組織・業務、人材、情報セキュリティー。オム二チャネル時代の日本企業の課題とは?
日本企業の課題
消費財メーカーや小売企業は、消費市場が迎えつつある転換点にどのように対応していけばよいのでしょうか。私たちは、以上で見てきたような消費市場の変化に鑑みて、これからの競争優位の源泉として、
- 安心・安全な製品・サービス
- 消費者への経験価値の提供
- ITとマーケティング
の融合の三つが重要な成功要因となると考えています。
安心・安全な製品・サービスの提供にあたっては、製品レビュー・評価の充実や、企業や製品のブランド力の強化、大手チェーンやECを活用することによる企業や製品に対する信頼性の確保などが考えらえます。また、消費者がECを安心して利用できる仕組みとして、個人間取引でのエスクローサービスや電子決済の個人認証(生体認証、指紋認証など)の強化も必要となります。
消費者への経験価値の提供としては、いかに消費者の「経験価値」「帰属意識」「参画意識」に訴求したブランディングやマーケティング、製品開発活動ができるかが鍵となります。実店舗やソーシャル・ネットワーキング・サービスなどを通じて「人の触れ合い」という価値を提供することも重要なテーマです。
ITとマーケティングの融合に関しては、顧客関係の再構築(消費者行動観察によるカスタマーエンゲージメントの強化)のために、データ予測・分析力を社内に蓄積する必要があります。また、CIOとCMOが連携することで、最適なIT投資配分(従来型とECチャネル間の投資配分など)を実現することが重要な経営課題です。
さらに、サプライチェーンマネジメントの面から、メーカー倉庫・物流拠点・店舗・顧客を結ぶネットワーク構築や、異業態間での在庫情報の共有、ラストワンマイルの構築などにより、チャネル横断的な低コスト・最短のサプライチェーンを構築することが必要です。
こうした中、特に日本企業が取り組むべき課題として、私たちは以下の6つが重要と考えています。まず、組織・業務の観点から、新時代への対応として重要なのは、
①デジタル・モバイルに明るいCMOの設置
②従来型チャネルとECチャネルを超えた、組織設計やサプライチェーン最適化、業績評価制度構築
の2点です。また、人材の育成・確保も重要で、
③接客対応向上のための従業員教育
④データアナリストの育成・獲得
の2点が今後の差別化にとっては重要となります。そしてこれらを支える基盤として、
⑤個人情報保護の業界標準の確立
⑥サイバーセキュリティリスクへの対応
といった情報セキュリティの確保も優先課題です。
なお、これらの多くは、テクノロジーを軸にしていることが注目されます。モバイルテクノロジーの進化に素早く反応し、急速に変化している消費者の心を捉えるためには、メーカーや小売企業も、進化したテクノロジーを取り込み、新たな価値を提供することが不可欠となっているのです。
オム二チャネル時代の日本企業の主な課題
組織・業務
1. デジタルモバイルに明るいCMOの設置
2. 従来型/ECチャネル横断的な組織、サプライチェーン最適化と業績評価制度人材
3. 接客対応向上のための従業員教育
4. データアナリストの育成・獲得情報セキュリティ
5. 個人情報保護の業界標準の確立
6. サイバーセキュリティリスクへの対応
▶この記事は、新日本有限責任監査法人の記事を転載しているものです。
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