中川 昌俊 2014/9/12 14:38
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現在、EC業界では「オムニチャネル」という言葉が最も注目を集めており、多くの企業がオムニチャネル施策をどうするべきかを悩んでいる。しかし、実際にオムニチャネル化を進めることで、どういったことができるのかを理解している企業は決して多くない。そこで、ケーススタディを交えながら、富士通が目指すオムニチャネルの姿と、それを実現するためのソリューションの強みについて富士通システムズ・ウエスト ECサービスソリューション事業部の田中一郎プロジェクト部長が説明した。

田中 一郎 氏
株式会社富士通システムズ・ウエスト
ビジネスソリューション本部
ECサービスソリューション事業部 プロジェクト部長

オムニチャネルとは顧客の囲い込み戦略

富士通ではEC事業者向けにECサイト構築パッケージ「SNAPEC-EX」を提供しており、今回壇上に立った田中氏もその販売を推進している。田中氏はもともと、コンビニエンスストアや量販店向けのPOSシステム開発に従事し、その後は通信キャリア向けのシステムエンジニアを経て、スマートデバイス向けの音楽・映像・書籍配信システムの企画開発などを中心に行ってきた。そして現在はECサービスソリューション事業部のプロジェクト部長として、企業のECサイト構築プロジェクトを推進している。

田中氏が携わるプロジェクトが推進する「SNAPEC-EX」は、有機・低農薬野菜の宅配事業を手掛ける、らでぃっしゅぼーやが同サービスを使い、別々に運営していた2つのECサイトを統合。レコメンド機能を強化するなどして、ECサイトを大幅リニューアルした。これにより、旧ECサイトと比べて120%ほど受注額が増えたほか、レコメンド機能を利用したクロスセルで購入金額は従前比10%増という効果を実現した(詳細な事例はこちら)。

日本では“今年はオムニチャネル元年だ”といわれている。ただ、オムニチャネルという言葉自体は07年に米百貨店のメイシーズが始めたことから生まれた言葉だ。当初は店舗に対象の商品の在庫があるかどうかを、接客中にリアルタイムで確認・表示するといったサービスだった。従来は接客を中断しバックヤードに在庫状況を確認しにいく必要があったが、店員が調べに行っている時間が長いと、いつの間にかお客様が売り場を離れてしまうことも多かった為、機会損失をなくし顧客満足度を高めるために始めたサービスだった。その後、ネットで購入した商品を店舗で受け取れるサービスなどの充実化を図った結果、効果が出始めたことから、メイシーズは11年に「オムニチャネル宣言」を出した。このことから、オムニチャネルという言葉が広がっていったという。

「このことからも分かるが、オムニチャネルは来店するお客様が少ない中、いかに既存のお客様をつなぎとめておくかという戦略といえる。一言でいうと“顧客の囲い込み戦略”だ。」(田中氏)

メイシーズは百貨店のランクでいうと中級に当たり、メイシーズでなければ買えないブランドなどは全くないような百貨店だ。そのため商品自体のロイヤルティが高くなく、顧客も流動的な人が多い。そのため、顧客が購入を迷ったときにしっかりアプローチできるオムニチャネル戦略が重要になったといえる。

様々な状況で顧客にアプローチできる環境に

では、現在、日本においてどんな形でオムニチャネルが実践されているのか。ケーススタディで見てみる。

ある20代の男性サラリーマン(Aさん)は、いつものように通勤中にニュース記事などをスマホで見ていた。そのサイトには、よく利用するお気に入りのショップの広告が出ており、サイトを覗くと好みのネクタイを見つけた。
キャンペーン期間中であったため、「いいね」ボタンを押すとポイントがプレゼントされるというのでとりあえず押しておくが、降車駅に着いたためスマホの画面を消して、会社へと向かう。営業での移動中に、スマホで見ていたショップの店舗の近くを通ると、プッシュ通知で「今なら10%オフ」といったメッセージが届き、それを見たAさんは仕事が終わってからその店舗に向かうことにした。
お店のフロアに入ると、再びプッシュ通知で「来店ポイント100ポイント贈呈」というメッセージが届いた。さらに、お店の店員さんはなぜか自分の好みのアイテムばかりをお勧めしてくる。
ただ、Aさんは結婚しており、奥さんに買っていいかを相談する必要があったため、買わずにカタログだけもらって店から出た。自宅へ持ち帰ったカタログにはコード入りのシールがあり、それを服のかかったハンガーに貼ってスマホで見てみると、ネクタイがどんな感じで服と合わせられるかがバーチャルで見られるようになっていた。
奥さんにもそれを見せながらお願いするとOKが出たので、早速スマホで購入し、もらった来店ポイントを利用するために店舗受取りを指定することにした。

