大村 マリ[執筆] 3/6 8:00
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最先端のAI物流ロボットソリューションを導入し、入出荷の従量課金で物流代行料金を徴収する、物流施設における新たなビジネスモデルが2024年春に稼働する。物流施設の所有・開発・管理を手がけるグッドマンが、物流の自動化や倉庫オペレーション事業を展開するGeek+(ギークプラス)と協業し、新たな物流スタイルを提供するという。

「グッドマン常総」の概要と新しい物流の在り方について、グッドマンジャパンCEOのアンガス・ブルックス氏、ギークプラス代表取締役CEOの加藤大和氏が解説した。

運用総資産8兆円のグッドマンは立地を厳選

オーストラリアに本社を構えるグッドマンは世界各国のEC企業、物流企業、データセンターオペレーターといったさまざまな企業に向けて、物流不動産、データセンター、ビジネスパークなどを含む産業用不動産の所有、開発、管理を手がけている。

「デジタル経済にとって非常に重要な、必須となるインフラストラクチャーの構築」をミッションに掲げ、グローバルでの運用総資産は8兆円になる。

グッドマンのビジネスモデル
グッドマンのビジネスモデル

世界各地の主要な成長経済市場で先進的な産業用不動産を自社で開発し、長期の保有と運用を行っている。開発力とイノベーションがグッドマンの強みと自負している。(ブルックス氏)

グッドマンジャパンCEO アンガス・ブルックス
グッドマンジャパンCEO アンガス・ブルックス

グッドマンが追求する物流施設の立地条件は、まず「消費者に近い場所」であること。顧客である入居企業が倉庫に保管している商品をエンドユーザーへ迅速に配送できるよう、消費者に近い場所での開発を重要視している。

次に「アクセス性」。顧客のサプライチェーンの交通網に近いことはもちろん、物流施設で働く従業員にとっても通勤しやすい場所であることは重要なポイントになる。

最後に「都市化が進むエリア」であること。土地の供給が限定的かつ顧客のニーズが集中する地域でも、適正価格で開発用地を確保するのがグッドマンの戦略だ。

グッドマンが作る物流施設の3つの要素
グッドマンが作る物流施設の3つの要素

では、前述した立地にどのような物流施設を建てるのか。まずは「快適な就業環境」。洗練された外観と内装にこだわり、倉庫で働く従業員や配送を担うドライバーにとって、快適で魅力的な空間であること、そこで働くことにプライドを持てるようなデザイン性の高いラウンジやアメニティ施設が特徴だ。

次に「柔軟な設計」。これはギークプラスが提供するAI搭載の自動棚搬送ロボットといったロボティクスのテクノロジー、冷凍冷蔵施設、フロアの分割使用など、先進的な物流オペレーションにも柔軟に対応できるようにする。

そして「サステナビリティ」。物流不動産として、グローバルでも最高レベルのサステナビリティを実現していると自信を持って言える。太陽光パネルや蓄電池、EV充電ステーション、屋上庭園や菜園など、さまざまなサステナビリティの取り組みは、自社および顧客のESG目標達成に寄与しており、最新の物流施設は優れた環境性能や省エネ性能において最高レベルの評価を獲得している。(ブルックス氏)

※EGS……Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)を考慮した経営・事業活動のこと

ギークプラスとコラボレーションした新施設「グッドマン常総」とは?

今回、グッドマンとギークプラスがコラボレーションした最新鋭の物流施設「グッドマン常総」は、茨城県常総市の巨大な敷地内に1棟目として立ち上げた5階建て総賃貸面積17万4000平方メートルの巨大物流倉庫である。1フロアが1万坪を超える成形で大空間の物流スペースを提供できる施設は希少だ。

常総市の新たな地域一体型の統合開発プロジェクト、「アグリサイエンスバレー常総」の一翼を担う物流施設であることも特長のひとつ。近隣には新たに誕生した道の駅をはじめ、TSUTAYA BOOKSTORE、カフェ、店舗、温浴施設、都市公園などが賑わいを創出している。また、複数の最寄り駅とグッドマン常総を循環する路線バスが運行され、常総市の推進する雇用対策にも後押しされて、人材確保にも有利な施設である。

サステナブルな取り組みとして、ルーフトップに4.25メガワットのソーラーパネルを設置。ここで発電された太陽光電力を庫内で使用する。余剰電力は敷地内に設置したテスラ社のバッテリーで蓄電し、ピーク需要時に利用している。

