中川 昌俊 2015/5/8 9:00

楽天は2014年、順調に流通額を伸ばすと同時に、二重価格対策など安心・安全の取り組みも強化してきた。スマホ対策にも力を入れ、スマホ経由の比率を大きく高めた1年でもあった。2015年は2014年の取り組みを継承しながら、さらに発展させていくという。2015年に計画している具体的な取り組みを河野奈保執行役員兼楽天市場事業編成部部長に聞いた。

検索結果の順位を変更、ユーザー評価の高い店舗を上位に

――楽天市場における2014年の取り組みとして力を入れてきたことは何ですか。

2014年1月に「楽天市場品質向上委員会」を設置し、お客さまが安心・安全に、そして楽しくお買い物ができるように各種ルールを策定しました。そのために、システムを整備するなど、安心・安全のための取り組みに力を入れてきた1年だったといえます。

当初は、正直、この取り組みによって売り上げが下がってしまうのではないかと、店舗さんから懸念の声がありました。継続的に行うことで、楽天市場における不適切な二重価格表記がなくなり、お客さまにはさらに安心してお買い物をお楽しみいただける場作りが徹底されています。また、偽サイト問題についても、対策やお客さまへの啓発を徹底し、深刻な問題に発展することが回避できたのではないかと考えています。実際、当初は懸念を持たれていた店舗さんからも、2014年後半くらいからは楽天市場の安心・安全の取り組みについて評価していただける声が増えてきています。

――どのような取り組みを行ってきたのですか。

二重価格表記に関するガイドラインを定め、楽天市場における不適切な二重価格表示の防止につなげています。出店審査も厳正にしたため、新規不承認率は10%程度となり、プレミアムな店舗さんが集まる場をめざしています。偽ブランド物の販売についても対策を強化しています。商品の真贋を調査するパートナーブランドは、2014年の11月には150ブランドでしたが、2015年4月時点で1000ブランドに増えています。健全化に向けた動きを強化しているということがブランド側にも伝わり、ブランド側も協力してくれるようになったのだと思います。

――今後もこうした安心・安全の取り組みを進めていくのでしょうか。

もちろん、お客さまが安心・安全にお買い物ができる環境作りはさらに強化していかなければならないと思っています。ただ、2014年は「ルールを作り、店舗さんにそれを守ってもらう」ことを進めてきた1年でした。2015年は正しい取り組みを行っている店舗さんが恩恵を享受できるような施策を進めていきます

具体的には、ユーザー評価の高い店舗さんほど検索結果を含め、露出のナビゲーションを強化する取り組みを行っていきます。この仕組みは従来のような、良いユーザーレビューを数多く集めればよいというわけではなく、レビューの内容までしっかり文字解析を行い、質の高いレビューがたくさん集まっていることを重視するようにします。こうすることで、たとえばレビュー業者などが書いたレビューは、同じような文言で数多くのレビューを掲載する傾向があるので、対象から外すことができます。

レビュー対策のためにいろいろ試行錯誤するよりも、お客さまの満足度を高めたる店舗さんの取り組みが評価されるようにしたいと考えています。レビューだけでなく、楽天への問い合わせなど、ロジックもかなり複雑にしています。こうした取り組みによって、お客さまにとって、より良い対応をしてくれるショップで買う機会が増えるようにしていくつもりです。

――レビューを集めるために、レビューを書くと送料無料にしたり、プレゼントを提供するといった取り組みを行っている店舗もあります。こうした店舗には、実際よりもいいレビューが集まる傾向があると思いますが、どのように対応しようと考えていますか、

対応を進めていこうと考えています。インセンティブを与えてレビューを集める行為は、各社のマーケティング手法の一部でもあるため、その行為自体を完全に取り締まることは難しい。しかし、あまりに過剰な取り組みに関しては、レビューの価値を低くしてしまう可能性がありますし、誤解される行為でもあるので、対策を進めていかなければならないと考えています

「レビューを書くと送料無料」といった販促ができなくなる可能性がある

リアルイベントを8月に開催し、新たなステージへ

――2014年の取り組みとして、スマホ・タブレット対応を進めた点もあげられるかと思います。

楽天市場では3~4年前からスマホに代表されるモバイル対応を強化してきました。2014年は流通額の半分程度がモバイル経由になるなど、スマホがメインである状況がはっきりしてきました。そのため、楽天市場のPCサイトで行う企画はほぼすべてスマホでも展開しており、それとは別にスマホ専用の企画も拡充してきています。

また、“売れるスマホページの作り方”も固まってきたと感じています。スマホのページ作りについては色々な意見がありますが、楽天市場では、やはりスマホでもロングページのほうが売れることが明確になっており、そうしたノウハウを店舗さんにも伝えられるようになってきました。

――2015年の取り組みとして、力を入れていこうと考えていることは何でしょうか。

引き続き、安心・安全の取り組みは積極的に進めていくつもりです。

また、2015年8月1日から5日まで、東京ビッグサイトで初のユーザー参加型イベントとなる「楽フェス」を開催します。楽天出店者がリアルの店舗(ブース)を出店し、そこで商品の説明を行ったり、使い方を説明して商品の良さを知ってもらう企画などを予定しています。店舗さんがブースを構えるほか、楽天グループのさまざまなサービスのブースを設け、ファッションショーなども開催する予定です。

百貨店で実施している催事「うまいもの大会」は百貨店のお客さまに、楽天市場の商品をお伝えするイベントですが、今回は楽天市場のお客さんを集めるイベントとなります。新たなチャレンジになりますが、店舗さんからは大きな期待をしていただいており、ブースを出したいという声も非常に多くなっています。

楽天市場で購入した商品について、お客さまが受け取りやすい環境を整えていくことも2015年の大きな取り組みです。すでに大阪と福岡で宅配ロッカーサービス「楽天BOX」を展開していますが、稼働率は高い状況が続いており、ニーズの高さに驚いているところです。利用状況を見てみるとやはり女性の利用が多く、ファッションや日用品の受け取りに使われているケースが多いようです。いつまでにとはなかなか言えませんが、できるだけ早く、この楽天BOXの拠点を全国50か所まで広げていこうと考えています。

日本郵便と共同で始めた受け取りBOX「はこポス」も好評で、新たな展開ができるのではないかと考えています。

あと、全社的に進めていくものとしてはクロスボーダーの取り組みです。ここ数年、各国で楽天市場型のマーケットプレイスビジネスを展開してきましたが、楽天としては十分な手ごたえを感じています。2015年はこうした各国のマーケットプレイスと、日本の4万店の店舗を結び付けていこうと考えています。

今年1月の楽天新春カンファレンスで行われたワークショップの様子
8月の「楽フェス」では同じようなブースで消費者向けに行われる
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