高岡 正人 2016/6/8 7:00

中国では越境ECに関する新しい税制制度が4月8日に発表され、約1か月半が経過しました。EMS(国際スピード郵便)を使った日本からの個別配送は従来通りの動きで特に変化はありませんが、保税区モデルでは商品が販売できなかったり、出荷が滞ったり、販売の競争力が一部弱くなる事態が発生しています。そんな中、5月25日の発表で、新政策の一部が1年間延期されることに。その中身を紹介します。

税金関連は延期なし 通関関連は延期あり

中国財務省関税管理課は5月25日、「财政部关税司负责人谈跨境电子商务零售进口有关过渡期监管措施」を通告し、越境ECにおける新政策の一部を1年間延期すると発表しました。

中国財務省関税管理課が発表した新政策

新制度の下では、保税区における「越境EC小売輸入商品リスト」の一部商品は通関証明書の発行が必要となります。それが今後、1年間発行していなくても販売できることになりました。これは、一般貿易の話ではありません。

そもそも、新制度が保税区モデルを対象にしたものということは意外と認識されていませんでした。

今回の延期の範囲は、通関証明書に関する通告です。つまり、

  • 税金関連:延期なし(4月8日新税制制度に準ずる)
  • 通関関連:延期あり(2017年5月11日同日まで)

税金に関しては延期されず、4月8日施行の新税制でそのまま動くことになります。

通関関連を下記にまとめるとこうなります。 

延期された地域

  • 天津、上海、杭州、寧波、鄭州、広州、深圳の保税区、重慶、福州、平潭の10か所

越境EC制度の新政策が適用される地域

延期された商品カテゴリー

  • 化粧品、赤ちゃん用粉ミルク、医療機械、特殊食品(健康食品、医用食品など)

1年後、通関では原産地証明、検査検疫証明、許可書などが必要になります。

販売できない商品が保税区にストックされてしまっている現状

今回の延期の意図はいったい何なのでしょうか。

中国国内では「1年間かけてしっかり申請してください」という政府機関からのメッセージだと捉えられています。

たとえば化粧品などの場合、食薬監総局が指定した行政許可検査機構にサンプルを提出し、検査を実施してその後、食薬監総局に登録。このステップを踏むと最低でも1年ほど時間がかかります。

つまり、“1年をかけてしっかり申請してください”というメッセージとして認識することができるのです。内情を言うと、実は保税区内にストックされてしまっている(販売できない商品がどこにも動かせない状態になっている)商品が数多くなり、止むを得ない判断であるとも考えられています。

深圳の保税区

深圳の保税区

香港での個配モデル構築が今後オススメ

今回の通告で一旦、商品を1年間販売できる状態になりましたが、今後、保税区モデルを使った越境ECの配送メリットは徐々になくなりつつあります。

では、中国向けのECを本格化したい日本企業はどうすればいいのでしょう。私は、EMSを使った販売を続けるか、香港を活用することをおすすめします

EMSを使った直送モデルは、EMSの金額が6月1日から値上がりましたが、それでもいろんなリスクを考えると今はベターでしょう。

香港の倉庫を経由する越境モデルに注目しておきましょう。香港は商品を輸入しやすい環境にあり、税金も高くありません。香港からの個配モデルを構築すること(簡単ではないですが)ができれば、中国だけでなく、東南アジアやインドなどに向けた越境ECにも対応することができるようになります。リスクヘッジというメリットも享受できます。

中国のこうした状況を受け、香港の倉庫経由で個配する越境モデルの活用が増えると思いますので、今後注目しておきたい施策でしょう。

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