東京商工リサーチ(TSR)が中小企業を対象に実施した「価格転嫁(価格協議)」の実態に関するアンケート調査によると、57.1%が「価格転嫁できた」と回答した一方、小売業は36.1%にとどまった。
調査は2026年1月30日~2月6日にインターネットで実施し、5152社の有効回答を集計・分析。「中小企業基本法」に基づく中小企業のみを対象とした。
価格転嫁「十分できた」は1割未満
2025年度に取引先との価格協議が実現し、一部または十分に転嫁できたか聞いたところ、「協議し、一部転嫁できた」が49.2%で最多。「協議し、十分に転嫁できた」は7.9%と1割未満にとどまった。価格転嫁ができた企業は合計57.1%。一方、「協議したが、全く転嫁できなかった」は4.6%、「協議を申し入れたが協議自体が実現しなかった」は2.3%だった。
産業別では「一部または十分に転嫁できた」が運輸業は77.5%、製造業は69.5%と高い。なお、小売業では「一部または十分に転嫁できた」は36.1%。一方で「協議したが転嫁できなかった」「協議自体が実現しなかった」の合計は3.3%だった。
転嫁が進んだ業種は製造・運輸
業種別で価格転嫁が進んだ企業の構成比が高かったのは、「輸送用機械器具製造業」(87.6%)や「道路貨物運送業」(85.8%)。円安を背景に自動車メーカーなどの業績が伸びたことや、燃料費高騰・人手不足といった構造的コスト増に対する是正指導の強化が後押しした可能性があるとしている。
一方、「協議したが全く転嫁できなかった」「協議自体が実現しなかった」の合計が高い業種には、「学校教育」(18.1%)、「保険業」(15.7%)などがあがった。公定価格や制度上の価格規制により、交渉余地が限られる構造が影響している可能性があるという。
取適法施行後も「交渉は例年通り」が最多
2026年1月には、従来の下請法を強化した「中小受託取引適正化法(取適法)」が施行された。これを受け、2026年度の価格協議方針を聞いたところ、「ここ数年と変わらない形で交渉」が42.4%で最多となった。
交渉に臨むと回答した企業は、「原価高騰分を交渉」が9.6%、「原価高騰分に加えて労務費も交渉」が17.0%で、合計26.6%。一方、「交渉する予定はない」は18.4%で、産業別では金融・保険業(31.5%)、不動産業(29.5%)でその割合が高かった。また、「取適法を把握していない」との回答も4.1%あった。「一般個人向け業態のため、回答できない」は8.2%だった。
小売業では、「ここ数年と変わらない形で交渉」が24.4%。価格交渉に臨むとの回答は17.1%、「交渉する予定はない」は14.9%だった。「取適法を把握していない」「一般個人向け業態のため、回答できない」との回答は合計43.4%に上った。
