インターネット広告費は9.6%増の3.6兆円、総広告費は4.9%増の7.6兆円【2024年の国内広告費】
電通が発表した「2024年 日本の広告費」によると、日本の総広告費は7兆6730億円(前年比4.9%増)で、総広告費は2021年から4年連続で成長し、3年連続で過去最高を更新した。
そのうちインターネット広告費は総広告費の約半数に迫る3兆6517億円(同9.6%増)。新聞、雑誌、ラジオ、テレビメディアの合算となるマスコミ4媒体の広告費は2兆3363億円(同0.9%増)だった。
日本の広告市場は、好調な企業収益や消費意欲の活発化、世界的なイベント、インバウンド需要の高まりなどに支えられ、「インターネット広告費」「マスコミ四媒体広告費」「プロモーションメディア広告費」の3つすべてのカテゴリーが成長した。

3兆6517億円となったインターネット広告費は前年比で3187億円増えた。SNS上の縦型動画広告をはじめ、コネクテッドTV(インターネットに接続されたテレビ受像機)などの動画広告需要が高まり、市場全体の拡大に寄与。総広告費に占める構成比は47.6%となった。「インターネット広告媒体費」は前年比10.2%増の2兆9611億円となり、2ケタ成長だった。
マスコミ四媒体広告費には、制作費も含まれている。インターネット広告費は、インターネット広告媒体費、物販系ECプラットフォーム広告費、インターネット広告制作費の合算。プロモーションメディア広告費は、屋外、交通、折込、DM(ダイレクトメール)、フリーペーパー、POP、イベント・展示・映像ほかの合算となる。
媒体別の広告費の詳細3>インターネット広告費
マスコミ四媒体由来のデジタル広告費における「テレビメディア関連動画広告費」は653億円(同47.4%増)。「物販系ECプラットフォーム広告費」は、オンライン通販の拡大もあり2172億円(同3.4%増)となった。「インターネット広告制作費」は、動画広告市場の拡大などで4734億円(同8.6%増)へと増加した。インターネット広告費の内訳などは次の通り。
- インターネット広告媒体費:2兆9611億円(前年比10.2%増)
- マスコミ四媒体由来のデジタル広告費:1520億円(同17.5%増)
- 引き続き好調を維持し、2ケタ成長となった
- 新聞デジタル:195億円(同6.2%減)
- 新聞デジタル以外の動画広告への予算シフトや、広告単価の低下による影響が大きく、前年を下回った。
- 予約型広告は、前年に減少傾向であったタイアップ広告で回復が見られ、オンラインセミナーなど企画型の広告出稿やターゲット施策が増加した。
- 運用型広告は、パリ2024オリンピック・パラリンピックなどの大型スポーツ大会や各種イベントの開催でPV数は増加したものの、単価の低下による影響が大きかった。一方で、官公庁や金融業種は増加傾向にあり、コロナ禍からの回復により、リアルイベントやセミナーへの需要が高まった。
- 雑誌デジタル:637億円(同4.3%増)
- 雑誌メディアの休刊や刊行形態の変更に伴い、WebメディアのリニューアルやSNSアカウントへのリソース強化が進んだ。SNS上のコンテンツ拡充によってフォロワー数などが引き続き堅調に推移し、紙媒体やウェブメディアに起因しないSNS内で完結できるタイアップ広告が成長した。
- 広告主のオウンドコンテンツの制作や動画の制作・配信など、出版社の強みであるデータ・コンテンツ制作力やコミュニティ力を生かした企画が堅調に推移し、引き続き出版社の広告収益を支えた。
- ラジオデジタル:34億円(同21.4%増)
- 音声メディアでのデジタル展開が注目され、ラジオデジタル広告への新規出稿数が増加した。
- テレビメディアデジタル:654億円(同46.3%増)
- テレビメディアデジタルのうち、「テレビメディア関連動画広告」は653億円(同47.4%増)と大きく増加した。
- 見逃し無料配信動画サービスは、パリ2024オリンピック・パラリンピックなどの開催によりスポーツのライブ視聴も増加。再生数・ユーザー数ともに順調に増加した。
- インターネットテレビサービスは、従来のリアリティーショーやドラマ、バラエティー、スポーツに加え、アニメによるユーザー数の増加が顕著だった。
- マスコミ四媒体由来のデジタル広告費:1520億円(同17.5%増)
- 「日本の広告費」における「物販系ECプラットフォーム広告費」:2172億円(前年比3.4%増)
