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この記事は『ネット通販は「物流」が決め手!』(ダイヤモンド社刊)の内容を、特別に公開しているものです。

いま、ネット通販市場が急拡大し、多くの企業が殺到している。しかし、「ネット通販に新規参入したがうまくいっていない」という相談を受けるケースも激増している。ヒアリングしてみるとそのほとんどが物流を軽視し、あるいは物流が破綻しているのである。

「ネット通販成功の鍵は物流が握っている」と言っても過言ではない。

日本通信販売協会の調査によれば、ネット通販市場はこの10年間で3兆円売り上げが伸びた。3兆円の物流がネット通販にシフトしたということだ。ところがネット通販物流という特殊な業務に関する経験則やノウハウがそれに追いついていないのが実情である。

メーカーや小売店舗向けの「B2B物流」とネット通販の「B2C物流」は根本的に違うことを認識しないまま、無謀にも事業をスタートし、うまくいかず途方に暮れている担当者がいかに多いことか…。

現在、筆者はスクロール360においてネット通販企業向けのソリューション事業を担当している。親会社のスクロールはB2C通販事業を60年にわたって手掛け、ネット通販物流にも精通している。そのノウハウを活用しネット通販企業の物流や受注、決済といったバックヤードの代行をしているのがスクロール360だ。ネット通販企業のプロモーションやオムニチャネル戦略設計のお手伝いに至ることも度々ある。

現在、ネット通販物流でスクロール360がサポートしている企業は約100社、年間の流通総額では750億円にのぼる。毎日3万5000件のB2C出荷を通販60年の経験則を生かし、正確にこなしている。

ここでネット通販の物流現場で見かける特有のトラブルをいくつか挙げてみよう。

トラブル1

ギフトで送り先が注文者と異なる場合、経験則のないスタッフがやると商品に請求書を同梱してしまうケースがある。

大切な方に選びに選んだ贈り物に請求書がついていったらどんなクレームになるかはご想像にお任せするが、ギフト出荷(送り先変更有)の伝票は通常出荷と分けて区別がつくように伝票発行しなければならない。

トラブル2

食品の出荷の場合、賞味期限の古いものから「先入れ先出し」で出荷するのが原則だが、賞味期限の違う商品を同一客に送るのはクレームを誘発する。

「なんで2個のうち1個は古いのを送ってくるの!」というクレームになる。「1個新しいのを入れてくれてありがとう!」とはならないのである。ロットをまたぐピッキングでは同一賞味期限に揃えて出荷しなければならない。

トラブル3

配達が翌週の金曜日指定の注文に対応するため伝票を先に発行し、翌週の木曜日に伝票を商品に貼付し発送したとする。

このお客様が後払いを選択しているとトラブルになるケースがある。システムの設定で伝票発行から1週間後の督促となっている場合、商品到着と同時に、後払いの督促が到着してしまうことになる。伝票発行から何日後に督促状が出る仕組みかを理解していないと、伝票の先出しはできないということだ。

ネット通販市場は1980年代の総合通販を源流とし、1990年代の単品通販、2000年代からのテレビショッピングとECを経て、クロスメディア(XM)、オムニチャネルへと大きな変貌を遂げてきた。

1980年代 総合通販躍進期 セシール、千趣会、ニッセン、ムトウ(現スクロール)1990年代 単品通販躍進期 オルビス、DHC、ファンケル、やずや、サントリーウェルネス2000年代 TV・EC躍進期 ジュピター、QVC、楽天、アマゾン、ZOZOTOWN2010年代 クロスメディア時代の到来 紙媒体×EC リアル店舗×EC TV×折込×WEB2013年~ オムニチャネル時代へ O2O クリック・アンド・コレクト エンドレスアイル1996 YAHOO!JAPAN設立1997 楽天設立 アットコスメ Eストアー設立…モール勝ち組がECをけん引2000 アマゾンジャパンオープン ユニクロ ネットショップオープン ミクシィ2005 ZOZOTOWN運営開始 アメーバ ユーチューブ ツイッター メーカー・リアル店舗とのEC強化…通販各社がネット強化2010 資生堂WEB強化開始 フェイスブック ライン…スーパー、アパレル、百貨店などリアルショップがEC参入開始…メーカー、媒体各社がEC参入
図表1 ネット通販の歴史

