中国EC市場を狙う企業が知っておくべきECビジネスに関する法律と規制
中国内から越境ECによって商品を購入する市場規模(電子商取引による輸入額)は2016年に5.5兆元(約106兆円)となり、アメリカを抜いて世界最大のECマーケットになりました。10億人を超える消費者を抱える巨大マーケットに、多くの海外ブランドが越境EC型のビジネスで参入しています。2022年には12.1兆元(約234兆円)まで拡大すると予想(中国税関総署が発表したデータ)される越境ECによる中国マーケット。その市場を狙う海外ブランドは、何に注意すべきでしょうか。また、どのような法律・規制に留意すべきでしょうか。日本企業が中国市場でビジネスを展開するポイントと留意点を紹介します。
中国市場でビジネスを展開する際の留意点
① 中国国内の現地法人を持つ会社との提携が必要
中国政府は、中国内でEC(越境ECを除く)を手がける事業者は中国法人の登記をしなければならないという項目を、中国電子商取引法に設定しました。越境ECの場合は、中国国内の現地法人を持つ会社と提携し、税関手続きなどの代行を依頼する必要となります。
中国市場に進出し、あるプラットフォームで越境ECではないネット通販を開始する予定の海外A社のケース。中国電子商取引法によってA社は、法人登記をしなければプラットフォームで販売することができません。そのため、中国で子会社を設立してビジネスを行うこと、もしくはプラットフォームの正規代理店に業務委託することが必要となります。
②電子署名された契約は法的な効力を持つ
中国の「電子署名法」では、電子署名は従来の手書きの署名あるいは捺印と同等の法律的な効力を持っていると認定しています。養子縁組・婚姻・公益サービスに関する資料は例外として電子署名が認められませんが、ほとんどの契約は電子署名ですることができます。
たとえば、海外企業A社が、中国企業T社に中国本土における商品のネット販売業務を委託するケース。電子契約への署名により、法的な効力が発生します。
なお、中国には、「e簽宝」「上上簽」といった電子署名プラットフォームがあり、中国における電子署名の普及をサポートしています。
③消費者の個人情報保護
ECは消費者の個人情報を取り扱います。中国の「個人情報保護法」では、消費者の個人情報の収集・使用・保管などは、事前に消費者の同意を得なければ利用できません。
中国電子商取引法でも、プラットフォームに出店する出店者による個人情報の取り扱いが規定されています。個人情報の保護に関する法令遵守を求めているほか、個人情報の閲覧・修正・削除、登録抹消の手続について不合理な条件の設定を禁止。法令に基づき当局から情報開示を求められた場合にはこれに応じなければならないと規定しています。
④消費者の権利と利益への保護
ECビジネスはヴァーチャル環境で行われるため、中国の法律は電子商取引の消費者に対する保護を徹底しています。
抱き合わせ販売に関する特別規定
中国では「抱き合わせ販売」が多くの企業で採用されていました。「中国電子商取引法」では、「抱き合わせ販売」に対して厳しい規制を実施しています。「抱き合わせ販売」を行う場合は消費者に消費喚起を行い、初期設定でデフォルト選択してはいけないと規定しました。その規定に違反した場合、違法所得は没収され、罰金の行政処罰が科せられます。
保証金・デポジットに関する特別規定
「シェアサイクルアプリがユーザーに多額のデポジットを取引条件としたものの、資金繰り悪化で返金できない」という返金問題が大きな社会問題になりました。そのため、「中国電子商取引法」では、デポジットを取るEC事業者は、保証金返還の手続きを明示しなければならないと規定しています。また、保証金の受け取りと返還方法を明示しなければならず、返還について不合理な条件を設定してはならないとしています。
7日以内の返品義務
2017年施行の「ネット通販、7日以内無条件返品暫定方法」では、EC事業者に7日以内の無条件返品義務を果たす必要があると規定。ECプラットフォーム提供者には出店店舗の経営者が7日以内無条件返品義務を果たすように監督・検査し、技術的な保障を提供する必要があると規定しています。
ただし、消費者のオーダーメイド品、生鮮品、封を切った後のコンピュータやCD・DVDなどは返品規定には当たりません。
「中華人民共和国電子署名法」「中華人民共和国電子商取引法」などでインターネットを通じた商環境の整備、消費者保護を進めている中国では近い将来、新たな法律を公布し、繁盛している電子商取引市場のさらなる整備に力を入れていくことでしょう。
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