柏木 恵子 2015/7/17 7:30

消費者は店舗、ネットなどさまざまなチャネルを通じて消費活動を行うようになった。ネットショップや小売店がオムニチャネル化を実現するためには、消費者の心理まで想定し、顧客と接触するベストの時間軸や接点などを洗い出すことが重要になる。たとえば、広告やクーポンを露出するのはどの時間帯が有効なのかといった、データに基づくマーケティングなどが必要だ。それにはさまざまな顧客データを統合して顧客接点を多様化する、データの一元化やシステム基盤の整備が不可欠となる。写真◎Lab

消費者はさまざまなチャネルをまたがって購買するが、ECサイトはその顧客接点の一つに過ぎない

オムニチャネルが一般的になったこれからの消費シーンにおいて、買い物をする人はどのような消費行動をたどるのだろうか。恐らく、最も身近な接点となりつつあるスマートフォンを中心として、アプリのPUSH通知や位置情報を使った集客、購入後のSNSを使ったバイラルマーケティングが当然のように行われているはずだ。

最近ではビーコンを使ったアプリも普及し始めており、ウェアラブル端末の登場で消費者行動はこれまで以上に変化していくことは容易に予想できる。

数年後のオムニチャネル時代のショッピング形態をこう予測するのは、富士通のデジタルマーケティング推進部・西本伸一マネージャーだ。

西本氏の予測では、今以上に消費者はさまざまなチャネルを通じて商品を購入することが加速するという。その際の対応として重要となるのは、相手の心理まで想定した上で、時間軸や接点を洗い出すことだと指摘する。

たとえば、「広告を露出するのはどの時間帯がいいのか」「クーポンはどんなタイミングで提供すれば効果的か」といったことを考えるのが重要になる。これは新しい手法ではない。これまでペルソナマーケティングと呼ばれていたような、データに基づくマーケティング手法の1つである。

富士通といえば基幹システムのイメージが強いが、POS端末の開発、ECシステムのインテグレーションなども手がけている。西本氏はこうしたバックグラウンドを基に、多様なタッチポイントを通じて得たデータを統合し、ECサイトや実店舗などのマーケティングに活用するためのオムニチャネル成功ポイントについて解説した。

富士通の西本伸一マネージャー
富士通株式会社
統合商品戦略本部
ビジネスアプリケーション推進統括部
デジタルマーケティング推進部
マネージャー西本伸一氏

消費者が利用するチャネルすべてにおいてICTが介在

現在の消費者が商品購入に至るまでには、利用するチャネルすべてにおいてICTが介在する。そのため、消費者の行動をデータとして収集し、表裏一体でプロモーションを実行し続ける必要がある。

消費者はさまざまなチャネルを消費行動の一連の流れのなかで使い分けるようになった。こうした人を自社のECサイトや店舗に誘導するには、「コンテンツ」「タイミング」「チャネル」を見極めなければならない。それには収集して分析したさまざまなデータが役に立つ。

消費者が利用するチャネルすべてで切れ目なく追いかけることが必要だ。

オムニチャネル化を実現し成功に導くためには、さまざまな顧客接点のデータを統合する器として、プライベートDMP(Data Management Platform:詳細は富士通のコラムを参照)の構築も有効だ。

既存のCRMを拡張するアプローチもあるが、富士通ではECサイトを軸にしたオムニチャネル化の取り組みを提案するケースが多い。ECソリューション「SNAPEC-EX」を中核に、ECサイトの新規構築/リニューアルに合わせて、さまざまなデータとの統合を進めるのが特徴だ。

データを蓄積するための器となるシステム基盤をECシステム側で構築、既存の店舗系システムとの連係を進めていくという。最終的には外部データとの連携で、オムニチャネルマーケティングを実現するための高度なデータベースを、プライベートDMPとして育てていくというステップを踏む。

富士通が考えるオムニチャネル成功のロードマップ
オムニチャネル化のためのロードマップ

POSやCRM、基幹系など、さまざまなシステムを一気に入れ換えることは現実的ではない。既存業務との兼ね合いもあるため、部分的に入れ換えていくことになるが、最終的なゴールを見据えておかなければ、単なるシステム開発で終わってしまう

ECをリニューアルしてから既存システムとの連係を図り、段階的にオムニチャネルを実現するためのIT基盤を整備する考え方も一例に過ぎない。それぞれの企業の状態や優先すべき課題や問題によって、方向性やあるべき姿は異なっているからだ

