経営者のためのチェックポイント

  • 長期的に有望であったり、すぐに採算をとることが可能であるといった、複数の製品を含むポートフォリオを持っていますか?
  • 販売網のカバレッジの広さ、深さ、質が適切かどうかついて、どのように意思決定を行っていますか?
  • 流通チャネル全体を通して、効果的かつ主体的に取引条件を管理していますか?

多くの企業は依然として、常時、すべての顧客に対し、すべての製品・サービスを最高品位で提供しようという考え方にとらわれています。しかし、想定以上に競争が激しく消費者が多様化している新興国市場においては、従来のように規模を追求するアプローチはますます難しくなっています。

現実には四六時中、すべての人にすべてを提供することによって競争上の優位を維持することはできません。最終的には、より重点的配分を行った競合相手に対して、競争力を失うことになります。企業は何を行い、何を行わないのか、どのような顧客と付き合い、どのような顧客とは付き合わないのかという焦点を明確化し、その上で対象となる顧客にサービスすることを目的としてモデルを最適化する必要があります」とEYのAndrew Cosgroveは述べています。

例えばインドでは、個々のすべてのカテゴリーと価格帯にわたって成長の機会があります。「すでに飽和状態に達したと言い切れるようなカテゴリーは一つもありません。そのため、体系的なカテゴリー投資計画を立てる必要があり、これによって消費者と株主が『勝つ権利(Right To Win)』を有する最良のカテゴリーを優先させます。ここではバランスをとる必要があります。すべてを行うことは不可能ですから」とProcter & GambleのTapan Buch氏(CFO India)は述べています。

企業は、いくつもの市場にまたがるプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント手法を採用し、特定のセグメントに働きかけることによって規模を創り出すアプローチに切り替えていく必要があります。同時に、集中して市場の機会を注意深く探り続ける必要があります。Judge Business SchoolのRadjou氏は次のように指摘しています。「規模の経済に執着する代わりに、企業は範囲の経済について柔軟な思考を持つ必要があります。言い換えれば、極めて多様化した市場ニーズに応えるために、今あるものをどの程度活用できるのかということが問題になります

明確なフォーカスは不可欠ですが、企業は単なるニッチプレイヤー、限定された製品を提供するスペシャリストに陥らないようにしなくてはなりません。Molson Coors Cobra IndiaのRahul Goyal氏(CFO)は次のように述べています。「当社では、市場全体、すべてのカテゴリー、すべてのセグメントを追い求めることなく、意図的に狭いアプローチを採用してきました。しかし同時に、これらの国々では重要なことですが、マスマーケットで活動する必要があります。超プレミアム層、あるいはプレミアム層だけに焦点を当てた戦略を採用しても長期的な収益性を期待することはできません

ハイ・パフォーマーはこのことを認識しています。彼らは、業績の振るわない企業に比べてより多くのカテゴリーに参入している傾向があるものの、参入の決定に際しては、どこで勝負に出るのかについてはっきりとした選択を行い、明確なターゲットを設定しています(図9参照)。

そして必要であれば、これらの企業は現地ブランドを作るという選択を行うこともあります。たとえばHersheyは最近、中国で「Lancaster」というキャンディーのブランドを売り出しましたが、これは同社の120年の歴史で初めて、米国外での新しいブランドです。中国の巨大な製菓市場に乗り込むことで、売上規模の拡大とプラットフォームの構築を実現し、同社のチョコレート事業の成長が可能であると考えたためです。またハイ・パフォーマーは市場の中で優先順位の高い地域に集中するだけではなく、全国展開を行う傾向があります。

貴社が現在、展開する現地市場において、主要な戦略となっているものは次のうちのどれですか?
図9 質問と回答: 貴社が現在、展開する現地市場において、主要な戦略となっているものは次のうちのどれですか?(図は同意したと回答した企業の割合、%)

消費財メーカーは一つの市場の中であっても、異なる発展段階にあるトラディショナル・トレード、モダン・トレードやe-コマースという多様なチャネルにおける極めて複雑な消費者の特徴をうまく掴む必要があります。

