インターネットとスマートフォンの普及によって、消費者の情報への接し方が変化した今、カスタマージャーニーを捉えるうえで、いかにトラッキングの穴をなくし、タッチポイントを適正化するか。マーケティング ディレクターの遠藤克之輔氏がGapの取り組みを紹介する。オムニチャネルとしてどのようなファンクションがあるかではなく、ブランド体験によってカスタマージャーニーのプロセスをどう進んでもらうかという観点での事例となっている。 写真◎Lab

カスタマージャーニーの流れ方は複雑に入り組んでいる

Gapは、米国サンフランシスコで1969年にオープンしたアパレルブランドだ。日本には1995年に進出し、現在はGapフラッグシップ銀座、Gapフラッグシップ原宿を始め全国108店舗を展開している。

購入者がだんだんそのブランドを好きになり、ロイヤルカスタマーに成長していくという考え方をカスタマージャーニーと呼ぶが、企業によってその設計には違いがある。カスタマージャーニーの基本はマーケティングプロセスとチャネルの組み合わせだが、Gapの考えるマーケティングプロセスを図にすると、以下のようになる。

Gapのマーケティングプロセス
Gapのマーケティングプロセス

ブランドあるいは商品について知るのが第1段階の「Consideration」(検討)で、広告やブランドサイトなどで見る場合もあれば、友人から聞いたとか有名人のブログを見てという場合もあるだろう。知ったものを店舗やオンラインショップで買うことにより、「Transaction」(取引)が発生する。購入したものについてソーシャルメディアで触れたり、取引情報を元にマーケティングのメールを送ったりといったやり取りが可能になると、「Retention / Engagement」(複数回の利用)という次の段階に入る。そのブランドを気に入り、さらに他人に勧めるようにまでなれば、「Loyalty / Advocacy」(忠誠と支援)の段階となる。

ただし、実際のユーザー行動はこの流れの通りではない。そのブランドで長く購入し、友人に勧めている人がいても、それをトラッキングできていないという場合もある。また、最近ではソーシャルメディアから始まるブランド体験というケースも多いし、スマートフォンしか持っていない世代もある。そこで、モバイル対応やSNSの活用、オフラインではビジュアルマーチャンダイジングやCRMによるメンバーシッププログラム、デジタルサイネージなど、多様なチャネル(タッチポイント)を配置して、コミュニケーションの準備をしておくことが重要になっている。

トランザクションデータが大きくたまるのは、購買によって発生する店舗のPOSデータ、オンラインストアのECログ、マーケティングサイトの行動ログだ。それ以外にも、キャンペーンログや広告関連のデータなどそれぞれのタッチポイントで得られるデータがある。これらを連携させることで、カスタマーについて知ることができ、効果的なマーケティングが可能になる。ただし行き過ぎは禁物なため、情報を収集することでカスタマーにメリットがあると感じてもらう必要がある。

ギャップジャパン株式会社 マーケティングディレクター 遠藤 克之輔 氏
ギャップジャパン株式会社
マーケティングディレクター
遠藤 克之輔 氏

リアルストアとオンラインストアで同一IDを使うCRM

「Gap MEMBERSHIP」は、会員登録することで購入履歴に応じてクーポンや限定グッズをプレゼントするというメンバーシップである。ポイントは、リアルストアとオンラインストアの購入情報を同一IDに登録する点だ。リアルストアでは、会員証として発行したQRコードをスマートフォンなどに表示させ、リーダー端末にかざすことでIDを認識し、POSデータをそのIDに結びつける。オンラインストアではログインIDや登録メールアドレスを入力することで、IDと購入データを結びつける。オフラインとオンラインの両方のデータをひとつのCRMにまとめ、購入金額、回数、店舗、頻度、間隔、イベント参加、メールクリックなどの「取引データ」と「顧客属性」などをひも付けて顧客ごとのカスタマイズ施策を実施する。

ECサイトで買い物をする時にログインすることは抵抗がないだろうが、店舗で買い物をする時に会員証を提示するのは面倒なものだ。そこで、できるだけ簡単に会員IDが登録できるようにするための工夫がQRコードである。トラッキング漏れがないようにするために、会員になると買い物がいつでも5%オフになるという特典をつけてQRコードをかざすモチベーションにしている。さらに、会員情報を元にした誕生月の割引や会員限定セール、リアルストアとオンラインストアの年間合計購入金額が10万円を超えるとギフトが届いたり会員限定イベントに招待されたりといった特典がある。

オンラインストアからリアルストアへの誘導

現在は米国のみだが、オンラインストアとリアルストアを連係するサービスを展開している。ひとつは「FIND IN STORE」(店頭で見つける)で、気になったアイテムの最寄りストアでの在庫を、オンラインストア上で探せる。

また、「RESERVE IN STORE」(店頭で予約する)は、オンライン上でストアでの取り置きができるサービスだ。取り置きが完了するとメールが届き、そのメールから1日は取り置いてもらえる。実際にストアで見て気に入らなければ、購入しなくてもよい。オンラインストアを見ている時やソーシャルメディアで紹介されている商品が気になったらとりあえず取り置きし、後で実際にショップで見て、購入するかどうか決めるといった使い方が想定されている。

国内でのオンラインとオフラインの連携としては、以下のような取り組みを行っている。

  • オンラインストア購入時に「Gap MEMBERSHIP」への登録を推奨
  • オンラインストアとリアルストアのカスタマーへ、統合されたコンテンツでメールニュースを提供
  • プロモーションも可能な限りオンラインとリアル共通の期間や内容で実施
  • オンラインストア購入商品をリアルストアで返品可能

また、オンラインストアでもブランディングを重視したキャンペーン展開を行う。アパレル業界ではシーズンごとにキャンペーンを行うのが通例だが、オンラインもオフラインの広告もすべて同一キャンペーンを行っている。その際には、キャンペーンの中心になっている商品が、実際に店舗に行ったらなかったということがないように気を付けなければならない。消費者にとってはオフラインもオンラインもGapというブランドだという意識が必要だ。また、オフラインの広告にもオンラインのマイクロサイト(キャンペーンサイト)のURLを必ず入れてあり、アクセスを促して情報を集約している。

その他にも、2014年のホリデーシーズンには、ストア、マイクロサイト、各種メディア媒体、アプリ、イベントスペースなどマルチチャネルで展開するプレゼントキャンペーンを行っている。キャンペーンの応募には購入したレシート上の取引番号が必要だが、アプリからのスキャンなどで簡単に応募ができる。いたるところでGapというブランドを体験してもらうことで、購入を促すことを目指した設計だ。さらに、キャンペーンに応募する際の情報はCRMに登録し、マーケティングのカスタマイズに利用する。

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