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売り上げの9割がリピート購入――「初めての人にはお売りできません」などのテレビCMのキャッチフレーズが有名な「ドモホルンリンクルが主力商品の通販企業、再春館製薬所の全社売上高の9割以上はリピート購入によるもの。顧客からの圧倒的な支持を得る再春館製薬所の成長の秘訣とは何なのか。5月に福岡市で開かれた日本ダイレクトマーケティング学会の基調講演で登壇した、再春館製薬所・西川正明社長の講演をレポートする。

アウトバウンドからインバウンド経営へ、顧客満足を追求する経営に事業転換

再春館製薬所は、通販業界で「通販・ダイレクトマーケティングのシリコンバレー」と呼ばれる九州地域を代表する通販企業。2013年度の通販・EC売上高は約288億円で、その売り上げの90%は主力のドモホルンリンクルが占める。そして、売り上げ全体の9割以上がリピート客によって構成されているのだ。

9割超がリピートの売り上げになっている。継続する会社を目指して、長い期間、お客様とのお付き合いをしたい

こう話す西川社長が社長に就任したのは2004年。再春館製薬所の創業は1932年、遡ること82年前のことで、新聞を使った通販を始めたのもこの時期だ。そして、西川社長の先代で、母親でもある西川通子氏が社長に就いた1982年以降、「ダイレクト・テレマーケティングシステム」を本格的導入し、急成長を遂げる。

1974年に開発した「ドモホルンリンクル」を主に電話によるアウトバウンドで販売。1988年度には年商100億円を突破した。売上高に占めるアウトバウンドの比率が約70%に達した1990年を契機に、アウトバウンドに頼るビジネスモデルからインバウンドへシフトする。今の経営の基盤となる顧客満足度経営に舵を切ったのだ。

「インバウンドによる割合を6割に引き上げる」という号令のもと、93年にTM革命と呼ぶ事業改革に着手。「お客様満足室」を設置し、顧客満足を追求する経営に舵を切った。改革直後にアウトバウンドの比率は54%にまで激減し、増減を繰り返しながら現在は5%程度までアウトバウンドの比率は低下。一方、正比例するように売上高は右肩上がりを続けた。

1990年当時と比較すると現在の売上規模は約3倍。アウトバウンドの比率を下げても成長を遂げているのは、圧倒的なリピート力が背景にある。

そこで売上高の90%を占めるというドモホルンリンクルのビジネス構造を見てみよう。2013年度は初回のお試しセットをテレビCMなどで訴求し、年間35万件の請求が入った。初回購入するのはそのうち20%。そこから1年以内に65%のユーザーがリピートし、その中から88%が再度リピートするという。商品購入3回以上、最終購入日から180日以内の化粧品会員数は約26万人に及ぶ。

ドモホルンリンクルの年間購入者数は約34万人。そのうち5年以上利用している人は全体の58%にあたる約19万9000人。中でも10年以上利用している消費者は43%もいるという。

こうした一連の顧客とのやり取りの中心は電話。その他にはファックス、はがき、手紙、メールなどがある。「大きな課題」(西川社長)というECは、全体の売上高に対して14%に留まっている

「お客様満足=売上」、右肩上がりを続けるにはリピートしかない

こうしたリピート通販ビジネスを実現している再春館製薬所。その舵取りを担う西川社長の経営論とは。

お客様満足を追求し続け、100年生き続ける会社になっていきたい」という西川社長。前社長から社長のイスを引き継いだとき、何を大切にすべきか考え、至った結論が「社員に美味しいご飯を食べさせ続けることが一番重要である」ということだった。

お客様とダイレクトで関係しているので、お客様が喜んでもらえることをしていれば、右肩上がり経営を続けることができると思っている。

「お客様中心」というキーワードは多くの企業が声を上げているが、再春館製薬所は「お客様満足=売上」という方程式を、社員と共有する。会社としては1円でも右肩上がりの成長を続けたいというのが経営者の本音。社員も同じような意識を持っているだろう、と多くの経営者が思うだろう。だが、「売り上げのために頑張ろうという社員はどのくらい作れるのだろうか」と西川社長は疑問を抱く。

社長の私でさえ、売り上げの重要性が分かったのは社長になってから。商品点数、入り口も増やさず右肩上がりを続けるにはリピートしかない。売り上げが下がった時は、お客様に喜んでもらえる努力が足りなかったということ。社内でもそのような言葉をかけている