ECサイトの役割は企業の売上拡大だけに留まらず、自社ファンの拡大やブランドイメージの浸透など様々な役割を担っており、その用途に応じて企業価値そのものに影響を与えるようになり始めている。

今ではECサイトも企業戦略の一部となった。企業価値向上のための戦略として、どのようなECサイトが自分たちの企業にとって最適なのか、といったコンセプト設計がこれからはより重要となる。これまでは単なる商品を販売するチャネルとして存在すればよかった従来型ECサイトからの脱却が必要」と西本氏は説明した。

オムニチャネル時代のデータは全社で共有・利活用

オムニチャネル化を進める上ではデータの一元化やシステム基盤の整備が不可欠となるが、IT部門だけでの実現は難しく、体制面での課題が必ず発生する。そこで、オムニチャネル時代のデータの活用方法について、西本氏は次のように説明する。

データはIT部門が管理するだけでなく、事業拡大のための共通資産として、全社で共有、協力して活用するものである。

オムニチャネルに取り組んで効果を最大限発揮するには、IT基盤の整備は避けて通れない。たとえば、アプリを使って来店促進を図るモバイル対応や、スマホアプリの導入ハードルはそれほど高くないだろう。しかし、オムニチャネル化による本来の効果は期待できない。

ネットと実店舗などの顧客や在庫データが一元化されていなければ、統合的な顧客行動などの分析ができず、マーケティングに生かすことも難しくなる。そのためにも、データを一元的に管理するシステム基盤が不可欠なのだ。

一方で、ECサイトを運用している現場部門からの要望で悩んでいるというシステム部門も多い。理由は、現場は色々な施策を実施したいので新しい技術やサービスを取り込んでいきたいと考えているが、現行の基幹システムとの兼ね合いがあり現実問題それが難しい。「やはり、直接お客様との接点が多い現場部門からは、現状に対する危機感や焦燥感を感じているのではないか」と西本氏は語る。

ECサイトのフロント側は技術の進化へ対応していく必要がある。一方で、バックオフィスのEC基盤も固めておかなければ、フロント側の変化にも柔軟には対応できない

富士通が考えるオムニチャネル成功のロードマップ
ECサイト構築のポイント

ECサイトでの買物の流れは、「商品選択 → 購入 → 配送」と続いているが、基本的なこの流れは技術が進化しても大きくは変わらない。仕組みとして、消費者が利用するフロントは技術進化によりどんどん変化していくが、購入や配送は選択肢が増えることはあっても、大きく変わることはないと富士通は考えている。そして、サイト運営側が利用するバックオフィスは、業務プロセスを支える機能でもあるため、この基盤をしっかり作っておくことがポイントとなる。

消費者にとって便利で快適なECサイトの裏側でも、バックオフィスでは従前どおりの業務運用が行われるため、注文件数が増えるほど処理や管理作業も比例して増大する。余計な作業ミスやトラブル回避のためにも、バックオフィスを担うEC基盤をしっかりと固めておくことが、売上拡大への土台作りで重要だ。

消費者一人ひとりへの最適なアプローチ実現に向けたサービス提供

バックオフィスの重要性は説明したが、フロント側が何もしないという訳にはいかない。ECサイトのフロントは、技術の進化へ対応していく必要がある。富士通ではそれを実現するためのサービスとして、SNAPEC-FORCEシリーズを発表している。消費者目線に合わせた快適なECサイトを提供・運用するための連携を強化し、スピーディーに顧客体験価値を高めていくサービスをこれから順次拡充していくという。

  • レコメンドサービス:SNAPEC-FORCE Recommend
    ⇒ 消費者1人ひとりに最適な商品を自動表示し、クロスセルやアップセルで購買単価を向上
  • サイト内検索サービス:SNAPEC-FORCE Search
    ⇒ 消費者が求めている商品を的確に表示し、“検索結果ゼロ件”を防止
  • メール配信サービス:SNAPEC-FORCE Mail
    ⇒ 会員属性から対象を抽出することで、消費者に応じた効果的なメールマガジンの高速配信が可能
  • サイト分析サービス:SNAPEC-FORCE Analytics
    ⇒ ECサイトに特化したアクセス解析・課題判定・改善提案を自動的に行い、PDCA サイクルをサポート
富士通が考えるオムニチャネル成功のロードマップ
プロモーション機能を強化

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