矢野経済研究所が発表した国内食品宅配市場に関する最新調査結果によると、2024年度の食品宅配市場規模(主要8分野合計)は事業者売上高ベースで前年比1.7%増の2兆6380億円と推計、今後も堅調な成長が続く見通しだ。2029年度には、2024年度比で10.6%増となる2兆9174億円に達すると予測している。
食品宅配市場の調査は、①在宅配食サービス②食材(惣菜)宅配③宅配ピザ④宅配寿司⑤外食チェーン・ファストフード宅配⑥牛乳宅配⑦生協(個配)⑧ネットスーパーの主要8分野(業態)が対象。いずれの宅配サービスにおいても日用品、雑貨等を除く食品群を基本としている。市場に含まれる商品・サービスは在宅配食サービス、食材(惣菜)宅配、宅配ピザ、宅配寿司、外食チェーン・ファストフード宅配、牛乳宅配、生協(個配)、ネットスーパー。
食品宅配市場は、少子高齢化や女性の社会進出といった社会的背景を受けて、年々その重要性が高まっている。新型コロナウイルス禍で急増した需要の反動減が懸念されていたが、外食需要の回復や食関連市場全体の縮小傾向のなかでも、食品宅配は日常生活に不可欠なサービスとして定着。2020年度の急拡大以降も需要は高止まりを維持し、2024年度も引き続き成長を記録した。
特に生協(個配)やネットスーパーなどの小売業態が市場をけん引しており、矢野経済研究所は「食品宅配サービスは生活に根付いた存在となっている」と分析している。
注目トピックとしてあげているのがミールキット(料理キット)市場の拡大。レシピと必要な食材がセットになったミールキットは、調理の時短ニーズに応える商品として人気を集めており、2024年度の市場規模は約1900億円と堅調に推移した。近年では、カット済みの食材や調味料をセットにした冷凍キットの品質向上や商品バリエーションの拡充が進み、子育て・共働き世帯に加え、高齢者や単身世帯にも需要が広がっている。また、人気飲食店や有名シェフとのコラボ商品、未利用食材を活用したアップサイクル商品など、付加価値の高い提案も市場拡大を後押ししているという。
矢野経済研究所は、食品宅配市場が今後も拡大を続けると予測する一方で、製造・配送現場の人手不足や業務効率化、新規顧客の獲得と継続利用といった課題にも言及。デジタル化の推進やリアルなコミュニケーションの強化、付加価値の高い商品・サービスの提供によって、顧客体験の向上が求められていると指摘している。
調査概要
- 調査期間:2025年7月〜9月
- 調査対象:在宅配食・食材(惣菜)宅配サービス企業、ファストフード・外食チェーン店運営企業、乳業メーカー、生協、小売事業者、その他食品宅配関連企業・団体等
- 調査方法:矢野経済研究所の専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mailによるヒアリング、ならびにアンケート調査併用
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