上海で働く駐在員の中国EC市場リポート

中国EC第2位の「京東商城(JD.com)」とは? その素顔と今後の戦略を探る

テンセントグループの一員で、中国ECで天猫(Tmall)に次ぐシェアを持つJD.com(ジンドン)とは?(vol.32)

高岡 正人

2018年4月4日 8:00

最近、京東商城(JD.com、以下JD)についてお客様から質問を受けることが多くなってきました。JDはスマートフォン向けチャットアプリ「WeChat」を運営するテンセントグループの一員で、中国ECで天猫(Tmall)に次ぐEC市場シェアの第2位に位置しています。今回はJDの素顔と今後の戦略についての考察をお伝えします。

はじめに、2017年度の中国のネット通販業界マップをご覧ください。

総合通販モール 情報媒体 専門通販モール 国内物流 国際物流 決済
図1 中国ECの主なプレイヤー
出典:iResearchの調査資料を元にエフカフェが編集

日本にいるとアリババグループの天猫(Tmall)の情報が多いと思いますが、実はこれだけたくさんのプレイヤーがいるのです。

キャンペーン等の施策はネット通販の売上向上にとても有効的
図2 2011年第1四半期〜2017年第2四半期の中国大手EC企業の流通総額(公開資料、企業年報を元にiResearchが調査)
出典:iResearchの調査資料を元に編集部で翻訳

こちらが各プレイヤーの流通総額の比較になります。 天猫(Tmall)が頭ひとつ抜きん出ており、2番手にJD、次いで家電量販の苏宁易购(Suning.com、中国最大のフラッシュセールサイト 唯品会(VIP)と続いています。

図3 2011年〜2017年の中国ECジャンル別成長率(国家集計局の情報を元にiResearchが調査)
出典:iResearchの調査資料を元に筆者翻訳

ジャンル別の伸び率で注目したいのは、2016年からベビー・マタニティー用品の成長率が緩やかになる中、生鮮と越境ECの伸び率が高いまま推移していることです。これは中国国内での生鮮食品のネット通販のニーズが常に高いことを示しています。

現状、越境ECで生鮮食品を扱うのは物流上、難しいのですが、もし可能になれば、とても大きなニーズが市場にあると思います。

JDの現状は?

図4 2012年〜2016年のJD総収入における自社事業比率(2016年JD財報を元にiResearchが調査)
出典:iResearchの調査資料を元に筆者翻訳

こちらがJDの状況になります。JDは日本でいうアマゾン型で、自社モール内にJD名義で商品を販売するモデル(いわゆる仕入れ販売)が主な販売方法です。そのため、商品売上の比率(JD自社事業収入)が2016年で91.4%と高い状況になっています。

図5 JDにおける3Cデジタル製品と他の商品の流通総額成長率(2016年JD財報を元にiResearchが調査)
出典:iResearchの調査資料を元に筆者翻訳

JDは家電の売上が全体の50%を占めており、総合通販というよりも家電専門モール的な位置付けで中国国内では認知されています。

図6 JDの7つの物流センター(2016年12月末時点。2016年JD財報を元にiResearch研究院が調査)
出典:iResearchの調査資料を元に筆者翻訳

図7 JDの物流エリアと運営に関するデータ(2016年12月末時点。2016年JD財報を元にiResearch研究院が調査)
出典:iResearchの調査資料を元に筆者翻訳

物流拠点は全国に7か所あり、配送センターは6,906か所あります(2016年12月時点)。また配送員は83,512人、関係するIT人材は9,091人と膨大な人員になっています。

WeChat上に新モール誕生か?

JDの最近の大きな動きは、2018年1月4日に女性向けECの美麗連合グループと新しく合資会社を設立し、WeChat上のECモールをフルリニューアルすると発表したことです。美麗連合グループは淘宝(Taobao)向け口コミサイトおよびファッション専門の通販モールとして有名です。

WeChatのECは現状、下図8の「购物(ショッピング)」をタップすると、下図9のJDに移動する形式ですが、おそらくここに新しいモールが入るのではないかと予想しています。

WeChat
図8
WeChat
図9

この提携の背景として下記の理由があげられます。

  1. W11以降、美麗連合グループはWeChatの「ミニプログラム」内で8,000万人ものユーザー数を獲得し、成功事例となっている
  2. SNSマーケティングで成功している美麗連合グループと組むことで、市場拡大を狙っている。これまで基本的にJDはアマゾン型だったが、個人商店や企業をこのモールに取り込むことで、淘宝(Taobao)や天猫(Tmall)のようなモールになることをイメージしている

「ミニプログラム(小程序)」とは、2016年12月にWeChatがスタートしたWeChat内で使用可能なアプリで、App Storeからアプリをダウンロードをしなくても、WeChatのアプリ内で使用できます。

ユーザー数は現在なんと1.7億人(WeChatのユーザー数は9.8億人)、すでに約57万のアプリが存在します( この「ミニプログラム」については、またの別の機会にお知らせします)。

現在、モールは3月オープンに向けて募集中となっており 、ECでは差をつけられている天猫(Tmall)を猛追することになりそうです。

ちなみに残念ながら日本アカウントのWeChatアプリでは、ミニプログラム、ec共に非対応になっています。

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