さらに、この特徴そのものが変化しており、企業はその市場の発展に伴って、その立ち位置を変えていく能力を持たなくてはなりません。全体的に、ハイ・パフォーマーはそれ以外の企業よりも複数チャネルにまたがって幅広く活動しており、一つのチャネルから別のチャネルへと焦点を移すことにより売上拡大を図ることができるという柔軟性を実現しています。

タイやインドネシアのような国、またインドですらモダン・トレードが成長しており、今や取引の約10%を占めています。トラディショナル・トレードとモダン・トレードの取引条件の違いを理解し、管理する能力が不可欠です。それぞれの市場のチャネルごとに、特質を理解し、投資を集中させるための厳格なアプローチを採用する必要があります」とEYのRichardTaylor(Consumer Products Advisory)は述べています。

例えばL’Oréalでは、異なる消費者セグメントごとに異なる販売戦略を採る「ブランドのピラミッド」と呼ばれるアプローチを採用しています。中国では、ハイエンドの百貨店や高級ブティックの中にある専門のカウンターを通して、Lancôme、Helena RubinsteinとBiothermといった高級ブランドを販売しています。中級のグローバルブランドである、KerastaseやL’Oréal Professionalは薬局やヘアサロンといった特別な流通チャネルで販売しています。そして、L’Oréal Paris、MaybellineやGarnierといったマス・マーケット、大衆ブランドはモダン・トレードのスーパーマーケットで販売しています。

またインドでは新興中流層の消費者を獲得するため、同社はL’Oréal Parisのブランドで「サシェット(小分け包装)戦略」と称する手法を用いています。これは消費者が手頃な価格で商品を手にすることを可能にし、その後、彼らを固定客として取り込むことを狙うものです。

担当している市場において、どの販売チャネルを利用していますか?
図10 質問と回答: 担当している市場において、どの販売チャネルを利用していますか?(図は多く利用していると回答した企業の割合、%)

インドの極めて複雑な税制・小売システムとつきあっていくために

Ashish Nanda Consumer Products Advisory ̶ PerformanceImprovement, EY

インドの小売業界は、極度に細分化されているため、自社販売かパートナー経由かを問わず、市場へ強力な販売ルートを確保する必要があります。ひとたび市場への商品供給の基本となるルートを築くことができれば、僅かな限界費用で売上高を伸ばすことができるため、ポートフォリオ・アプローチは極めて有効です。このほか、パートナーにとっては貴社が重要であればあるほど、より多くの経営資源をつぎ込む意欲が高まるため、そのパートナーへの貴社への依存度も高まります。

少品種しか持たない消費財メーカーでは、販売パートナーによる自社製品の取り扱いがうまく機能するよう、そのパートナーを支援すべきケースが多く見られます。このような企業では、販売会社との提携を行う場合、往々にして、競合しない他の商品も並行的に扱っているパートナーと組まざるを得ないケースがあります。しかし、これは理想からはほど遠い状況です。

なぜなら、その販売企業が他社よりも貴社の製品にどれくらい注力してくれるかについて、貴社の管理が十分に及ばないからです。したがって、パートナーの選択のほか、効果的な営業と教育の強化が決定的に重要です。

インドでは州をまたいで商取引が行われる場合、現状では税負担が増すため、どのような経路で市場に商品を供給すべきかという点もきわめて複雑です。大抵の国では、流通倉庫と現地の市場ニーズとの間で適切なバランスをとることによってサプライチェーンを最適化します。しかし、インドでは、間接税負担の最適化という要請から、数多くの流通倉庫を構え、同一州内の販売先に出荷することによって、トータルコストの削減を図る必要があります。

もしインドがより一本化された間接税制度に移行するならば、企業は流通ネットワークを構築し直す必要に迫られるでしょう。とはいえ、現在のところ企業は、流通ルートが税務的な観点から最適化されているか、確かめなければなりません。

▶この記事は、新日本有限責任監査法人の記事を転載しているものです。
オリジナルの記事(PDF)はこちらから閲覧できます

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