然思ってなかった。でも、社員が心配しているし周りがいろいろと言うから、2013年は「覚悟の年」と決め、「過去最高益を出さなかったら社長を辞める」と宣言した。

そして、創業期の精神に戻って一生懸命やった。苦しい時こそひるんじゃいけないということで、あえて東京に撮影スタジオも作った。そうしたら社員がめちゃくちゃ頑張った。結果的に2013年の利益は154億円で過去最高になった。売上高も前年比で250億円ぐらい回復した。さらに2014年は売上高が1,538億円、利益は175億円に増えた。

2013年は他人から見たら危機だったと思う。でも、覚悟したら乗り越えられる。人間は気力と、原点に戻る気持ちがあれば、ものすごい力を発揮する

澤田 僕は、山一証券が潰れた時、子会社の証券会社の再建を引き受けた。しかし、当時は証券の知識がなかったので、引き受けてから経営に苦労し、本当にひどい目にあった。その会社はずっと赤字で、社員が半分ぐらい辞めたこともあった。今でこそ株式上場しているが、当時は異業種のビジネスに対して、安易に手を出したことを反省した。

証券会社を引き受けて痛い目にあったが、そこで学んだことも多かった。2003年にモンゴルで銀行を始めたとき、過去の失敗の経験を生かした。しっかり準備して、経営をその道のプロに任せた。そうしたら今度は大成功、今ではモンゴルで1番の銀行になった。過去の失敗がなかったらモンゴルでの成功はなかったと思う。

事業領域の拡大についてどう考えますか?
「企業家大賞」を受賞したストライプインターナショナルの石川社長からの質問

得意分野でNo.1を目指すべき

澤田 経営の正攻法は「選択と集中」で、自分の得意とする分野にヒト・モノ・カネを集中した方がいい。それで日本一、世界一を目指す。ただし、既存事業がこれ以上伸びにくかったり、シェアを広げにくかったりする段階に達したら、関連業種に事業の幅を広げればいいのではないか。

既存事業と異なる分野に参入すると、イチから勉強しなくてはいけないし、時間もかかりすごく苦労する。既存のプレイヤーが激しく競争している分野に後から参入して、簡単に成功できるほどビジネスは甘くない。これは僕の考えだけど。

髙田 私も澤田さんと同じ意見。澤田さんは、チケット販売(エイチ・アイ・エス)から航空会社(スカイマーク)、レジャー事業(ハウステンボス)と事業領域へと事業を広げている。だから成功したのだと思う。

僕が社長をやっていたとき、「化粧品を売らないか」などと異業種のメーカーから提案を受けたことが何度もある。でも、家電で成功したからといって、化粧品で成功できるとは思わなかった。餅は餅屋であり、自分の軸をしっかり固めなくてはいけない。

自分の得意なことをベースにして、そこに何かを加えていくと新しいモノができる。(ストライプインターナショナルの)石川社長は、アパレルを通して世の中に貢献するという素晴らしい理念をお持ちなので、それに関連したことで事業を広げるのが良いと思う。

上手く行かないとき、乗り越えるために気力を保つコツを教えてください(参加者からの質問)

苦しい時は自分を信じ、可能性を探す

髙田 人間が物事を達成できない要因は2つあると思う。1つ目は「自分自身を信じていない」こと。2つ目は、厳しい局面になると「できない理由にとらわれてしまう」こと。

僕は、自分を信じて、成功するために自分ができることを一生懸命考えてきたからどうにかなった。今を一生懸命生きること。自分を信じて、できることを考え続けたら、ほとんどのことは気力で達成できるのではないかなと思う。

澤田 長い人生の中では、失敗や上手くいかなくて落ち込むこともある。そういう時は、嘘でもいいから、明るく元気にやった方がいい。失敗したときに暗くなってしまうと、どんどん自信がなくなってしまう。明るく元気にやれば早く立ち直れるはず。

起業準備中です。一緒に夢を追いかけてくれる仲間や社員を集めるにはどうすれば良いですか?(参加者からの質問)

自分を高めれば仲間が集まってくる

澤田 真剣に人を欲すれば、人が現れると思う。僕がスカイマークを設立したとき、会社の信頼もないし、大手に比べれば給料も安い。人を集めるのに本当に苦労した。でも、心から人を欲した時は、同じ志の人が現れる

髙田 僕も同じ考え。仲間を集めるには、自分の「信念」「方針」「生き方」をしっかり確立することが必要。それができれば、同じ志の人が集まってくる。社員が1,000人になっても、2,000人になっても、トップがきちんと価値観を持っていれば、周りに同じ価値観の人が集まってくる。もっともっと勉強して自分を高めていけば、仲間が寄ってくる。

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渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

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