EC事業が成功するかどうかの8割は、始める前のEC事業計画の策定で決まる
EC・通販サイトの重要性が再認識されているが、その事業計画のレベルは各社さまざまだ。現実的なロードマップを作成できている企業はごくわずかにすぎない。このままではECで成果を上げるのは困難だと言わざるを得ない。EC事業の成功は事業計画書によって決まるといっても過言ではない。ワークスアプリケーションズで大手企業のEC事業を専門にコンサルティングを行う小嵜秀信氏が、これまでの経験をもとに、EC事業を成功に導くための具体的手法を解説した。写真◎Lab
すべての起点はEC事業計画
「EC事業計画の策定で、売上の80%が決まる~現役ECコンサルタントのノウハウを大公開~」と題するセッションに登壇した小嵜氏が言及したのが、「EC事業計画の重要性」「分析の重要性」「EC事業計画作成のあり方」という3つのアジェンダである。
多くの企業では、単なる目標数字の逆算やシステムの機能要件書をもってEC事業計画としている。しかし、小嵜氏は、EC事業計画こそがすべての基点であり、「将来そのEC事業が、『どのような価値をお客様に提供し、発展していくか』を示すロードマップ」であり、「すべての戦略(マーケティング、商品マーチャンダイジング、カスタマーサポート)の指針となるべきもの」であると強調する。
また、EC事業計画を作成することで、価格訴求力、品揃えの豊富さ、サポートの充実、商品提案力、リアル店舗とのシナジーなど、何によって顧客に満足を提供するのかという軸となる方針を明確になり、「PDCAサイクルが有効的に機能し、そのECサイト独自のKPIが明確になる」と語る。
そして、このEC事業計画を作成するうえで欠かせないのが、Webサイトの分析であると話す。具体的には、顧客のユーザー属性、販売傾向、来訪経路などを複合的に分析することでで、ロイヤルカスタマーのスクリーニングを行うことができる。つまり、「ターゲットユーザー像を明確にすることで、『なぜお客様が買うのか?』という理由を明確にすることができる」(小嵜氏)のだという。
例えば、あるリアル店舗における購入頻度の高い顧客の特徴を分析したところ、「野菜・果物、調味料系の構成比が高い」という傾向があれば、「日常のインフラとして使われている」ことがわかる。また、「利用時間帯は11時~12時台が最も多い」「高級マンションの多い地域のEC利用頻度が高い」「店舗が近くにある場合の利用割合が低い」といった 傾向をつかむことで、「店舗への信頼がある」「常に買いに行ける場所ではない」「所得が比較的高い層である」「午前中の空いた時間に利用」といったロイヤルカスタマーの“顔”を次第に明らかにすることができる。
ECを行う目的とユーザーが自社に求めることを把握することが重要
EC事業計画を策定するうえで、まず取り組むべきことは、EC事業の目的と提供する価値を明確にする必要であると小嵜氏は説明する。企業にとってECサイトが受注窓口であることは言うまでもない。ただし、単にそれだけにとどまるのではなく、「売上拡大や顧客ニーズの開拓、本業に対する補完、顧客満足度向上、カスタマーサポート、マーケティングなど、顧客とのコンタクトポイントとしての役割を持たせていくことが重要だ」と小嵜氏は語る。
次に、自社ECサイトの強みと戦略を明確にすることと取り組むべきだとする。ビジネスのプレイヤーを、
- 顧客(customer)
- 競合(competitor)
- 自社(company)
の3つの軸から分析し、自社の課題や成功要因を導き出す「3C分析」と、
- 自社の機会(事業機会)
- 脅威(事業脅威)
- 強み
- 弱み
の4つの要因をクロス分析することで自社の成長戦略を創出する「SWOT分析」、「競合他社分析」などを通じて、自社のECサイトの強みが、商品(品質、価格、希少価値など)、サービス(配送、サポート、リアル連携、特典、フォローなど)、コンタクトポイント、コミュニケーション(広告、既存事業活用など)のうち、どこにあるのかを客観的に把握する。すなわち、「お客様がこのECサイトで買う理由」を明らかにするというわけだ。
こうしたユーザー像に基づいたニーズや行動を明確にすることで、サイトデザインからフレームワーク、サイトフロー、システム、マーケティング、プロモーション、商品の品揃えまで、あらゆる施策をECサイトに紐づけることができる。顧客にとって、わかりやすい、使いやすい、支持されるECサイトを実現できる
そして、「EC事業をどのように展開していくのか?」という内部要因(独自性)と、「ECを取り巻く環境がどのように変化していくのか?」という外部要因(トレンド)を踏まえた上で、実行可能な数値目標を策定していくのである。
EC事業の成功は、こうした事業計画書によって決まるといっても過言ではない
新しい機能要件に無償バージョンアップで対応
ワークスアプリケーションズが提供しているEC・通販パッケージ「COMPANY ECシリーズ」は、サイト構築の「COMPANY CMS」、販売の「COMPANY E-Commerce」、顧客対応の「COMPANY E-Support」、Webマーケティングの「COMPANY E-Marketing」といった大きく4つのプロダクトから構成されている。
従来のパッケージでは、最小の共通機能のみを標準機能化しており、不足機能については企業ごとにカスタマイズを行って追加することが基本となっていた。その結果、ECサイトが新しいことを始めようと考えると、常に追加コストがかかるのが問題だった。
これに対して「COMPANY ECシリーズ」は、各社のニーズに応える豊富な標準機能をあらかじめ用意するとともに、新しい機能についても、すべてパッケージの無償バージョンアップで対応することを基本としている。これにより明確なランニングコストを把握した上で、EC事業を運営することができる。