「EC運営は総合格闘技」。ネッ担アワード2024「ベストチーム賞」に輝いたマドラス丸山堅太氏に聞く最強のチーム作り

EC業界で活躍する個人の活躍や、次世代のEC人材のロールモデルとなる人物を表彰する「ネットショップ担当者アワード」で、2024年に「ベストチーム賞」を受賞したマドラスの丸山堅太氏は、老舗革靴メーカーでデジタルシフトに取り組み、EC事業を成長させているチームのリーダーを担う。丸山氏による受賞の所感、店舗との連携を意識したEC運営、ECの成長を実現するチーム作りまで、アワードの選考委員を務めた逸見光次郎氏が詳しく掘り下げる。

ネットショップ担当者アワード2024 「ベストチーム賞」受賞

日本オムニチャネル協会 理事
「ネットショップ担当者アワード」選考委員
逸見 光次郎 氏
11月6日(木)、第3回「ネットショップ担当者アワード」授賞式を開催します! 東京・赤坂インターシティAIRにて14時25分から開会。参加無料(事前登録制)です。ふるってご参加ください! ★第3回授賞式・受賞者の詳細はこちら:https://netshop.impress.co.jp/award/2025/ceremony |
「ベストチーム賞」受賞の所感
逸見光次郎氏(以下:逸見氏):「ベストチーム賞」受賞の所感は。
丸山堅太氏(以下:丸山氏):受賞は率直に光栄。2023年の「ネットショップ担当者アワード」授賞式を客席から観覧したこともあり、翌年の2024年に自分が表彰式に立つことになったことは嬉しい。
「ネットショップ担当者アワード」の賞のなかで、一番獲得できたら嬉しいと思っていたのが「ベストチーム賞」だった。ECは自分一人で運用できるものではないから、メンバーのおかげでビジネスがスケールしているのを日々実感している。

老舗小売店だからこその苦心
逸見氏:マドラスは総合100年を超える老舗企業。だからこそ、ECは難しかったはず。会社内でのECの立ち位置、店舗の売り上げとの兼ね合いといった部分があり、そこをクリアしつつ成果を出していくのは並大抵ではないはず。
ECは総合格闘技。誰か1人が突出していてもうまくいかない。企業規模と歴史があり、社内外でさまざまな人を巻き込まないといけないマドラスのなかで、丸山さんの配下ではしっかりとしたチームができているのはすごい。

