高岡 正人 2015/1/15 10:00

1日の流通総額は日本円で約1兆800億円! 「独身の日」と呼ばれる2014年11月11日。アリババは1日間における流通総額で約571億元(日本円で約1兆800億円)を記録した。中国市場に進出しては撤退する動きが目立った数年前の状況は様変わりし、中国のEC市場が注目を集めている。中国ECの現場ではどのようなことが行われ、実際にECを手がけている人はどのような変化を感じているのか。中国EC市場の“今”を解説。

「独身の日」の始まりはわずか5年ほど前

「高岡さんはどんな商品を買おうと思っているんですか?」。10月末日、毎年上海オフィスでは、ネット通販店舗の画面を見ながらスタッフが浮き足立つ。こんな会話が職場で交わされる。

日本でもメディアに取り上げられ、ご存知の読者も多いと思われる中国の11月11日は「独身の日」(シングルデーとも呼ばれている)で、1年間における最大のセール日と位置付けられている。「独身の日」という名称は、「1」が4つ並んでいることがその由来だ。

私自身、日本と上海を行き来し5年になる。その頃からアリババグループのBtoCサイト「Tmall」が1年間利用したユーザーへの感謝として、ネット上でイベント化し始めた。今では「Tmall」だけではなく、中国の各ECサイトがイベントを行う“ネット通販のお祭り”の日になっている。

中国では「独身の日」に向けて予約販売を行うサイトも多い。1か月前から閲覧可能になり、3週間前には予約注文ができるようになる。10月中旬から予約販売が開始されるため、この時期におけるスタッフの昼休みの話題は、「独身の日」に何を買うかだ。

2014年のアリババにおける流通総額はおおきなインパクトとなった。1日間の流通総額は約571億元(日本円で約1兆800億円)、2013年の昨年は約350億元(日本円で約5700億円)だったことから、60%以上の成長率を記録した。(レートに関してはその当時のもの)

日本の某有名モールの最も大きな売り上げの大きなセールで、4日間の流通総額が644億円(1日平均160億円)と言われているから、その約67倍となる。最近、いろいろな場所で講演するのだが、やはりこの話題が一番反応がいい。

「独身の日」の当日はアリババ本社からテレビが生放送された。その映像がまたすごかった。大型ディスプレイに売上金額とグラフがリアルタイムで表示された。売上金額は爆発的に上がり続けている。

11日深夜0時にスタートし、2分間で10億元(約190億円)、38分間で100億元(約1900億円)、21時半くらいに500億元(約9500億円)を突破した(よくサーバーが持つなぁと個人的にはそっちも関心)。

2014年、独身の日に最も売り上げが大きかった店舗は、中国のAppleと言われている携帯端末メーカー「小米科技(シャオミー)」。1日で15.6億元(約294億円)、116万個を販売したという。1店舗だけで日本の某有名モールにおける1日流通総額の約2倍を販売しているのである。

大型ディスプレイに映されるリアルタイムの売り上げ状況

60%が「チャット部隊」からの売り上げ

エフカフェでも「Tmall」内で越境ECモデルのサイトを2014年の4月から運営している。「独身の日」には日本のサプリメントや化粧品などを数千万円売り上げ、「Tmall」のカテゴリー別ランキングで上位に食い込んだ。運営支援をしている現地中国企業も、「独身の日」の1日で月間平均売上とほぼ同金額、もしくはそれ以上を売り上げている。

売り上げのキーとなっているのは「チャット部隊」。上海に置いた当社のチャット部隊が問い合わをしてくるユーザーのニーズに合わせ、さまざまな商品をレコメンドする。実は当社のサイトでは全体売上の60%が「チャット部隊」からのもので、日本では単なる“受けの受注”も、中国では「攻めのセールス」なのだ。

そのマーケットパワーをビシバシと肌で感じる。この巨大なマーケットは羽田から飛行機でわずか3時間半の場所にあるのだ。

特にこの1年で「Tmallグローバル」という越境EC型個配サービスが開始されてからは、中国の消費者に向けてほぼどんな商品でも販売できるようになった(ただし、冷凍、冷蔵便などは物流的にまだ難しい)。

中国でネット通販ビジネスにチャレンジしようとしたことがある人はこのすごさを実感できると思う。

エフカフェがTmallグローバル内で運営する店舗

「Tmall」グローバルに出店する店舗はどこも好調

これまで中国でネット通販を行うには以下の条件が必要だった。

  • 現地法人化
  • 小売ライセンスの取得
  • 商標登録
  • 現地銀行口座の開設

商品を中国国内に輸出することが高いハードルとなっていたが、「Tmallグローバル」は個配モデルで直接個人に販売することが可能。ほぼすべての商品が販売できる。しかも、日本法人であっても出店の契約ができるのである。

現在、当社の店舗を含めて「Tmallグローバル」に数十店舗出店しているが、どこも好調だ。これまでの中国でのネット通販ビジネスが難しいという常識を覆したと感じている。商売人として、ワクワクが止まらないのは私だけではないはずである。

◇◇◇

今後この連載を通じて、みなさんに今転機を迎えている中国ネット通販ビジネスのリアルな状況をお届けしていく。

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