いまや、百貨店・スーパーの市場を追い越し、それらの流通企業と融合し、様々なデバイスの進化やSNSの普及により、さらに拡大しつつある。

業界を問わず、市場の拡大は企業の浮き沈みと表裏の関係にある。ネット通販業界においても、ここ10年間で売上高ランキングの顔触れはほとんど入れ替わった。

アマゾンや楽天がトップに躍り出るとともに、製造業や大手小売業の参入、さらにはメディア企業やSNS企業の取組みなどビジネス・スキームも多様化してきた。一方で、化粧品やサプリメントを中心とした従来からのリピート通販もシニア層に根強い人気を保ち、いまなお新聞やテレビなどのマス媒体とコールセンターを、プロモーション手段の中核に据えている。

さらに近年ではクロスメディアから発展し、オムニチャネル化が進んでいくと言われている。フェイスブックで友達が自慢した電化製品を店頭で確認し、店員に詳しく使用方法を聞き、帰りの電車の中でスマホを使って各店舗の価格比較をし、一番安かったネット通販会社に注文するといった消費行動がますます普及していくだろう。リアル店舗で成功を収めている企業も、ネット通販という選択肢を持たざるを得ないのは明白である。

その中で、「経営視点で物流を組み立てることができた企業」こそが、この乱世を生き残る資格を得ることになる。

ネット通販の物流というと、「倉庫でピッキングして梱包して宅配会社に引き渡す」ということをイメージしがちだが、最も大切なことは経営視点でビジネス戦略とロジスティクス戦略をつなぐことだ

「物流コストさえ下がれば良い」と考えているネット通販企業の経営者は多い。ところが、物流コストを削りたいがために、過度に在庫を減らし、注文受付後に商品を手配するという方式を採り、商品発送までのスピードが悪化し、顧客サービスも悪化、結果として売上が低迷しているケースがある。逆に欠品を恐れ過度に在庫を積み上げたために、資本の回転率が落ち、キャッシュ・フローが悪くなるケースもある。

ネット通販物流には特有のノウハウがあり、それは数々の失敗を経験して初めて身についていくものだ。それを総合的かつ体系的に学べるような場所は存在しない。

これが本書を上梓する最大の動機である。10万社を超えるといわれるネット通販事業者の物流品質を上げることに少しでもお役に立ち、それがネット通販市場の更なる発展に繋がればと思っている。

 

本書は6章からなる。

第1章では、ネット通販物流を理解する以前の問題として、ネット通販業界の状況と参入企業の様々な失敗例を紹介する。

第2章では、経営視点でのロジスティクス戦略の組み方を取り上げる。物流についての理論はいろいろ提唱されているが、世界的に評価が高く実際の成功事例も多いのが、米国のエドワード・H・フレーゼル氏が提唱している「RightChain®」だ。

「RightChain®」の基本的な考え方を紹介するとともに、その枠組みを通してネット通販物流のあり方、またスクロールのロジスティクス戦略を整理してみる。

第3章では、ネット通販における物流業務の基本知識および商材別のポイントをまとめた。

第4章では、ネット通販事業の経営判断に欠かせない物流KPI(Key Performance Indicator)を紹介する。

第5章では、物流改革により大幅な売上アップを果たしたネット通販企業の成功事例について紹介する。

最後に第6章では、これからの時代のネット通販物流を展望する。

 

本書の主張はシンプルかつ明確である。

物流こそネット通販における成功の鍵を握っている

物流においてこそ他社との差別化をはかることができる

ということだ。

本書を通読することで、ネット通販における物流とはどのようなものか、自社の商品や事業モデルに適した物流の仕組みをどのように構築すればよいか、物流における各種数値をいかにして日々の経営に生かすのか、様々なヒントを得られるであろう。

本書によって多くのネット通販企業がそれぞれ最適な物流戦略を見出されることを期待している。

100%確実に売上がアップする最強の仕組み

ネット通販は「物流」が決め手!

高山 隆司 著
ダイヤモンド社 刊
価格 1,620円+税

34年に渡って通販に携わり、200社以上の通販企業をサポートしてきた「物流のプロ」が、物流KPIでの経営改善、オムニチャネルまで、ノウハウを解き明かす。ネット通販経営者必読の書!

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高山 隆司

株式会社スクロール

高山 隆司(たかやま・りゅうじ)

株式会社スクロール360 取締役

1981年株式会社スクロール(旧社名株式会社ムトウ)に入社後、新規通販事業の立上げ、販売企画、INET戦略策定を経て、2008年に株式会社スクロール360の設立に参画。以来、多くの企業の通販事業の立上げ、EC戦略策定、物流立上げを経験。現在、スクロール360では300社のEC通販企業のサポートを行なっている。

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