通販新聞 2014/12/25 10:00

今年1年間に通販業界で起きた出来事を振り返る「読者が選ぶ2014年10大ニュース」。昨年の「消費増税の決定」に引き続き、今年も同じ話題である「消費税率8%に引き上げ」が大差をつけて1位となった。2位には企業の情報管理体制の在り方を改めて考えさせられる出来事となった「ベネッセの個人情報流出問題」がランクイン。そのほか、「スマホートフォン市場拡大」や「物流費の高騰」など通販業界にとって例年関心の高い項目が今年も上位に選ばれている。

通販新聞読者が選んだ「2014年の通販業界10大ニュース」
通販新聞読者が選んだ「2014年の通販業界10大ニュース」

「2014年の通販業界10大ニュース」は、今年の通販業界で起きた主な出来事やトレンドを本紙編集部が25項目に絞り込み読者アンケートを受けてランキング化したもの。アンケートは今後の市場動向にとって重要だと思う項目から順番に3項目まで受け付けて、あわせてその理由も聞いた。

増税が直撃した今年度の上半期

1位「消費税率8%に引き上げ」(69ポイント)

通販新聞読者が選んだ「2014年の通販業界10大ニュース」の1位は「消費税率8%に引き上げ」

昨年1位だった「消費増税決定」の47ポイントを大きく上回っており、実際の施行インパクトの大きさが伺える結果となった。施行直前の3月末にかけては多くの駆け込み需要が見込まれたことから、各社で関連セールやまとめ買いといった企画を実施。合わせてシステムや表示価格の変更作業にも追われるなどその対応に振り回された。

また、施行以降は駆け込み需要の反動による消費者の買い控えが起こり、春先の売り上げが大きく減少。日本通信販売(JADMA)が主要会員企業約145社に対して行っている月次の売上高調査によると、増税前の3月が前年同月比19.4%増と大きく伸長したのに対して、4月は同8.6%減と1割近く落ち込んだ。5月についても同3.7%減、6月は同5.2%減、7月は同4.1%減となるなど8月に同0.4%増となるまでマイナスが続いた。

読者からの主な回答としては「増税前のまとめ買いで購買サイクルが崩れてしまった。顧客の離脱を考えるとマイナスの側面が大きかった」「増税前の活況と増税後の冷え込みが極端。10%時は準備が必要」「増税前の2、3月は駆け込み需要もあり売り上げは大幅に伸びたが4月以降は反動がすごく、結果としては微増の売り上げで1年を終えることになりそう」「ECはとても影響を受けやすいと実感」「じわりと節約志向へ向かっている感じ」などの声が多数寄せられた。

中には「消費税率の引き上げは本来それに対する社会福祉の拡充が示され、消費者の生活不安が軽減されることで国内需要の拡大につながるはず。しかし実際には不安がなくならず消費が低調だった」「実質的に日常の中で感じる増税のメリットがないため、ただ単に負担増になった印象があるからだと思う」と、消費増税の制度設計そのものに不満を唱えた声もあった。また、4月以降に主要顧客である高齢者に対して自社で生活意識調査を行ったところもあり「多くの高齢者が影響を感じ意識して節約を始め、その結果日々の生活にかかる支出が減っていることが分かった」という回答もあった。

個人情報の大量流出問題で波紋

2位「ベネッセの個人情報流出問題」(44ポイント)

通販新聞読者が選んだ「2014年の通販業界10大ニュース」の2位は「ベネッセの個人情報流出問題」
通販新聞読者が選んだ2位は「ベネッセの個人情報流出問題」

通信教育事業を手がけるジャストシステムからのダイレクトメールがベネッセの顧客宛てにも届き始めたという問い合わせから明らかになったもの。その後の調査でベネッセの業務委託先の元社員が不正に持ち出した顧客情報を複数の名簿事業者に売却していることが明らかとなり、刑事事件にまで発展している。

同社によると売却された個人情報の件数は3504万件(9月10日時点)で、「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」、その他通販事業をはじめとする各種サービス利用者の名前、性別、生年月日、住所といった個人情報が流出したという。発覚以降、「個人情報漏えい事故調査委員会」を設置して外部の専門家とともに事故調査や再発防止策に取り組んでいるものの、その流出規模の大きさから関係業界に与えたインパクトは大きく、大量の個人情報を取り扱う通販企業にとっても消費者へのマイナスイメージが少なからず生じたと考えられる。

読者からも「経営者の問題意識のレベル感が浮き彫りになった」「あってはならない流出問題。顧客の不安は消えないし、そのニュース後に個人情報削除依頼が増加した」「個人情報保護について不信感を増幅させる原因となっている」「消費者の通販に対するイメージを悪化させる事件。業界全体に悪影響を及ぼすので各社全力で信用回復に努めてほしい」といった厳しい意見が多く寄せられた。

その一方で、「当社の場合会員ビジネスという観点から膨大な数の個人情報を扱うため他人事とは思えない」「個人情報への感度がさらに高まり対応を強化中。やらなくてはいけないが業績アップには中々つながらないのでどうクオリティを高めて円滑に進めていくかが課題」「顧客情報あっての通販ビジネスでは会社の信用の根幹にかかわる問題であると認識。改めて重要性を認識し、身を引き締めて各種対策を講じる」「大量の個人情報が瞬時に持ち出されてしまうのはビックデータ時代の利便性の裏にある恐ろしさと考える。セキュリティや個人情報管理、危機対応準備の必要性を強く感じた」などの声もあり、自社の管理体制を改めて見直す大きな契機になったことも伺えた。

