「ベストパーソン賞」「ベストBtoB-EC賞」第1回受賞者が振り返る「ネッ担アワード」受賞後の変化。社内外に与えたポジティブな影響とは?
EC業界で活躍する「人」に焦点を当て、企業や団体などで活躍する個人の功績や取り組みを表彰する「ネットショップ担当者アワード」で、2023年に「ベストパーソン賞」を受賞した集英社ブランドビジネス部 部長 兼 第10編集部 部長の湯田桂子氏、「ベストBtoB-EC賞」を受賞したアズワン DX推進部長の中野裕也氏(肩書きは現在、受賞当時はeコマース本部 UXデザイン部長)に、「ネットショップアワード」受賞後の反響や、2024年11月に実施する第2回のアワード開催に向けたメッセージをうかがった。
第1回で選出した賞と選考基準
- ネットショップ担当者アワード賞(MVP):「月刊ネット販売」発行『第23回ネット販売白書』の売上高上位200社を参照し、伸長率、個人の実績などを考慮して選出
- ベストパーソン賞:個人でほかのEC事業者のロールモデルとなり得る人を選出
- ベストBtoB-EC賞:BtoB-EC領域で、個人、チームなどでほかのEC事業者のロールモデルとなり得る人を選出
- ベストチーム賞:チームでほかのEC事業者のロールモデルとなり得るチームを選出
「ベストパーソン賞」「ベストBtoB-EC賞」受賞者の特長
湯田氏は出版社ならではの強みを生かしたアパレルECをけん引
「ベストパーソン賞」は集英社 ブランドビジネス部 部長 兼 第10編集部 部長の湯田桂子氏を選出した。ファッションECサイト「ハッピープラスストア」などの通販事業を手がけるブランドビジネス部で事業をリードしている人物。湯田氏がけん引するブランドビジネス部は、「出版社ならではのコンテンツ力」「データを活用した『届ける力』」の掛け合わせで、EC事業ではヒット商品を創出し続けている。集英社の2023年5月期EC事業売上高は、前期比11.5%増の58億円だった。
中野氏、田中氏は前期比18%増のBtoB-ECをリード
「ベストBtoB-EC賞」は、「科学機器」「産業機器」「医療・介護」をメイン事業分野とする専門商社のアズワンから、中野裕也氏とeコマース本部 BPO推進部 部長の田中達朗氏がダブル受賞。授賞式の出席および本取材のインタビュイーは中野氏が務めた。
アズワンは紙媒体による法人取引から、EC化を堅実に進めている。2022年度のEC事業売上高は前年度比18.4%増の240億7500万円に成長。中野氏、田中氏はユーザー企業における購買活動のデジタル化を進めている。
受賞後は「モチベーションアップ」「株主報告資料にも掲載」などポジティブな影響
――受賞後の社内での影響について教えてほしい。
集英社 湯田桂子氏(以下、湯田氏):報告した部署は結構な大人数なので、トロフィーを見せたときは皆すごく喜んで祝福してくれた。報告した部署は全体で約100人の規模。部署のモチベーションもアップしたし、マーケティング担当者が「『ハッピープラスストア』という名前を多くの人の場で発表する機会がいただけた」と喜んでおり、さまざまな面で意味のある受賞だったと思っている。
アズワン 中野裕也氏(以下、中野氏):アズワンでは社長に毎月、各本部の幹部が当該月の報告をする機会があるが、そこで受賞時のトロフィーを見せたところ社長がすごく喜んでくれた。そこで「せっかくだったら受賞のリリースを出そう」という話になりIRからリリースを発信したので、社内外にも広報されたし、何より社長が「当社のレピュテーションバリューの向上につながる」と喜んでくれたことが自分としてはうれしかった。
株主には毎年6月の株主総会の開催案内を送付しているが、そこにも前期の実績として受賞した時の写真を掲載したので、株主へのPRとして利用できことも良かった。
中野氏:BtoB-EC事業者はアスクルさんやモノタロウさんといった大規模の事業者があるなかで、アズワンが展開する「AXEL(アクセル)」は専門性が高く、少しなニッチなBtoB-ECサイトだと思っている。そんななかで評価され、「BtoB-EC賞」を受賞したと言うのは、社内的にも励みになった。
アワードでは「人」にフォーカスというコンセプトということで2人で受賞したが、顕彰は部署として評価してもらえたと思っているし、社内的にもそういう捉え方になっている。
昨今、BtoB-ECに関して登壇の依頼を受けることが増えた。受賞したことがきっかけになっているのかもしれない。今後は下の世代にも外部に露出する機会をバトンタッチしていきたいと考えている。
湯田氏:集英社では個人にスポットを当てて発信することが会社で例がなく、「ベストパーソン賞」を受賞したことの対外的なPRはしなかった。手がける媒体の編集長としての露出以外はあまり行っていない。
受賞で人的交流の幅が拡大、会社の認知度向上にも貢献
――受賞して良かったことを教えてほしい。
湯田氏:名前は知っていたけれども直接お会いする機会がなかった選考委員の方々と会えたこと、特に、選考委員の1人であるスマイルエックスの大西理さんから推薦してもらえたことや交流を持てたこと、個人的につながりが持てたことは非常に光栄だった。また、部署のメンバーと一緒にECの難しさや面白さを聞くことができたことは有意義だったと思う。
