アリババグループの一人勝ちは続く? 抱える課題と成長戦略とは
アリババグループホールディングスが発表した2016年4~6月期(第1四半期)では、売上高は前年同期比59%増の321.5億元(約4870億円)となり、高い伸び率で成長を続けています。そんなアリババが抱える課題は何なのか、考察します。
年間流通総額は3.21兆元(約51兆円)でウォールマートを抜いて世界1位
2015年4月~2016年3月までの流通総額は3.21兆元(約51兆円)となり、米ウォールマートの年間流通総額をわずかに上回り、世界第1位の流通企業になりました(ウォールマートは基本的に自社仕入れ商品の販売であるため、ビジネススキームが異なります。あくまで流通ボリュームだけを比べた場合になります)。
ちなみに、アリババは2020年までに6兆元の流通総額、20億人にサービス提供をする構想を発表しています。
こうした好業績や成長戦略が目立つ一方、課題も浮き彫りになっています。
課題1:新規アクティブユーザーの伸び悩み
Taobao(タオバオ)とTmall(天猫国際)の会員数は現在4億3400万人と言われており、上場後から2016年度(2016年3月末)年までに7300万人の新規ユーザーを獲得しています。
ただし、2016年はこれまでに1100万人しか獲得できていません。中国のネット通販ユーザーだけでは限界に近づきつつあります。新たなチャネルや海外展開など新しいユーザーの獲得を仕掛けていく必要があります。
アリババは2016年4月、シンガポールのネット通販企業Lazadaへ10億ドル(約1000億円)を投資しました。この発表からも中国以外への市場拡大を見越していることがよくわかります。
課題2:売上構成比のほとんどがTaobao、Tmall
売上構成の8割を「Taobao」「Tmall」が占めています。公表はされていませんが、恐らく利益比率も売上構成に紐付いていると考えられます。
海外向けBtoBマーケットプレイス事業「アリババドットコム」の売上構成比は10%に満たないのが実情です。メイン事業はもちろん、他の事業を拡大し、収益力をどのようにしてさらに高めていくのかが今後の成長のキーになるでしょう。
こうした課題を解決するため、アリババが力を入れて進めている戦略が2つあります。
アリババの戦略1:越境ECの強化
越境ECはこれから注力していく分野です。
「JD.com」(京東商城、ジンドン)などの強豪が増え、政府の方針転換といった制約はあるものの、越境ECはアリババにとって絶対に成功を収めなければならない事業になっています。
中国国内の所得水準が上がり続けるなか、都市部では日本の商品はすでに中国商品よりも安く、信頼の高いものになっています。数年間は中国商品に追いつかれることはないでしょう。
そう考えた場合、越境ECの日本商品のニーズは今後、間違いなく高まり続けることになります。
アリババの戦略2:地方などモバイルファースト層の取り込み
中国や東南アジア、その他、発展途上国でよく見られるケースが、PC経由の買い物をスキップし、モバイルファーストでネット通販を行っているという現実です。
アリババのモバイル比率は2015年が40%、2015年は65%、直近では70%を超えています。急速な変化に対応していることがわかります。
主に伸びているのが地方の新規ユーザー。モバイルファーストによって地方ユーザーなどのシェアをどのようにして獲得していくのかが、キーとなってきています。
課題を抱えながらも成長を続けるアリババですが、日本では表面的な情報のみが報道されているケースがほとんど。このような事業背景を把握した上で、事業判断していくことをお勧めします。