グッドマンとギークプラスが連携した施設「グッドマン常総」
グッドマンとギークプラスが連携した施設「グッドマン常総」

新たな従量課金型ECフルフィルメントサービス

目まぐるしく変わる世の中で、今までと同じような物流の在り方ではなく、事業の成長に合わせて物流の対応力を変えていかないと、今後のポジティブな成長を遂げられない。(加藤氏)

ギークプラス 代表取締役CEO 加藤大和氏
ギークプラス 代表取締役CEO 加藤大和氏

こう話すのは、グッドマンと協業したギークプラスの加藤社長。ギークプラスはAI搭載の自律走行搬送ロボット(AMR)や自動搬送ロボット(AGV)を提供している企業で、現在国内約70拠点にこれら物流ロボットを導入、およそ2500台が稼働している。

「グッドマン常総」では、ギークプラスのロボットテクノロジーを導入。企業の成長に合わせたスケールアップ、不要なスペースやコスト削減をロボットテクノロジーで実現しているため、従来の固定の倉庫スペースで利用料金を徴収する契約モデルではなく、事業規模に合わせた従量課金モデルを採用している。

ここで、ギークプラスが提供するロボットテクノロジーを活用した物流の現場に触れておく。

千葉県印西市にあるギークプラステクニカルセンターの様子

上の動画はある大手ECサイトの出荷現場で、ギークプラスのAGVが物流倉庫内を駆け回る。左側のスペースにロボット棚を積んだAGVがスタッフの近くまで自動で棚を運んでいるのがわかるだろう。右側に並んだ青いコンテナは、 1コンテナが1つの注文を表しており、中央にあるモニターに「どの商品をどこの棚の位置からいくつ取る」という指示が表示され、ピッカーはそのモニターを見ながら中央で作業する 。

モニターの表示に従い、AGVが運んできた棚と中央のコンテナでピッキング作業を行う。手元のハンディスキャナーでピッキングをした商品のバーコードをスキャンすると、右側のコンテナのいずれかが光る。ピッカーはそこに商品を入れて次の梱包出荷工程に回す。ピッキングする商品を積んだ棚はAGVが自動的にピッカーの近くまで運ぶため、ピッカーは歩き回る必要がない。

倉庫内の歩く作業を0にする。これがロボットソリューションの大きな効力である。物流業界の「2024年問題」に向けて、小売業やメーカーなどはいま、このような自動化ソリューションを推進している企業が多い

最新テクノロジーを使う相模原倉庫はすでに満床

出荷数の拡大や商戦波動などへ柔軟に対応できるように進めている従量課金制の物流センター。ギークプラスは「グッドマン常総」での導入に先がけ、ファッションECのクルーズの倉庫の一部を借りてEC向け物流センター「相模原LaaSセンター」を2022年に開設、従量課金制を導入した。延床面積は約9900平方メートル(3000坪)。AGVを合計80台導入し、商品の保管棚を1400棚設置している。

このセンターで導入しているのが、初期費用ゼロで作業数量に応じてロボットの利用料金を徴収する「ロボット従量課金サービス」。作業数量に応じた課金システムで、取扱商品や作業数量の変更など、物流倉庫における環境変化に応じて料金を徴収するシステムとなる。

スタートから約1年半で倉庫内は満床。利用している企業の多くはBtoCだが、BtoBも一部請け負っている。ロボットを多用しているので高い生産性を得ることができ、リードタイムの大幅な短縮、作業の効率化、コスト削減などのメリットを得ている企業が多い

相模原LaaSセンター
相模原LaaSセンター

なお、このセンターは競合他社や連携パートナーのさまざまな最先端のテクノロジーを採用し、荷主に利用してもらう実験の場でもあるという。

たとえば、ギークプラスの新型棚搬送型ロボット「PopPick」とプラスオートメーションの立体型ロボットソーター「t-Sort 3D」との連携。異なるメーカーのロボットを掛け合わせることで、保管からピッキング、仕分けまでの工程の生産性向上を実現した例だ。「PopPick」からのピッキング後の仕分け工程に、空間活用可能な「t-Sort 3D」を連携し、スペースを大きく広げることなく仕分け間口数を何倍にも増やすことを実現している。