中野氏:業界でよく名前を見かける人、選考委員の逸見光次郎さん、大西理さん、中島郁さん、石川森生さんたちに名前と会社名を認識してもらえたことが大きいと思っている。
業界内のいろいろなイベントに参加しているが、参加者と交流する際に自分がアズワンと社名を名乗っても、どのような会社かご存じでない人が9割ぐらい。ニッチな会社だが、受賞をきっかけに多少は覚えてもらえたと思う。
別のイベントで逸見さんとご一緒する機会があったり、中島さんとも別のイベントでお会いしたり、EC業界の横のつながりというか、「ネットショップ担当者アワードを受賞したアズワンの中野です」ということで、わかりやすくつながりを持てるようになったのは良かった。
ECは横のつながりが多い業界。授賞式や、受賞の掲載記事を「見ましたよ」と連絡をもらえたこともあり、うれしかった。
積極的にチャレンジして評価されることはECの成長につながる
――「ネットショップ担当者アワード」はEC業界で活躍する「人」を増やす、光を当てるなどの目的で開催している。受賞者として、ECの現場で汗を流す担当者や責任者にメッセージをお願いしたい。
湯田氏:EC業界で活躍する人材として知名度を上げたり、信頼度をアップさせる意味でも露出が重要だと思う。アワードに応募し、受賞者に選ばれて、名前を認知してもらうことは意義のあることだ。私自身、身に余る賞をいただいて本当に感謝しているし、それによって集英社のEC事業の本気度が伝わって、良い人材が集まってくれることに期待している。
自分は編集の仕事に長く携わってきた。受賞したのがECの仕事に就いて1年目だったので、新任の部長としてチャレンジしつつ、わかっていないことが多くて大変な思いもし、人にも苦労をさせてしまったと思う。そんなタイミングでの受賞だった。
集英社の「ハッピープラスストア」というECサイトの知名度はまだまだ高くない。それでも長い年月をかけて年間50億円を売り上げているショップだ。もっと誇りを持って良いと思っているし、そのための努力も常にしており、良い人材に事業にジョインしてもらえたらうれしいと思っている。
中野氏:知り合いや知識を増やすという意味で、業界内で名前を売る意味はあると思う。社外のセミナーに登壇する、メデイアで取り上げられるといったことは、自社サイトの認知拡大につながり、ひいてはSEOにも良い効果をもたらすそうだ。
ECの売り上げにつながることを考えると、自分が前に出て会社やサイトについて話すことが自社ECの成長につながると社内でも伝えている。機会があれば積極的にチャレンジして、評価されることでECの成長にもつながる。
広い視野を持つ人材に魅力
――湯田さんにお伺いしたいが、社内でECの人材を育成するために心がけていること、取り組みがあれば教えてほしい。
湯田氏:EC事業の運営はチームワークがとても大切だと思うが、各領域の専門分野があるのでどうしても縦割りになりやすい。優秀な人も目の前のことに没頭するあまり、当初の目的があいまいになりやすいと感じる。
出版社ならではのECに魅力を感じて集まってくれた人たちも、「何のためにその仕事をしているのか」「出版社としてのECの強みは何か」「コンテンツを届けて売る」という仕組みを常に考えていかないと目的がぼやけてしまう。
人材活用や育成にあたっては、課題から遠く離れないように確認し、広い視野で事業を見渡しながら目の前のことに取り組める人になってくれるようにと、常に声がけしている。
横のつながりや人材ネットワークを大切に
――中野さんにお伺いするが、BtoB領域で事業運営のセンスを磨くためのポイント、自身が平素心がけていることを教えてほしい。
中野氏:自分はBtoB-EC業界の横のつながりを大事にしている。BtoBはBtoCと比べると領域が狭い。BtoB-ECを運営している各事業者はライバルでもあるが、われわれがそこに商品を供給して売ってもらう仲間でもある。
たとえば、自社ECとしては競合だけれども、サプライヤーとしてのアズワンだとお客さまだったりする。そういう意味では、横のつながりが大切になってくる。同じ業界だからこそわかりあえる苦労話があることもある。
困ったときに悩みを相談したり、さまざまなことを聞けたりするような業界内の人を増やして、「つながっていこう」という努力はしているし、それが実際に役に立っていると感じている。
デジタルマーケティング業界のイベントにも積極的に参加するようにしている。EC全体の今の流れを知る意味では、オフラインでいろいろなイベントに行って交流を持つことが意味があると思っており、積極的に参加するようにしている。
受賞者アフターインタビュー「後編」では、第1回「ネットショップ担当者アワード」で栄えあるMVPを受賞したマッシュスタイルラボのEC事業本部 EC事業部長の今井貴大氏と、「ベストチーム賞」を受賞した大網のあみあみ事業部から、代表で授賞式に登壇したあみあみ事業部マーケティング部課長の小林裕児氏がインタビューに登場。こちらもチェックしてほしい。
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