- 前年までと比べると緩やかな成長に。原材料費や物流コストの高騰などを背景にした物価上昇により生活者の節約志向が強まったことや、リアル店舗への顧客回帰によるチャネルの多様化により商品の購入場所が分散したことなどが影響した。
- インターネット広告制作費:4734億円(前年比8.6%増)
- Web動画広告は前年までと比べると緩やかになりつつも成長した。なかでも、動画サイトやアプリなどのコンテンツ内に表示される動画広告の制作数は前年に続き増加した。
マスコミ四媒体の広告費
「新聞広告費」は減少したものの、「雑誌広告費」「ラジオ広告費」「テレビメディア広告費」が増加し、3年ぶりに前年を上回った。
- 新聞広告費:3417億円(前年比2.7%減)
- 不透明な世界情勢や、物価・人件費高騰などの影響も受け、新聞広告出稿は伸び悩んだ。
- 雑誌広告費:1179億円(前年比1.4%増)
- 出版社・雑誌編集部などによるタイアップコンテンツのSNS上での二次展開や、広告主へのオリジナル企画コンテンツ提供などが増加したことにより、通年でプラス成長となった。
- ラジオ広告費:1162億円(前年比2.0%増)
- さまざまな音声コンテンツを届ける音声メディアへの関心が高まり、デジタルオーディオ広告の増加とともに、地上波ラジオ放送における広告市場も、通年で前年を上回った。
- テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連):1兆7605億円(前年比1.5%増)
- BSやCSにおける通信販売市場は堅調に推移した。
- 地上波テレビの番組広告費は、2024年1月に発生した能登半島地震による被災や、不透明な世界情勢や、物価・人件費高騰などの影響を受け、前年を下回った。スポット広告費は、インバウンド需要やコロナ禍からの快復による外出・行楽需要が高まったことを受け、前年を上回った。
プロモーションメディア広告費
- 屋外広告:2889億円(前年比0.8%増)。インバウンド需要の高まりに伴い、関連業種での広告出稿が目立った。
- 交通広告:1598億円(前年比8.5%増)。鉄道、駅媒体、空港は、インバウンド需要の高まりなどにより前年を上回った。
- 折込:2442億円(前年比5.2%減)。新聞購読率の低下や経費高騰に伴う販促費の抑制により出稿量が減少し、前年を下回った。
- DM(ダイレクトメール):2863億円(前年比7.7%減)。印刷資材などの制作費高騰による広告主のマーケティング予算の見直しや、2024年10月の郵便料金改定などの影響もあり、前年を下回った。
- フリーペーパー:1306億円(前年比3.5%減)。グルメ・飲食、求人情報、住宅・不動産、ショッピングなどの業種が回復したものの、依然として物流費や原材料などの高騰が影響し、発行部数や発行頻度、広告主数などが縮小した。
- POP:1483億円(前年比1.5%増)。コロナ過以降の人流回復に伴うリアル店舗でのコミュニケーション・ニーズは前年に続き高まった。また、デジタル施策との融合が進み、体験型売り場やポップアップストアの需要が高まった。
- イベント・展示・映像ほか:4269億円(前年比11.0%増)。メーカーの販促イベントや周年イベントなどは活発化した。展示領域では、テーマパークへの大型投資が続き、専門店市場の海外アパレルブランド、ホテル、企業PR施設、自動車関連店舗の新装・改装需要やインバウンドなどの拡大が追い風となり、需要が回復した。
「日本の広告費」市場には含まれないその他の広告関連市場
- 商業印刷市場:1兆7600億円(前年比1.7%減)
- コロナ禍からの反動増の落ち着きや、郵便料金改定や配送コストの上昇などが影響した。
- ポスティング市場:1481億円(前年比0.6%増)
- 大都市圏を中心に、新聞折込の代替として官公庁・自治体関連の全戸配布などの需要は前年に続き堅調。
- DM制作関連市場:1119億円(前年比0.4%増)
- DMの発送数は減少しているが、印刷資材などの高騰によるコストの増加に加え、より効率的なDM活用のためのデータマーケティングやレスポンス測定のためのツールの導入といった制作関連費の増加により、前年を上回った。
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