中国の2022年ダブルイレブンから見る成長分野と今後のEC業界の変化
例年に比べて盛り上げに欠いた2022年のECフェスティバル「W11(ダブルイレブン)」。プラットフォームやブランドは新規ユーザーやトラフィックの獲得、セールスプロモーションの促進よりも、既存ユーザーを維持し、より良い買い物体験の提供に注力したことも影響しています。販売事業者は効果の少ない広告出稿を減らした一方、バックヤードに力を入れて消費者に快適なショッピング体験の提供に努めました。2022年のダブルイレブンを振り返り、2023年のセール販売に役立つヒントをお伝えします。
EC市場全体は伸び鈍化も大手プラットフォームには新規ユーザー増加
新型コロナウイルスの影で、中国の消費は低下傾向にあります。オンライン小売総取引額とダブルイレブン総取引額の成長率は年々鈍化。10億人を超える人口による恩恵は減退し、消費者の購入意欲低下は顕著になっています。
そんななか、2022年のダブルイレブンでは例年とは異なる動きがありました。「Tmall」「タオバオ」は例年よりも先行販売のスタートを遅らせ、全体のセール期間を短縮した一方、ライバルの京東商城(JD.com)は2022年10月から新しくシーディングキャンペーン(認知活動)を導入し、ダブルイレブンのセール期間を例年より長く設定しました。
調査データによると、2022年のダブルイレブン期間中、EC業界全体のDAU(デイリーアクティブユーザー)は2020年と2021年の同期間をそれぞれ上回ったものの、大きな差は見られませんでした。
ただ、「Tmall」や「JD.com」といった統合型Eコマースの新規ユーザー数は、2021年比で大きく増加。EC市場全体を見るとセールに参加したユーザー数の伸びは鈍化してきていると言えるものの、統合型Eコマースで買い物をする新規ユーザーはまだ増えているようです。
伸びた販売形態、落ち込んだ販売形態は?
2021年と比較すると、ソーシャルコマースの成長スピードはさらに加速しました。また、脱炭素社会・グリーンカーボン社会をめざす機運の高まりで、中古品ECは、2021年比でアクティブユーザー数が400万人以上増加しました。
一方、共同購入型ECのアクティブユーザーは2022年より減少しました。越境ECもトラフィック減により、2021年比でアクティブユーザーは縮小しました。
物販系ECプラットフォームに加え、コンテンツシーディングプラットフォーム(コンテンツを軸としたプラットフォーム)は「二兎追う者が二兎を得る」という戦略を推進、ライブコマースのようなコンテンツ販売と物販の2方面から取扱高を増やしました。
他の人が消費するモノを自分もほしいと思う心理効果「バンドワゴン効果」を発生させることで、SNSでの拡散、購入数を伸ばしました。
たとえば、動画配信サイト「BILIBILI」は2022年にダブルイレブンへ初参加。特徴である「2次元カルチャー」を維持したまま周辺グッズのライブECなど活動を展開。Red(小紅書)は各カテゴリーのライバーによるライブ配信にカートへのリンクを置き、ユーザーがプラットフォーム内で直接、商品を購入できるようにしました。
進化する中国のEC業界、注目はメタバース空間のEC
今後、中国のEコマースは「ニューリテール」(オンラインとオフラインを統合した新しいオムニチャネルのビジネスモデルを意味する)戦略の下、デジタルリテール、インスタントリテール(ECで購入して数時間で商品が届く仕組み)、スマートリテール(テクノロジーを活用した小売店)を中心に新たな変革が起きると期待されています。
注目したいのが2022年のダブルイレブンでタオバオが公開した仮想空間「未来都市」とメタバース空間「Mantavos」。ユーザーはそれぞれの空間で新しい買い物を体験しました。
今後のダブルイレブンでは、知能型アバターが商品を提供するバーチャルリアリティ技術が広がっていくでしょう。その活用は無限に広がり、Eコマースに新たな変革をもたらすと期待されています。
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