越境ECにも影響するの? 中国でついに策定される見込みの「電子商取引立法」とは
中国ではこれまで、ECに関する法律が整備されていなかったが、行政は「電子商取引法」を策定する方向で動き始めている。気になるその中身はどのようになるのか。最近の行政の動きから推察してみた。
大手モールによる規定が参考になりそう
日本では特定商取引法(何度か改正)により、ネットでの販売に関し、消費者利益を守る法律が施行されている。中国ではこれまで未整備だった電子商取引法の草案が、年内に完成する見込みとなった。
ちなみにそのような法律が存在しなかった今までは、「taobao」や「tmall」などが独自の規定を設けて、消費者保護を図っていた。
たとえば、店舗のランク付け(5点満点で3つの項目)や保証金制度(もし「tmall」で偽物を販売したら、5倍の金額で弁償する)など。この規定が他のモールにも適用され、今のECの基盤を作り出してきた。
今回の立法化にあたり、こうした「taobao」「tmall」「JD」などの規定が重要な参考事例になる模様だ。
全国人民代表大会財政経済委員会、商工業総局、商務部など政府部門、中国消費者協会、電子商取引協会、インターネット協会、北京大学、中国政法大学など、法律学界と専門家を交えて立法化に臨むようで、かなりの力のいれ具合が見て取れる。
詐欺まがいの売り方が蔓延
今回、中国政府が力を入れて法律策定に取り組み始めた背景には、悪質な詐欺まがいのネット通販店舗に関する問題がある。
ある店舗の事例を説明しよう。キャンペーン時に布団セットを販売し、予約販売ページでは安い販売価格と「気に入らなければすぐに返金します」の文字がある。買った後に心配事はないとも謳っている。
ただ、そのカートの下にある文字をクリックすると下記のような文言が表示される。
- 特に理由がなければ返金、返品不可能。
- 予約販売で支払った金額も返金不可能。
つまり、予約販売ページでは「返金可能」としながらも、実際にはこうした文言を盾にして、返金しないというわけだ。
この対応に腹をたてた消費者が店舗に問い合わせすると、店舗の言い分は「あくまでモールの規定に従っているだけで悪くない」との返答。これまでは結局、消費者が泣き寝入りするしかなかった。
キャンペーン時にはすべて返品、返金可能になる法律が施行
このような悪質な事例の増加に対し、中国政府は厳しい対応を始めた。9月18日に国家商工業行政管理総局が発表し、10月1日から施行された「网络商品和服务集中促销活动管理暂行规定」では、キャンペーン時などに安く購入した商品は7日以内であればすべて返品、返金可能にするという驚くべき法律だ。
この背景には、悪質な店舗対応などを含めた状況への対応が考えられる。
- 2014年11月11日の「独身の日」などに、モールもしくは自社販売でのキャンペーン企画などで安く販売した商品は、返品不可や予約注文の前金は返金不可などとしていたが、その結果、消費者の不満が爆発した
- ネット通販では詐欺まがいの事件が多発しており、年間の提訴数は約8万件(前年比3倍)にも達している(合計約6億円もの賠償金:政府機関統計)
今回の法律が越境ECまで範囲が及ぶのかどうかは現在調査中だ。いずれにせよ、モールや店舗が自ら首を絞めてしまった結果になり、今後の店舗運営に大きな影響を与えそうだ。
また、こうした店舗に対する厳しい姿勢は、現在検討されている電子商取引法にも受け継がれることになりそうだ。その内容に注目が集まっている。