「PopPick」とプラスオートメーションのロボットソーター「t-Sort 3D」

また、荷主企業がすでに持っている既存のセンターを自動化したい場合や、年末年始の波動対応など、荷物の一時的な保管場所としても使用。このような実際の荷物を預ける用途だけでなく、実際のギークプラスのロボット導入前の仕様確認や稼働テスト、現場でのアルバイトの教育などでも利用されているという。

入居までの長いプロセスは不要の「グッドマン常総」内の「Plug&Play常総LaaSセンター」

グッドマンの「グッドマン常総」内にギークプラスが新たに設ける「Plug&Play常総LaaSセンター」は、「相模原LaaSセンター」と同様に従量課金型のECフルフィルメントセンターとして運用する。

「Plug&Play常総LaaSセンター」の特徴
「Plug&Play常総LaaSセンター」の特徴

今までは入居が決まると決算書を提出して与信確認を行い、保証金を入れて契約といったプロセスが必要だったが、「Plug&Play常総LaaSセンター」ではそのような長いプロセスは不要。すぐに入居できるという。物流、副資材、配送のタリフなども「Plug&Play常総LaaSセンター」がすべて用意する。

ハードウェア、ソフトウェアの両方で初期投資はシステム面の改修がなければ一切必要なく、実際に入荷した数量と出荷した数量に応じて、完全に使った分だけ支払う従量課金サービスになる。オペレーションは大手3PLであるセンコーが担い、ピース単価の従量課金によって人材リソースや必要な管理体制を築いていく。

従量課金型の物流はどんな企業におすすめ?

従量課金型の物流サービスはどのような企業に適しているのだろうか。加藤氏は「まずは物流コストを下げたい企業」と説明。どんどん時給が上がり、人手が集まらなくなっている昨今、物流コストはここ数年で10%から20%上がっていると言われているため、ここを重視する企業は多い。

「もっと出荷数を増やしたい」と考える企業も、LaaSセンターであれば、1人あたりの生産性は1時間に200から250点のピッキングが可能だ。通常のマニュアルオペレーションでは、1時間にピッキングできるのは50から60点だと言われているなか、1人あたりの生産性を上げることで全体の入出荷量を増やせる。また、「注文から出荷までのスピードを上げたい」「物流波動を吸収したい」という企業にもおすすめしたいと話す。

物流の「2024年問題」を前に、今後事業を加速させていくための投資ができていないという人も多い。自動化するためにいきなり自社で数億円の投資はリスクが高いが、比較的トライアルしやすいようにパッケージを組んでいる。物流DXへの関与を加速させていきたい。(加藤氏)

ネットワークシステムで拠点をシームレスに連携

送料軽減、スピード配送、BCP(事業継続計画)といった観点から従量課金型のECフルフィルメントセンターを複数拠点で使いたいといった要望も出てくる。

ギークプラスでは物流クラウドネットワークシステム「nest(ネスト)」の開発を進めており、複数拠点の従量課金型のECフルフィルメントセンターにおける在庫情報や配送状況などを最適化。複数拠点を活用した物流アウトソーシングのメリットを享受できるようにする。2024年の年末までには、西日本エリアでも従量課金型のECフルフィルメントセンターを新設する予定という。

複数のWMSを束ねる「ネスト」の概要
複数のWMSを束ねる「ネスト」の概要

「ネスト」は複数のWMS(倉庫管理システム)を1つに束ねる物流クラウドネットワークシステム。上図の左上側が荷主のERP基幹システム、左下側がさまざまな販売チャネルからの注文をまとめる「OMS(オーダーマネジメントシステム)」。たとえば北・中央・南に3拠点あるとすると、荷主側の上位システムは拠点を気にせずデータを連携し、「ネスト」が注文を振り分け、届け先に近い拠点から出荷できるようにする

拠点を増やす場合、ERPとWMSを直接つないで在庫・出荷データを管理しようとすると大きなシステム改修が必要になるうえに、複数拠点の在庫情報をリアルタイムで共有することが難しくなるといった課題があった。「ネスト」はWMS、OMS、ERPのハブになり在庫・出荷データを統合的に管理、導入することで、これまで抱えていた課題の解消が期待される

このシステムはギークプラスのECフルフィルメントセンターを使用しない顧客にもシステムのみの提供が可能である。なお、「Plug&Play」常総LaaSセンターの稼働日は、現状2024年春を予定しており、3月から内覧できる予定だ。

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