スマホ経由での売り上げが拡大

3位「スマホ市場拡大」(31ポイント)

年々拡大し続けるネット販売市場の成長を支える大きな要因の一つとして注目された。今年に入り大手流通のイオンをはじめ、家電量販店や楽天グループなどが「格安スマホ」事業に参入。今後もスマホ利用者が大幅に拡大すると見られており、それに伴って消費者が日常で通販を利用する機会が増加していくことが考えられる。最近では購買と密接につながる機能を持ったスマホ向けアプリの開発も活況。通販サイトへの送客に向けた新たな施策を創出していく企画力も要求されるようになった。

読者からの主な意見では「スマホシェア拡大は業績への影響が非常に大きい」「市場が拡大することで、スマホ向けのページ制作が重要となる」「スマホの台頭によって、今や50%の国民がいつでもどこでもPCと同水準でネットにアクセスできる環境が構築されたのは大きな変化」「昨年度からは(購入比率で)スマホがPCを上回った」「今後、PC市場をスマホ市場が大きく上回ることが予想される。より充実したモバイルでのコンテンツ・サービス提供が必要となる」などがあった。

物流費高騰は「死活問題」、オムニチャネルにも高い関心

4位「物流費の高騰」

物流大手のヤマト運輸がサイズ別の適正運賃収受要請をしたことに伴い、改めてクローズアップされた宅配便の運賃問題。年末などの繁忙期に急増する荷物を遅滞なくさばくため、荷物サイズを的確に把握して必要な体制を整えることが不可欠と判断し、サイズ別適正運賃収受の要請を行ったもの。過去には通販関連の荷物獲得のため宅配便事業者の間で料金引き下げ競争の動きも見られたが、近年は運輸業界全体で労働力不足が深刻化するなど物流現場を取り巻く環境が変化している。

荷主である通販企業にとっては配送コストの増加という形で経費圧迫の一因ともなっている。読者からは「通販に欠かせない物流が高騰することは、業界にダメージを与える」「コスト構造の大幅な変化はサービスの見直し、生き残りをかけた死活問題に発展したが、いまだ世間の認識はないようだ」といった声が聞かれた。

5位「オムニチャネル戦略広がる」

実店舗やネットなど売り場の垣根を越えて、相互送客に向けた新たな販売戦略が各社で定着。主な意見では「各チャネルに渡り同じサービスレベルを求める顧客のライフスタイル変化に対応する必要がある」「業界全体の競争が激化している今日において単なる多角展開では競争に勝てない。シームレスに顧客にアプローチすることが重要」「今は表面上で声を出している企業が多い。組織が硬直している企業は対応できない」といったものがあった。

6位「健食新制度固まる」

政府の成長戦略の一環として健康食品を含む食品に「トクホ」「栄養機能食品」に続く新たな機能性表示制度を導入することが決定したもの。来春からスタートする予定。これまで機能の表示ができず、イメージ広告に頼らざるを得なかった業界にとっては市場活性化につながることが期待されている。読者からも「予防医学として役立ててもらえる制度が出来た」「今後の栄養補助食品事業にとって追い風となる」といったように歓迎の声が多かった。

7位「送料無料・当日配送進む」

今年は「DeNAショッピング」が食品や日用品について送料無料サービスを開始。当日配送についてもアマゾンジャパンが既存サービスの「当日お急ぎ便」を拡充してヤマト営業所での当日引き渡しを始めたほか、「ゾゾタウン」も首都圏の一都三県と大阪で即日配送を開始するなど通販各社の物流強化が進んでいる。「ネット販売の勝ち組・負け組を左右するポイント」「生鮮品などの通過型商品を扱う上でどこまで配送日数が短くなっていくのかとても興味深い」といった回答が寄せられた。

8位「消費税率10%延期へ」、「不正ログインなど通販サイトのセキュリティ問題」

当初は来年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げが、経済情勢の悪化などを理由に延期することを安倍首相が表明した。今後の行方が注目されているが、読者からは「システム面、実売上ともに影響大」「増減税は消費への影響が大きい」との声が上がっている。

同じくポイント数で並んだのが「不正ログインなど通販サイトのセキュリティ問題」。今年はリクルートライフスタイルの「ポンパレモール」をはじめ、良品計画やスタイライフの通販サイトなどで不正ログインが発覚。会員の個人情報が不正に閲覧される被害などが報告されている。各社ともその後はパスワードの変更通知やログイン方法の変更、監視体制の強化を実施。大手企業のサイトで被害があったことから、まだ被害を受けていない企業も含めてセキュリティに対する関心が高まっている。主な回答では「通販市場拡大のために安全なネット環境を構築することが必須」との声があった。

10位「通販市場規模5.6兆円突破(本紙調査)」

今年7月に実施した「通販・通教売上高ランキング」の上位300社の売上高を合計したもので、前年同期と比べて9%増加した。読者からは「欧米と比べて通販・EC率がまだそこまで高まっていない中、今後は欧米水準まで引き上がっていくと思われる」という回答が寄せられた。

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