上海で働く駐在員の中国EC市場リポート

「tmall」に競合のアマゾンとテンセントが出店。“勝つためには手段を選ばない”中国EC市場

中国に駐在し、実際にECも手がけるエフカフェの高岡正人取締役が中国ECの状況をレポート(vol.4)

高岡 正人

2015年5月11日 9:00

中国には、「とにかく勝つためには手段を選ばない」という特有の気質を持った人が多い。これはビジネスシーンでも同様で、日本人であれば“掟破り”と思われることも平気で行う。たとえば、「tmall」にテンセント、アマゾンが出店し、競合が競合サイトに店舗を構えるといった日本では“掟破り”とされる動きもある。

こうした中国人の気質を反映した中国EC市場の動向を紹介する。

化粧品、アパレル取扱店は「tmall」に出店できない状態に

2014年、日本の新規上場会社数は前年比約43%増の77社だった。中国も負けず、ネット関連企業だけで31社が上場した。そのうち、4社はネット通販関連企業だ。そのうち3社は中国では誰もが知っている企業である。

  • アリババグループ (2014年9月19日 New York上場 )
  • 京東 (2014年5月22日 NASDAQ上場 )
  • 聚美优品 (2014年5月16日 New York上場)

2014年に新規上場した中国のIT関連会社一覧

なかでもアリババは2014年11月に約29兆円の時価総額を記録し、ウォールマートを抜き、GE(ゼネラル・エレクトリック)やチャイナモバイルと並んだ。中国のなかでも最大級の価値を持つ企業となった。

現在は全体的に中国ネット企業の株価は以前に比べると落ち着きを取り戻しているが、先日、アリババ・グループの「tmall」の好調さを垣間見る驚きの出来事が起こった。

なんと一番の競合であるテンセントが「tmall」へ出店したのである。

テンセントtmall店(tengxun.tmall.com/) 

日本の感覚でいえば楽天市場に「Yahoo!ショッピング」が店舗出店するようなもので、中国の特異性を長年見てきていた私も度肝を抜かれた。気になって早速サイトを見てみたが、現在、販売している商品はQQ(チャットサービス)のチャージカードなどで、商品はあまり多くは販売されていない(日本からサイトを見ると、中国国内以外からのアクセスとされ台湾タオバオに飛ばされてしまうので、VPNなどが必要です)。

また同じく競合のアマゾンも「tmall」に出店した

アマゾンtmall店(amazon.tmall.com/) 

アマゾンは自社仕入れ商品などを中心に雑貨などを販売しているようだが、見る限りまだ売り上げはさほど高くはないようだ。

この2社の出店が物語っているのは「tmall」の圧倒的なパワーと、とにかく“勝つためには手段を選ばない”という中国らしいたくましいビジネス感覚である。

またApple、マイクロソフトなども「tmall」へ出店している。日本や他国では考えられない動きが中国でのネット通販ビジネスの難しさを物語っているのだ。

こうした状況もあるのだろうか。現在、「tmall」は出店規制がかかっている。特に、化粧品、アパレルに関しては中国企業であろうとほぼ出店許可がおりない状況だ。今後の出店にはなんらかの対策が必要となる。

このまま「tmall」が勝ち続けるのか、それとも競合を含めた新勢力が名乗りを上げるのか。ますます中国ネット通販ビジネスから目が離せない。

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