EC経験ゼロから老舗企業のEC責任者へ。靴ECで実店舗・卸との“共存”を進めるマドラス・丸山課長の挑戦
百貨店セールスからいきなりEC課の責任者に抜擢――。老舗革靴メーカーとして知られるマドラスでリテール事業部EC課 課長(紳士担当)を務める丸山堅太氏は、ECの運営経験がゼロからEC課の責任者として老舗企業のEC改革のけん引役となった。そんな丸山氏に、自身が率いるECチームがこれまでに取り組んできたことや、チャレンジを聞いた。
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丸山氏率いるEC課が老舗靴店の挑戦をリード
ブランドサイトとECサイトを統合
――マドラスの事業内容とEC販路の変遷を教えてほしい。
マドラス 丸山氏(以下、丸山氏):マドラスは靴の製造・卸・販売を行っており、主な販売チャネルは直営店舗、直営EC、ECモールへの出店、卸売り。自社工場におけるOEMの受託生産にも対応している。業績は非公開だが、全社的な売上状況はコロナ禍に少し落ち込んだものの、アフターコロナの売り上げはコロナ禍以前に近い規模まで回復傾向にある。
EC売上は前年比1ケタ台の増収。アフターコロナでは、2022~2023年のEC売上は約10%増となった。ブランドサイトとECサイトの統合により、2021年は自社ECサイトへの流入数が伸びたためだ。1つのサイトに統合して、顧客がブランドや商品の詳細など多くの情報を見ながら買い物できるようにした。
EC経験ゼロからの挑戦
――丸山氏が率いる課がマドラスのEC事業の成長をけん引している。チームとしての実績や魅力を教えてほしい。
丸山氏:2021年5月に実施したブランドサイトとECサイトの統合のほか、2021年1月に実施したサイトのリプレイスなども担った。サイトリニューアルにともない、実店舗とECサイトの会員データを統合。これにより、2024年は2019年と比較して会員数が137%増加した。また、サイト統合後、自社ECサイトへの流入数も増加。統合前の2020年と比較して約3倍近く伸長した。
その他、自社物流の最適化、自社ECサイトと外部モールの在庫共通化など、さまざまな取り組みを実施した。
いま振り返ると、サイトの統合やリプレイス作業を遂行するのはとても大変だった。自分をはじめ、メンバー全員のEC運営経験が十分ではなかったからだ。
チームの良いところは、さまざまな意見が出やすいところ。メンバーの年齢は20~50歳代と幅広い。人数は現在、自身を含めて8人で男女比は半々くらい。チーム内で出された意見に対しては極力ノーと言わず、受け止めて施策に落とし込むようにしている。
自分がEC課に配属された当初、社内にECに関するノウハウはほとんどなく、もちろん自分もチームメンバーもゼロだった。EC課では自分を筆頭に、ノウハウを積極的に学ぶことはもちろん、実際にECを運営している人がどのようなことを実践しているのかを知るために、外部セミナーへの参加やコネクション作りにも務めてきた。
――EC課に異動となる前の経歴は。
丸山氏:自分はセールス部門の出身。2012年にマドラスでアルバイトを始めて、2013年に新卒で入社した。百貨店セールスを担当していたが、2020年にEC課の課長に抜擢され、異動となった。
ECの経験がないなか、ECチームのマネージャーと言える役割にいきなり抜擢されたのは自分のなかで大きなチャレンジだった。このような人事異動は社内に前例がない。
そのなかでECのリプレイス、ブランドサイトとECサイトの統合、新たなEC支援ツールの選定・導入に奮闘してきた。個人としてももちろん挑戦だったし、老舗靴店のマドラスにとっても大きな挑戦となった。
リアルとECの架け橋になることを意識
――EC課での自身の役割を教えてほしい。
丸山氏:主な業務はEC事業の管掌だ。年間販売計画や施策の立案、コンテンツの更新まで、広く携わっている。カートベンダーなどマドラスが関わりを持つEC支援事業者とのやり取りも自分が対応しており、新たなEC支援ツールを選定する際にも自分が判断している。
――マドラスは長らく、店舗での販売や卸売りを重点としてきた。リアル店舗とECの共存についてどのような考えを持っているか。
丸山氏:リアル店舗とECの共存は必須だと考えている。たとえば、シューズのフィッティングはECでは難しい。従前のマドラスは店舗側の運営チームとECチームはあまり干渉し合うことがなかったが、自分はリアル販路とEC販路の「架け橋」になれるよう率先して動いている。
この連載では、通販・EC業界の発展に貢献する「人」を顕彰する「ネットショップ担当者アワード」(2024年11月20日に第2回授賞式)受賞者にインタビューを実施しています。本記事でとりあげた丸山氏がどのような賞を受賞するかは授賞式当日に発表します。授賞式にぜひご参加ください! 参加無料・事前登録制にて、あなたのお申し込みをお待ちしています。