顧客満足が上がれば売り上げは伸びる。一方、売り上げの減少は顧客満足が低下しているということ。こんな指標を示すことで、再春館製薬所のビジネスモデルが築かれていったのだ。

「10人中1人でもいいので一生のお付き合いをしてくれる人」の獲得目指すオンリーワン戦略

10人中10人に好かれたいと思わない。10人中1人でもいいので一生のお付き合いをしてくれる人を探したい。当社の製品は美しさよりも、悩みの解決を追求している。そのため、唯一無二の存在にならなければならない。

「唯一無二の存在」「オンリーワン」という言葉を西川社長は幾度も発した。それはドモホルンリンクルが「基礎化粧品ではなく、医薬品と化粧品に求められているモノが合わさった化粧品」という自負。そして、企業視点による商品作りではなく、とことん顧客視点で製品開発に取り組んでいる表れでもある。

例えば、化粧品を入れる容器。一般的に、ブランドイメージを重視するため容器、製品はデザイン面が最優先される。だが、再春館製薬所ではは異なる。使いやすさ重視だ。「容器にはメモリを入れて、どれくらいまだ溶液が残っているのか分かるようにした。持ちやすいようにくぼみも付けた。より使いやすようにしている

西川社長は次のようにオンリーワンを目指す考えを語っている。

「(ドモホルンリンクルについて)『あの商品は40歳からのモノ』『使い始めたら負け』など、このように思っている人が多いかもしれない。そうしたイメージを払しょくしようという提案もあるのだが、私はそのように感じている人たちが無理にドモホルンリンクルを使っても長続きしないと思っている。例えば、単に美を追求しているお客様とは長くお付き合いすることは難しい。だがら、とんがりを持ち続けることが大事だと思っている

ダイレクトに商品を届けるからこそ、お客様に「なりきる」ことが重要

「初めての方にはお売りできません」。ドモホルンリンクルのテレビCMでこのキャッチコピーを耳にした人は多いだろう。こんな奇抜なフレーズも、「唯一無二の存在」「とんがり」を持ち続けるための取り組みでもある。

初めて人には販売しないという挑戦的なキャッチフレーズを付けたり、最近では育児休暇に入った社員が、子育て経験を持つ社内の先輩スタッフと子連れ面談するCMも放映している。CMを見た視聴者から苦情のような声もあるという。だが万人に受けるのではなく、あえてメッセージ性の強いCMを打つのには「自分たちが言いたいことを言っていかなければ、共感してくれる人がいなくなってしまう」と考えているため。「10人中1人でも共感してくれればいい」。クリエイティブにも「唯一無二の存在」「オンリーワン」を目指す方向性が反映されている。

再春館製薬所の2013年度におけるインバウンドによる電話受注率は全体の54%。2003年度と比べても3%減に留まっている。ネット化が進んでいる中、電話受注割合が大きく減らないのは、再春館製薬所が電話受注を重視しているためでもある。

2013年度において、利用して1年未満のお客と会話する時間は平均で10分35秒。1年以上の顧客でも平均7分33秒だ。経営者の視点では少ない時間で多くの入電を受けた方が効率的。だが、再春館製薬所では会話時間の大小を評価基準にしていない。「効率だけを考えた会話はしない。『お客様満足=売上』の考えに基づき、『有難う』の声を評価基準にしている」と考えているためだという。

お客様の有難うを大事にしたい。「お客様の満足度=売上」と考えたとき、どうしたら有難うって言ってもらえるかが重要。

そのための研修には余念がない。西川社長が掲げるのは、「お客さまの『立場に立つ』ではなく、『なりきる』こと」。お客がなぜ相談をしてきたのかを考えるため、「お客様になりきる」ことが重要だという。

「効果を感じなかったというお客様は、もしかしたら使い方が間違っているのかもしれない。または、何かトラブルがあったから使い方を間違っていたのかもしれない。通販というダイレクトで商品を届けるからこそ、『お客様になりきる』こと大事にしている

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今回の再春館製薬所の講演は、EC企業には関係のない話ではない。通販・EC業界では新規の顧客獲得コスト(CPA)は上昇を続けているといい、顧客の奪い合いが起きている。新規顧客だけを追いかるビジネスモデルは危険性が伴う。そのため、既存顧客の掘り起こしやリピート率引き上げに取り組む企業が増えている。

九州地域を代表する通販会社はリピート通販で業績を伸ばしている企業がほとんど。どのような戦略、どんな考えで既存顧客との関係性を築いているのかを知ることは、自社のリピート戦略を考える上で貴重な参考事例になるはずだ。

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