ケーススタディについて説明

こうしたことは既に実現可能な技術となっており、ネット、店舗、SNS、街頭、カタログなど様々なチャネルで顧客への接触を図っていけることがわかる。そして、販売事業者にとっては、顧客との接触を洗い出し、効果的な接点を可視化・分析することが重要だといわれている。

分析を行うために必要なのが、実際に顧客がどういった経路で情報を得て購入に至ったかを図で表す「カスタマージャーニーマップ」だ。「カスタマージャーニーマップ」を作るうえで重要なのは、顧客目線で考えるというのは当然のことながら、心理まで想定することだ。「商品の広告を見たときにどう思ったのか」、「購入ボタンを押した際にどう考えたのか」といったことを仮説でいいのでしっかり押さえておくことが重要だ。また、商品が認知されてから購入に至るまでどのくらいの日数がかかるのかという時間軸でも考えておく必要がある。接点の重要度をスコアリングすることも大切な作業となる。ケーススタディでいうと、最初の接点であるネット広告で購入を決めるケースが多いのか、それともクーポンの存在が大きかったのか、はたまたカタログから実際のイメージを膨らませることができたのが決め手になったのか、こうしたことをしっかり購買プロセスとして管理しておくことが必要だ。

では、先ほどのケーススタディにおける技術的な側面はどうなっているのか。まず、最初の接点である広告はリターゲティングにより、表示することで興味のある顧客を再度ECサイトへ呼び込んでいる。

「リターゲティングは怖い、怪しいといった声も少なくないが、実際の数字を見てみるとしっかり成果が出ており、売り上げ増につながっている。」(田中氏)

また、広告をクリックするとLPOで顧客ごとに最適なコンテンツを表示している。A/Bテストも行うことでさらに最適なコンテンツを検証・適用することも行える。そして、SNSを利用してもらうことで、ソーシャルリスニングという形で顧客がどのような人なのかを把握することもできる。GPSの位置情報を使ってメッセージを送り、来店した顧客に対してはビーコンという技術を使って、どんなお客さんが来たかを瞬時に店員に伝え、それを基にお勧めの商品を提案している。カタログのマーカーシールはAR技術を活用することで実現し、ネットとリアル店舗の在庫情報をシームレスに連携させることで店舗受け取りを可能にしている。

すでに様々なチャネル向けにサービスを提供している富士通

ただ、こうした顧客の利用する“チャネル全て“に応じて切れ目なく追いかけるサービスは、一歩間違えれば“ストーカー”と捉えられてしまう可能性もある。そのため、実際に先ほどのケーススタディのように顧客にアプローチした場合には、お客様からクレームが出てくることは確実。そのため、実際はどこまで行うべきかを慎重に考えて実行する必要がある。

とはいえ、日本の人口は今後、減少傾向になるといわれており、一度つかんだ顧客を離さずにいろんな商品を提案していきたいという流れ自体は、経済全体として今後ますます強まってくることは間違いない。

では、そうした状況に対して富士通はどんなサービスを展開していくのか。富士通では、あらゆる分野でサービスを展開しており、様々な顧客との接点がある。こうしたデータを活用することで、価値のある情報に高めていこうと考えている。具体的には、たとえば豆乳という商品には「健康志向」や「ダイエット」などというように、商品ごとに約20の属性を付与。顧客の過去の購買履歴を分析することで、その顧客の好みやどのような商品を買う傾向にあるかを判断し、おすすめ商品などを提案できるようなデータ提供を行っていこうと考えている。また、こうした分析を行うことで、世の中のトレンドも判断できる。

「富士通はEC構築パッケージ以外でも、リアル店舗向けの販売管理/在庫管理システムやPOS業務からコールセンター向けシステムなど、様々なサービスやシステムを提供している。
オムニチャネルを実現するためには、ECだけでなく“すべてのチャネル”で顧客に対してアプローチしていかなければならない。
すべてのチャネルでサービスを展開している企業はどこだと考えたときに、富士通ではないかと考えている。
かつ、富士通では先ほど示したように、企業内に散在している基幹データや外部データをリアルタイムに統合・分析することで迅速な顧客アプローチを可能とする技術も有している。
こうしたサービスも含めてCX(顧客経験価値)向上に寄与していきたいと考えている」(田中氏)

最後に田中氏は、ネットショップが最初に行うべきオムニチャネル施策として、「ネットショップとリアル店舗の在庫の一元管理」を挙げた。次に「顧客情報の一元管理」、その後に「購買履歴の一元管理」など段階的に行っていくことで、オムニチャネル施策を進めていくべきだと提案した。

富士通が展開する製品群

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