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経営者のためのチェックポイント

  • 自社のビジネスモデルや業務モデルが、目的に沿ったものかを判断するための適切なプロセスを有していますか?
  • 必要性に応じてビジネスモデルや業務モデルを変更できるような柔軟性を有していますか?
  • 変化に対応する際の最大の障害となるものは何ですか?それは克服できますか?

アジアのような変化の激しい市場では、企業は、現地の市場の進化に合わせて柔軟に対処できる能力を備えなくてはなりません。異なるビジネスモデルや業務モデルで構成されるポートフォリオを持ち、様々な市場に対しどの時点においても適合できるようにし、変化に取り残されないようにしなければなりません。

Procter & GambleのTapan Buch氏(CFO India)は、柔軟なアプローチとは、消費者や顧客のトレンドを深く理解することから始まる、と述べています。「現場の情報をしっかりと把握する必要があります。消費者や顧客を理解する、という仕事は外注化できません。ですから、スタッフを全国各地に送り込み、双方向の意思疎通を確保しようとしています。そして定期的に異なる拠点からの情報を集め、消費者の進化や顧客の中で起きたトレンドを真っ先につかめるようにしています」新興国市場では中間層が台頭するにつれて、企業は消費者の行動様式の変化に慣れることが重要となります。

EYのXiaoping Zhang(Advisory,Strategy and Operations Practice Leader, Greater China)は、以下のように解説しています。「モダン・トレードが定着し、消費者の可処分所得が伸びるにつれ、アジアの消費者はトラディショナル・トレードから急速に離れていきます。さらにはモダン・トレードを一気に飛び越え、e-コマースに引き寄せられています。したがって、極めて多様なチャネルを管理する能力が重要となっています

花王はアジアで40年を超える歴史を有しています。同社取締役会会長の尾﨑元規氏は、アジアを単一の均質な市場として考えるべきではないと、次のように述べています。「“アジア市場”と一口に言いますが、“アジア”において、どこでも同じようなアプローチをとれるわけではありません。文化的な多様性や経済発展段階の相違に応じて戦略を工夫する必要がありますし、市場の急速な変化にも適応しなければなりません。したがって、現地化に注力するとともに、アジアの市場をタイプ別に分類し、それぞれに適した製品を開発する能力を持つことが必要です

また、市場が変化するため、柔軟なサプライチェーンの構築も重要です。新規参入やエリア拡大に際しては、現地について豊富な知識とネットワークを持つ外部の販売会社に頼って棚を確保するという手法には一理あります。Swee Leng Ng氏(Group CFO GroupM China andformer CFO of Kraft Foods, China)は、次のように述べています。

私たちは深い知識を有する販売会社と契約し、その後、その会社とのパートナーシップを締結して、事業と製品を理解してもらうための教育を行います。営業チームは販売会社が雇い、さらに私たちは、販売会社に損益の一部を共にすることを要求しています。これは、リスクを軽減すると同時に、事業を伸ばせるようにその会社を支援することを意味しています。これはまさに“Win-Winの関係”となったパートナーシップで、しかも私たちは運転資本も削減することができました

しかし、大抵の場合、時間の経過とともに、企業は自社の直接販売網に移行するほうが競争力を発揮し易いと考えるようになります。EYのXiaoping Zhangは次のように述べています。「第三者との販売提携は、機動性を重視する短期的見地からは意義があります。しかし、企業が第三者に依存しながら、長期にわたって健全な成長ができるとは考えられません

また、過去に行った投資から時間が経過するにつれ、企業は柔軟なアプローチを探るべきです。必要ならば合弁や他社との協業も選択肢となり得ます。たとえば、Tescoは2013年10月、国営企業のChinaResources Enterpriseとの間で合弁企業を設立することに合意しました。両社の中国国内の店舗を統合することにより、複数の業態で3,000の小売店を有するリーディングカンパニーの設立を狙ったものです。これによりTescoは、中国市場におけるプレゼンスを保持しながら資本効率を高めることができるとみられます。

急展開を見せる中国の小売業界

中国における小売業界の動向は、市場の発展により企業がビジネスの手法を変えていく必要があることを示す好例となっています。現在、ショッピングモール開発に関して、中国は他国を大きく引き離して世界最大の市場となっています。CBREのレポートによれば、世界中で開発中の大型商業施設の50%超を中国が占めています。

このような過熱した建設ブームは、巨大な影響をもたらし、中国の主要都市に「幽霊モール」がいくつも生まれるという懸念を引き起こしています。Robinsons GroupのJim McCallum氏(CEO)は、「過剰開発に陥る危険が現実味を帯びています。中国のすべての開発業者・地方政府が巨大ショッピングモールを造りたがっていますが、そこに出店するブランドはないというケースがよく見られます」と指摘しています。

しかし中国では、店舗小売の急拡大だけでなく、e-コマースも劇的な展開を見せており、2012年時点で、オンラインでの購買人口は2.47億人、小売売上高全体の6.3%を占めるに至っています。このことから、中国の消費者は、実店舗に通い詰めるもより先に、e-コマースに向かい、現在建設中のショッピングモールの多くはもぬけの殻となる可能性が高まっています。

Wamartは、急拡大するオンライン・ショッピングに対応するため、Yihaodianの51%の株式を取得しました。2008年に開業したYihaodianは2,400万人の登録ユーザーを有し、食料品のオンライン販売で確かな地歩を築いています。

急速な成長によって2012年の売上高が11億ドルに達した同社は、生鮮食品を含む75,000品目を取扱い、北京、広州、上海では即日配達、100を超える都市で翌日配達を行っています。

変化を先読みする

Richard Essigs Principal, Retail and Consumer Products, US, EY

意思決定を行うスピードは新興国市場において勝敗を決する鍵となっています。意思決定を先読みすることは、市場の変化への備えとして有効な手段となります。アジア新興国は、それぞれ異なる発展段階にあり、その速度にもばらつきが多く、それぞれの市場には特徴があります。

しかし、そうした違いにもかかわらず、新興国市場は概ね同じような成長曲線をたどる傾向があります。とくに、ある段階から次の段階に進むところには同じような引き金となるポイントあります。新興国市場の経営陣は、インドであれ、インドネシアであれ、ブラジルであれ、概ね同じように市場の進化がもたらす試練や課題に直面します。

一言でいえば、市場が成熟に向かう過程では20~30ぐらいの重要な戦略シナリオが考えられます。成功するためには、企業はこれらのシナリオを詳細に検討する必要があります。そして、実際に問題が顕在化する前に対応策を準備しておくことが重要です。個々の市場において、答えはそれぞれ異なりますが、新興国市場の経営陣が検討すべき問題は概ね共通しています。

ある問いに直面した場合、同じような問いかけは既に世界の他の地域で出ていた可能性が高いと言えます。具体例として、トラディショナル・トレードからモダン・トレードへの移行があげられます。市場が成熟へと向かうにつれ、トラディショナル・トレードはモダン・トレードに取って代わられます。この変化は、小売市場における製品構成や、価格帯、販売ルート、販売条件の透明性に大きく影響するため、企業はそれらに対応しなければなりません。

これらの変化は、いつどういう順序で起きるか予想できませんが、必ず起きるものです。したがって、トラディショナル・トレードからモダン・トレードへの移行期に伴う特定のシナリオについて予め考えておき、他の市場がどういう課題に直面したかを理解することによって、現地経営陣は、強固なガバナンスの枠組みを得ることができ、迅速でより良い意思決定をできるようになります。

▶この記事は、新日本有限責任監査法人の記事を転載しているものです。
オリジナルの記事(PDF)はこちらから閲覧できます

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