2時間で3億円を売った「ネット生放送+EC」の事例とは?【中国の最新ネット通販事情】
2時間のネット生放送で約3億円を売り上げる――中国では「ネット生放送+物販」というビジネスモデルが注目を集めています。今回は、中国のネット通販市場で突如、現れた新たなECのビジネススキームをお伝えします。
ネットの生放送×ネット通販に熱い注目
2016年5月、1億3000万人のユーザーを抱え若年女性向けファッションを中心に扱うECモール「蘑菇街(モグジェ)」はネットの生放送を活用したネット通販事業を開始すると発表しました。
中国では「ネットの生放送×物販」のネット通販を手がけるECサイトが大きく伸び始めています。
「ニコニコ生放送」のような個人でもネット生放送ができるサービスを展開している会社が日本には何社かありますが、中国においても数多く存在しています。中国の調査会社「iimedia」によると、現在サイトだけで200サイト、市場規模は90億元(約150億円)と言われています。
スマートフォンなどのモバイル端末で動画などのコンテンツを見る習慣が当初からある中国では、ネット生放送もすんなりマーケットに受け入れられ、テレビ番組を見るように普及したという背景があります。
KOLのネット生放送で爆買いが発生中!?わずか2時間で3億円
「モグジェ」が生放送サービスを開始した初日。「モグジェ」は、ファンが多く影響力の大きいブロガーを意味するKOL(Key Opinion Leader)のサイトで、UUが通常の10倍、売上は67.3%アップしたと発表しました。
KOLは、日本でいう有名ブロガーを意味し、商品紹介によるアフィリエイト報酬といったビジネスを展開している人のことを指します。
6月13日夜10時には、「モグジェ」のKOLである“劉小瑜咯”が生放送を実施。韓国の新作デニムスカートを、他の服との組み合わせやシーン別の着用提案といった自らのファッションセンスを共有しながら紹介し、1時間で20万いいね! を獲得しました。
具体的な売り上げの数値は明らかにしていませんが、かなりの数値をたたき出したようです。
5月26日には、タオバオも「淘宝直播」というサービス名でネット生放送を開始しました。
KOLの“張大奕”は自らタオバオに店舗を持ち、生放送で自身の新作ブランドを発表。製作過程などを実況中継しました。
すると、20時から22時までのわずか2時間で41万人が生放送を視聴。100万いいね! を獲得しました。その効果もあり、2時間の生放送でなんと2000万元(約3億円)を売り上げたのです。
これは「独身の日」の日本企業売り上げベスト3に匹敵する数字。それをわずか2時間でやってのけたのですから、驚異的といってもよいでしょう。
すでに日本の商品の越境ECでも活用始まる
凄まじい売り上げをたたき出したこともあり、中国では生放送を活用したネット通販が新たなビジネスモデルとして大きく注目されています。
起業家や有名な女優も生放送を使ったネット通販に取り組み始めています。
また、すでに日本の商品を販売する越境ECでも生放送の活用をスタートしています。
中国を見ていていつも思うのは、動きが本当に早いということ。“このスキームはいける! と思った瞬間、多くの人が突っ込んでいく”ため、わずか数か月で大きなマーケットになる可能性があるのです。
ネットの生放送を活用したECマーケットは今後、間違いなく拡大するでしょう。“爆買い”で特定の商品が中心に売れている越境ECでも、KOLの活躍で本当によい商品が日の目を浴びる――そんな日がすぐそこまでやって来ています。