瀧川 正実 2015/4/17 11:00

大規模ECサイト向けのECパッケージシステム「COMPANY EC」などを提供するワークスアプリケーションズ。年間数百人のEC経営者・担当者と意見を交わすというSales&Marketing Div. EC Dept.の河野貴裕氏に2015年のEC市場を占ってもらった。

オムニチャネルの台頭で自社ECサイトに力を入れる企業が増える1年

――2015年のEC市場は前年(2014年)と比べてどのような環境になると考えていますか?

オムニチャネル化

オムニチャネル化が加速するでしょう。「オムニチャネル」という言葉が今後も使用され続けるかはわかりませんが、消費者の「より便利に買い物をしたい」「より良いサービスを受けたい」という欲求は変わりません。

ECとスマホが登場した時点で、この流れは必然だったと言っていいでしょうね。

オムニチャネル化が加速する理由

ワークスアプリケーションの河野 貴裕氏
Sales&Marketing Div. EC Dept.
河野貴裕氏

なぜ今年がその加速時期になるだろうと予測するかというと、日本の小売業のEC化率がようやく十分な水準に到達したと考えるからです。

アメリカでは2010年にEC化率が4.4%を超えましたが、そのタイミングからオムニチャネル化が一気に加速しました

リーマン・ショック前後で市場全体が不安定な時期でもありましたが、2010年以降はその前年まで鈍化していたEC市場の成長率も一気に回復しています。

日本の場合は生鮮を中心とした食品小売のEC化率は1%前後と、とても低い。ですから、オムニチャネル化が本格化する業界全体のEC化率はアメリカ(4.4%)よりも若干低いのではないかと予想されます。

2013年のEC化率がだいたい3.7%、2014年の結果はまだ出ていませんが、おそらく4%を超えてくるはずです

そうすると2014年がオムニチャネル元年、2015年はオムニチャネルが本格化する年、という予想が立ちますよね。

「マーケットイン」という言葉が世の中に登場して久しいですが、「もっと便利に欲しいものを手に入れたい」「もっと手厚いサービスを受けたい」「支払い場所や受取場所を自由にしたい」「商品をすぐに見つけたい」といった欲求は消費者感情として昔から当たり前にあったものだと思います。

そうした欲求に対し、社会インフラや消費者のECに対する受入れが整ってくる目安がEC化率5%前後、ということなのだと思います。

――今後、成長を持続していくためにはどんなことが必要だと考えますか?

1つめは「なぜそのECサイトを利用するのか?」という質問に対して明確な答えを持つこと。2つめは、「Agility」(機敏さ)だと考えています。

なぜそのECサイトを利用するのか?

新しいお話でも何でもないのですが、明確な回答を持っているEC担当者は意外な程少ないと思います。

「安いから」も立派な理由の1つです。ただ、価格勝負の主戦場である大型モールEC内での戦いは、そろそろ限界になりつつあります。

仕事柄、私は年間に数百人のEC通販事業者の担当者、あるいは経営層の方とお話していますが、本当の意味で価格勝負を続けたいと考えている方はあまりいません。

そこに、渡りに船で、オムニチャネル化の波がドッと押し寄せてきます。

「安さ」ではなく、リアル店舗、コールセンター、チラシ、コミュニティサイトなどの各チャネルを総合的に活用した「サービス」や「戦略」で戦う土壌がやっと整ってきたと言えます。

そうした背景から、今後はモールではなく、自社ECサイトに力を入れていくのが懸命だと考えている方が圧倒的に増えている印象です(もちろん、大型モールECが大切なチャネルの1つであることは疑いようがないと思います)。

オムニチャネルを意識するか否かは別にしても、自社ECサイトにおいて「なぜそのECサイトを利用するのか?」を、いかに体言していくかは1つの鍵になってくるでしょうね。

Agility

これも新しいお話ではありませんが難しい問題です。つまり戦略に対するシステムの俊敏性です。

システム屋の観点から言うと、「システムが戦略の足かせになる」という状態は絶対にあってはならない

ブラックボックス化してしまって新サービスが提供できないとか、複数のシステム間の連携が不十分で行いたい施策が打てない、課題は見えているのにシステムの仕様で解決できない、などです。

2014年がそうだったように、2015年も前年の戦略がそのまますべて通用するとは限らないでしょう。

グローバル戦略に大きく舵を切る企業もたくさんいらっしゃると思います。

そうした時に、変わり続ける戦略に即して俊敏に対応し続けられるインフラを持っているかどうかは、企業の成長にとりとても大きな問題になるはずです。

――2015年、貴社ではどのようなことに取り組みますか?

製品強化

オムニチャネル化とグローバル化に関する製品強化です。当社はメーカーですので、やはり「製品の良さ」にはプライドを持っています。

ECパッケージシステムである「COMPANY EC」を開発、販売、サポートしています。

市場競争性は「ノーカスタマイズ」という独自コンセプトにあります。これはユーザー企業から頂く機能要望を、すべてパッケージのデフォルト機能として吸収し続ける、というものです。

標準機能の充実で言えば、間違いなくすでに日本一でしょう。

これは感覚値ですが、日本国内におけるEC・通販の機能要望については、大手企業の場合であっても、8~9割以上はデフォルト機能のみで実現可能なところまで製品強化が進んでいます。

今後も市場ニーズに合わせた製品強化を積極的に進めていきます。

オムニチャネル化

今後、日本の通販・EC事業者にとってオムニチャネル化は大きなテーマになるでしょう。そのための機能についても当然吸収し、製品強化に努めます(もちろん、すでにかなりの部分をデフォルト機能として実装しています)。

オムニチャネルというと、一昔前まではスマホアプリを作ることなど、どちらかと言うと“キラキラっ”とした提案が目立っていました。

当社が得意としているの、はそれよりももっと硬派な、情報統合や業務最適など、オムニチャネルのためのインフラを構築する提案です。

しっかりとしたシステムインフラがあれば、その後の事業戦略の変更にも俊敏な対応が可能になります。

各方面の会社の役員、EC担当者、店舗担当者とディスカッションしながら、地に足の着いたオムニチャネル化モデルを構築しています。

2014年から多くの提案依頼も頂戴していますが、2015年はこの流れはさらに加速するでしょう。

グローバル化

オムニチャネル化と並んで、グローバル進出を考えている企業は多いです。グローバル化をスムーズに実現するための製品強化も積極的に進めまていす。

たとえば、日本には現在存在しないようなローカルサービスの機能吸収や、物流、決済などの現地インフラとの連携です。

数年前からニューヨーク、上海、シンガポールに事業所を順次開業し、採用、開発、マーケティング含めて戦略的に展開し、すでにかなりのノウハウを蓄積しています。

昨年は「おもてなし」という言葉が流行りましたが、日本の接客レベルは、やはりグローバルで見ても最高水準です。そんな日本の消費者の要望に応えてきた日本のEC通販は、世界でも必ず戦えます

商習慣は違えど、「より便利に買い物をしたい」「より良いサービスを受けたい」という消費者の欲求は変わらないですから。

ワークスアプリケーションズにとって、2015年はさらなる飛躍の年になるでしょうね。

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