「ちいかわ」などのIPビジネスでEC売上高50%増。グレイ・パーカー・サービスの責任者が語る成長要因
キャラクターグッズ制作のリーディングカンパニーであるグレイ・パーカー・サービスのEC事業が伸びている。2025年5月期のEC売上高は5割増。外注業務の内製化によるコスト圧縮、物流移管に伴うインフラ強化、注文集中時の決済待ち時間を最大5分の1に短縮したシステム活用など増収に貢献したという。2023年入社以来、デジタル戦略を一手に担ってきた小林辰也部長に話しを聞いた。
本記事で「フラッシュセール」とは、ECサイト上で短時間に注文が殺到し、集中する現象を指します。大幅値下げで販売する従来のモデルとは異なります。

グレイ・パーカー・サービス WEB事業部 部長 小林辰也氏。2023年にグレイ・パーカー・サービスへ入社。同年、「ちいかわマーケット」公式LINEアカウントを立ち上げ、友だち数500万人を達成。翌2024年にはWEB事業部次長として組織改革と物流移管プロジェクトを推進。現在は部門責任者として、全12ECサイトの運営とマーケティングを統括している。
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EC売上高50%超アップ。IPビジネスを幅広く展開
――SNSを中心に、継続的に高い人気を得ているキャラクター「ちいかわ」。いわゆるIPビジネスとして、その公式オンラインストア「ちいかわマーケット」の運営をグレイ・パーカー・サービスが担っている。運営を開始したのはいつからか。
グレイ・パーカー・サービス 小林氏(以下、小林氏):「ちいかわマーケット」の開設は2020年12月。それ以来、運営を担っている。また、グレイ・パーカー・サービスでは「ちいかわ」のほかにも、さまざまなIPキャラクターの公式グッズを販売するECサイトを運営している。取り扱っているIPは「mofusand(モフサンド)」「コウペンちゃん」「ホワイトタイガーとブラックタイガー」などだ。
――小林氏が管掌する業務は。
小林氏:2023年に入社し、現在は「ちいかわマーケット」など12のECサイトの運営とマーケティングを統括している。運営するECサイトのなかでも、「ちいかわマーケット」のEC成長の伸びやファンからの反響は特に目を見張るもので、近年のEC事業の成長をけん引している。
小林氏:自分はこのほか、「ちいかわマーケット」で新規層へのアプローチを目的に公式TikTokアカウントの開設を推進。2025年6月に開設し、開設後1か月で2.5万フォロワー、50万回再生を達成した。

――EC事業の近年の実績について聞きたい。
小林氏:EC事業の売上高は、2025年5月期に前期比50%超アップの成長を達成した。直近3年ほどこのペースで右肩上がりに成長している。この急成長を可能にしたのは、キャラクター人気の波を逃さない、堅牢なインフラと運営体制の構築があげられる。
ECの成長を支える内製化戦略
「ちいかわマーケット」を支える超フラッシュセール対応体制
――「ちいかわ」などの人気キャラクターグッズは、発売と同時に注文が殺到するエンタメEC特有の波動がある。EC事業が驚異的な成長を遂げた背景には何があるのか。
小林氏:業界全体でこうした波動への対応は課題になっているなかで、ECが成長しているのは強固なシステム基盤の選定と活用、綿密なシミュレーションと検証を経た運用体制の強化があげられる。
――具体的にはどのようなシステム運用をしているのか。
小林氏:最も注力したのは、爆発的な注文の急増に耐え得るシステム運用だ。特に、ユーザーが商品を選び、決済に至るまでの待ち時間(queing time)を従前の最大5分の1に圧縮した点が大きい。これにより、ユーザーの離脱を大幅に防ぎ、機会損失を最小化できた。

――従前の課題は。
小林氏:従前は、注文集中とBotによる不正アクセスでトラフィックが急増し、システム保護のための「決済待機列」が長くなることが常態化。これが大きな課題だった。
プラットフォームにはもともと、Botなどの不正アクセスを防ぐ仕組みが備わっていた。しかし、対策を強化すればユーザー体験やCVRに影響が出る懸念もあった。そこで、何度も綿密な検証とシミュレーションを重ねながら最適なバランスを模索。その結果、アクセスが集中するピークタイムでもスムーズな決済を実現し、決済完了までの待機時間を大幅に短縮することに成功した。
また、いわゆる「転売屋」による不正な買い占め行為の抑止にもつながった。人気キャラクターのグッズ販売という特性上、このユーザー体験の改善が、売り上げの増加に寄与している。
内製化によるコスト圧縮と物流改革
――小林氏が着任後、ECの運営に関連する業務はすべて外注していた体制を内製化へ切り替えた。
小林氏:外注に頼りきりだったEC運営業務、カスタマーサポート業務の内製化を推進した。EC運営におけるコスト効率化と意志決定のスピードアップ、運営ナレッジの蓄積が内製化の狙いであり、成長を支える鍵になっている。
従前は、サイト運営やシステム開発、フルフィルメントをすべて外部ベンダーに頼っていたため、新しい施策の実行やトラブル対応に時間がかかっていた。
すでに3ストアの運営を内製化に切り替えており、その実現により年度外注コストを大幅に圧縮でき、利益率も改善している。
――システム活用以外で注力したインフラ面での取り組みはあるか。
小林氏:toB向け、toC向けともに、物流倉庫の移管を発案・実行した。組織改革の一環として物流体制を見直した結果、年度物流コストを大幅に圧縮できた。納期のスピードアップや正確性といった物流インフラの改善は、顧客満足度や売り上げに直結する。
倉庫の完全移管の前段階としては、注文急増時に対応すべく、複数倉庫併用による分散出荷体制を導入。導入以後、店舗起因による出荷遅延発生件数はゼロになった。
倉庫移管前は、新商品発売のたびに出荷の遅延が発生していた。既存物流の課題であったコストと品質の改善に向けて取り組み、2025年10月現在は倉庫移管を完了。拠点集約によりコストと運用効率が改善され、出荷能力も向上している。

EC業界でのキャリアを生かした活躍
――小林氏が築いてきたEC業界でのキャリアを教えてほしい。
小林氏:現在は事業会社側にいるが、もともとEC業界ではベンダー側が長かった。たとえばECモールのカスタマーサクセスや運営代行、ECコンサルなど。エンタメ業界、IPビジネスならではのEC運営は特殊な一面もあるが、ECのプレイヤーとして運営するのは素直に楽しい。ベンダー側にいたときに培ってきたECビジネスの経験や知見も生きていると感じる。
――現在のECビジネスの運用やチームマネジメントにも生きている。
小林氏:運営にあたっては、予実管理の可視化・効率化に努めている。各ECストアの担当者に数字の意識を徹底させ、在庫発注や告知などのPDCAアクションの高速化を意識しており、このことが予算の大幅な達成にも寄与している。
チームマネジメントにおいては、役割分担の明確化、週次定例会の実施、部内評価制度の導入、半期ごとの1to1ミーティングなどを実施。メンバーのモチベーションとスキルアップにつなげている。
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