モバイル決済サービスの誕生によって、現金を持たずに外出することは今や中国人にとって日常的なことです。バス、シェア自転車、友人との会食、オンラインショッピング、水道光熱費の支払い、観光地の入場券、映画、医療など、モバイル決済は日常消費で当たり前に利用できるようになっています。また、交通違反の罰金や寄付金の支払いもモバイル決済で行うことができます。あらゆる支払いにモバイル決済を利用できるようになり、中国人のライフスタイルには新しい変化がもたらされています。

調査機関であるiiメディアリサーチ(艾媒諮詢)の発表によると、2017年の中国モバイル決済取引規模は前年比28.8%増の202兆9000億元に達しました。利用者数は5億6200万人で前年比21.6%増。モバイル決済サービスの改善や消費者意識の変化に伴い、モバイル決済サービスはさらに普及し、取引規模は引き続き成長していく見通しです。

増加率
モバイル決済取引規模(兆元)
中国におけるモバイル決済取引規模の推移(2011年~2017年)
※iiメディアリサーチのデータを元に編集部で作成
モバイル決済利用者数(億人)増加率
中国におけるモバイル決済利用者数の推移(2014年~2019年)
※iiメディアリサーチのデータを元に編集部で作成

中国のモバイル決済サービスの代名詞と言えば「Alipay(アリペイ)」と「WeChat Pay(ウィチャットペイ)」。

「Alipay」はアリババグループが提供する中国最大規模のオンライン決済サービスで、強力なECプラットフォームと豊富な支払シーンを備えています。一方、中国トップのソーシャルプラットフォーム「WeChat」のモバイル決済サービスである「WeChat Pay」は、顧客ロイヤリティが高く、巨大なトラフィックを持っています

中国の市場シェアを見ると「Alipay」と「WeChat Pay」の2サービスで92.53%に達し、流通分野において圧倒的シェアを占めています。

Alipay	53.7
WeChat Pay	38.8
壱銭包	1.23%
UMFintech	0.87%
YeePay	0.68%
99Bill	0.65%
百度銭包	0.31%
蘇寧金融	0.28%
その他 3.45%
中国モバイル決済市場シェア(2018年第3四半期)
易观のデータを元に編集部で作成

モバイル決済最大手―Alipay

QRコードは日本人が開発、中国人によってモバイル決済の手段として一般的に普及し、現在ではさまざまな生活シーンで幅広く使われています。

2011年、中国のEC大手アリババグループ「Alipay」のスマホアプリを通したQRコード決済機能の提供を正式に開始し、オフライン決済の市場に進出しました。それ以来、「Alipay」はユーザーの生活に深く浸透しています。「Alipay」アプリは以下のような機能を搭載しています。

豊富な金融商品
ECとの連携機能
メッセージが送られてくる機能
ユーザーのロイヤリティを高めるディスカッショングループ
オフラインでの活用機能
決済ツールの基本的機能(QRコードに基づく)
ローカルサービス(020機能)
各種オンラインアプリ(Alipayのミニブログラム)

一方、インターネット大手テンセントも「WeChat」でモバイル決済機能をリリース。現在、特に中国の主要都市では、財布を持たずに出かけることが一般的になったと言える状況になっています。モバイル決済は中国人のライフスタイルを劇的に変えたと言っても過言ではありません。

モバイル決済サービスの革新

中国ではなぜモバイル決済が大多数の人に利用されているのでしょうか?

アリペイの公式サイト
アリペイの公式サイト

近年、BAT(B=Baidu(バイドゥ)、A=Alibaba(アリババ)、T=Tencent(テンセント))をはじめとしたインターネット大手企業がO2Oモデルに注力したことがあげられます。

中国ではすでにECが、衣食住や交通など各方面に浸透しています。これを前提にして、オフラインをより便利にするためにモバイル決済サービスが使用されるようになりました。このライフスタイルの変化によりモバイル決済の普及が一層促進され、中国人の決済習慣が変わっていきました

次に、モバイル決済はいつでもどこでも使用でき、持ち運びやすいという特徴を備えているので、従来の支払方法と比べると、小額でも素早く、便利に日常生活の領域で広く応用されるようになりました

QRコードを読み取り、決済完了というモバイル決済技術のイノベーションによって、オンラインとオフラインの融合が実現。また、ハードウエアのコストが下げられ、小売店、野菜市場など、さまざまなオフラインシーンで利用されるようになりました

QRコードのサンプル
QRコードに基づき支払いを完結

QRコード決済サービスの特徴は下記のとおりです。

  • 低コスト:スマホさえ持っていれば、QRコードを読み取るだけで支払いを済ませることができます。また商店にとっても、QRコードを付けたものを用意するだけですむことが多く、ほぼゼロコストと言えます。
  • 読取精度が高い:QRコードをスキャンする場合、枠内にQRコードリーダーが100%入らなくても読み取ることができる
  • 普及率が高い:商店の導入、消費者の利用のハードルがないので、子供からお年寄りまで「QRコードのスキャン」で簡単に支払うことができます。

しかし、QRコード決済にも問題がいくつかあります。たとえば、ネット環境への依存、そして、スマホの電池の残量も影響します。

特に、セキュリティに関しては、モバイル決済の技術がさらなる発展を遂げるまでは、メーカー側とユーザー側の両方の対応が必要になります。これは開発者と利用者の努力のもと、監視を強化し防護措置をとることでリスクへの予防意識を高めることが大切だと考えられます。

日本でのモバイル決済

日本でも「Alipay」の導入店舗は5万店にまで広がっています。その中には日本の三大コンビニエンスストアであるセブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートも含まれています。また「WeChat Pay」は新千歳空港やドン・キホーテ、富士急ハイランド、各大手ショッピングモールなど、中国人観光客が多く集まる場所に導入されています。

これら日本の店舗は主に中国人観光客と中国人留学生を対象にモバイル決済サービスを提供しています。中国人の使用率約99.9%に比べて、日本人のモバイル決済の使用率は相当低い状況です。その原因は、交通系電子マネーでの決済サービスが先行し、利用率がかなり高いからだと思われます。

交通系電子マネーは、交通、小売、サービス、スーパーなどの幅広い分野をカバーしているため、モバイル決済への転換やモバイル決済の普及を阻んでいると思われます。

Suica
交通系電子マネーの1つ「Suica」

それでも2018年11月27日、「WeChat Pay」と「LINE Pay」は東京で記者発表会を開催。業務提携を通じ、日本でのモバイル決済を可能にする業務の展開を発表しました。

LINE Payは「WeChat Pay」と提携することで、実店舗に中国人観光客向けの決済サービス機能を追加、多くの日本の実店舗がモバイル決済を導入することに寄与するでしょう。日本の実店舗は同じQRコードで、日本人ユーザーには「LINE Pay」、中国人観光客には「WeChat Pay」で支払いを済ませてもらえます。また、日本の実店舗はQRコードスキャナーなどの電子設備を導入する必要がなく、運営のデジタル化を簡単に実現できます。

◇◇◇

現在、モバイル決済の分野においては、中国は世界第1位であることは間違いありません。イノベーションは先進国で始まり、徐々に発展途上国へ広がると考えられています。しかし、イノベーションは発展途上国の新興市場で始まり、先進国に大きな影響を与える場合もあると考えられます。

今後、中国のモバイル決済サービスは世界で飛躍的に普及していくと予想されています。

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