受賞が今後のビジネスに波及
逸見氏:会社に「受賞した」と認識されて社内のサポートが手厚くなることもあるのでは。EC業界で活躍するプレーヤーの後押しになることも「ネットショップ担当者アワード」を創設した狙いの1つ。アワード受賞の反応はどうだったか。
丸山氏:「こういう努力をしている」「ECチームにこういうプレーヤーがいる」というのを社内で話すきっかけになった。
また、BtoBのお客さまからも反響があったと聞いている。受賞を知っていて、「マドラスでECの賞をとった方がいてすごいですね」という話をセールスにふってくれた。この「ネットショップ担当者アワード」はデジタルに携わる人はチェックしている人が多いし、受賞が今後のビジネスにもつながっていく実感がある。
EC業界で活躍する個人にフォーカスする「ネットショップ担当者アワード」は、受賞者にとっても有意義だし、客席から表彰式に参加し観覧するだけでも、さまざまな受賞者によるEC事業での注力点やキャリアの変遷がわかり、学びがあると思う。自身の事業運営のヒントや、キャリアパスをイメージする機会になるのでは。関心がある人はぜひ関わってほしい。
ECリーダーとしての成長
逸見氏:丸山さんはもともと、マドラスでは店舗のセールス出身。そこからEC課課長に抜てきされたという経緯だが、自身がEC販路にチャレンジすることに対して「難しい」という感覚はあったか。
丸山氏:実はなかった。店舗にいたときから「お客さまの動きをデジタルで観測したい」という気持ちを持っていた。そんななかでコロナ前後で世相の流れが大きく変わり、デジタルシフトが進んだとも感じていた。
逸見氏:その感覚があったから、スムーズにECの担当者になれたのかもしれない。
丸山さんのような人材を外から連れてくるのは難しい。企業がEC部門を成長させようとする場合、外部からの人材を招へいするよりも、社内の人材を育てるのが最適解だと私は考えている。自社の商品知識や、業界独自の商習慣も理解できているからだ。
丸山さんがECへ異動したのは青天の霹靂(へきれき)だったかもしれないが、もともとECへの興味があり、マドラスの企業文化をよく理解できていたという土壌があることがプラスに働いた。
次世代のEC人材、ECチームを育てるために
逸見氏:ECの人材育成、チーム育成に関して丸山さんの意見を聞きたい。
丸山氏:チームメンバーは可能な限り社内の人材で醸成することが必要だと考えている。社内との関わりやコネクションが薄い社外からの人間だと、別の部署に相談ごとをしたいときに社内でハレーションが起きやすいからだ。実際、チームは社内の人材で醸成しており、メンバーには部署横断で話をするよう促している。
商品のマスター登録1つとっても、企画部、商品部に確認をするし、コミュニケーションはメールではなくできるだけ直接話をしてもらうようにしている。
たとえば、SNSや動画の知識が薄い店舗スタッフを、EC部門のスタッフが手伝ってもいいはずだ。社内にもECの文化や関連スキルを浸透させていきたい。
数字にとらわれすぎない風土作り
丸山氏:逸見さんが先ほど触れていたが、デジタル側からの店舗側との調整や、社内に「ECチャネルをわかってもらう」というハードルはマドラスにもある。
それを乗り越えるための具体例として、バニッシュ・スタンダードが手がける、店舗スタッフによる自社ECサイトやSNS上でのオンライン接客を可能にするDXツールを導入し、店舗の店長とその運用を毎月話し合っている。
このとき私が重要視しているのは、ハウツーや売上アップの話はしないこと。店長とは“顧客にもたらすメリット”といった、概念的な話をしている。単に数字を求めてしまうと「やらされている感」になるからだ。
導入1年後、良い変化が現れた。店舗でDXやオムニチャネルを推進するスタッフや、「デジタルを使って顧客に直接連絡を取りたい」と申し出るスタッフが出てきた。
逸見氏:ただやらせるのではなく、概念を伝えようとするのは正しい。理解できれば「どう使おうか」という前向きな考えになる。
丸山氏:店舗スタッフにも成長機会を与えられたことが、結果として会社全体のDXにうまく作用していると感じる。
良いECチームを作るリーダー像
心がけは「提案しやすい空気」「率先垂範」「社内外のハブ」
逸見氏:マドラスの社内にDXが浸透しているのは、丸山さんという店舗を経験してきた人材がいるECチームだからかもしれない。そんな丸山さんが考えるチームのリーダー像は。
丸山氏:意識していることは3点。1つ目は提案しやすいチームの空気感作り。
2つ目は新しいツールやサービスへのアンテナを高くはり、できるだけ率先して触って使う。それをチーム内で共有する。
3つ目は社内外ともに調整や打ち合わせは自分が積極的に関わりハブになることだ。
逸見氏:まさに“率先垂範”のリーダーだと思う。リーダーはチームの話を聞いてどう動くか、あるいは動かすかが肝心だが、丸山さんはどうしているのか。
丸山氏:基本的には、スタッフのやりたいように走らせてみる。ただ、期限は決めてもらうようにしていて、事後のフィードバックをチーム全体に共有させている。
めざすは実店舗との連携強化による満足度アップ
逸見氏:ECのリーダーとして、企業が顧客と距離を縮めるためのEC/デジタルと店舗の使い方を聞きたい。
丸山氏: 2025年中にやりたいと思っているのが、直営店とECで構築している会員プログラムのリニューアル。リアルとの接点がある場合の継続率は高い。靴は特にその傾向があり、フィッティングやブランドの世界観を気にする顧客が多い。そのような強い顧客体験を追随できる会員プログラムにしたい。
たとえば、ECで注文を受けた商品の店舗受け取りにも対応するなどして、顧客の満足度をさらに高めたい。他にも来店予約、店舗での返品受付といったビジョンがある。
逸見氏:ECをやる人はその商売をよく知っていないといけない。商売の現場にいた経験がある丸山さんのような人がECチームのリーダーを務めるのは大きなメリットだ。
11月6日(木)、第3回「ネットショップ担当者アワード」授賞式を開催します! ★第3回授賞式・受賞者の詳細はこちら:https://netshop.impress.co.jp/award/2025/ceremony |