高岡 正人 2015/7/6 9:30

アリババグループが運営する「Tmallグローバル」や京東商城の「JDworldwide」など、越境ECの形で中国EC市場に参入するルートが確立されてきている。とはいえ、販売の方法に一定の制限があるモールよりも、自社ドメインでECを行いたいというニーズを持つ日本企業は少なくない。ただ、そうしたニーズに対応するのは現状では難しいと言わざるを得ない。

サーバーを置く場所それぞれで困難が待ち受ける

最近よく相談を受けることがモールへの出店ではなく、中国向けに自社ドメインでECを展開したいという話である。結論から言うと自社ドメインではなく、モールでの展開をお勧めしている。

自社ドメインの場合、方向は大きく2つある。

  1. サーバーを日本国内に置く
  2. サーバーを中国国内に置く

1. の場合、キーとなるのは、

  • プロモーション
  • 決済
  • 物流

の3点。特にプロモーションに関しては中国国内のユーザーへのアプローチはそう簡単にはいかない。微博(ウェイボ)のような中国版ツイッターや微信(ウェイシン)などの中国版LINEなどを使い、これまで日本企業がチャレンジをしているが、大きく成功しているサイトはまだ存在しない

2. の場合であれば、

  • 中国法人を設立
  • 中国に銀行口座を持つ
  • 商品在庫も中国へBtoBで輸出する

といった必要がある。その場合、最低でも3000万円(会社設立の資本金、オフィス家賃、倉庫費用、人件費など)ほどの初期投資が必要になる。

営利ICPライセンスは取得がほぼ不可能

さらにそれ以上に2のパターンで大変なことが「営利ICPライセンス」の存在だ。

中国国内でサイトを構築した場合、ICPライセンスを取得する必要がある。ICPライセンスには2種類あり、「営利ICPライセンス」と「非営利ICPライセンス」がある。

たとえば、コーポレートサイトの開設には「非営利ICPライセンス」が必要となる。非営利の場合は、簡単に取得でき、特に問題はない。

大変なのは、「営利ICPライセンス」の取得だ。そもそも日系企業を含め、外資企業は取得ができない。内資企業であっても、取得は相当困難だと言われている。

実際、日本で有名なアパレルブランドが展開している中国のECサイトもトップページは自社ドメインだが、商品カート以降は、Tmall(天猫)のドメインに移動するような構成になっている。

上記のような背景もあり、中国ではネット通販の流通総額のうち、Tmall(天猫)を始めとするモールサイトがマーケットシェア全体の90%を占めている。

中国ECのモールと自社サイトの売り上げ比率

商品検索はモール内検索が大半

また日本の場合、商品検索は検索エンジンやモール内検索などいくつかに分散しているが、中国はそうではない。ユーザーの多くはモバイルではモールアプリなど、まずはモール内の検索サービスで自分の欲しい商品を検索し、その後、購入する文化になっている

タオバオのモバイルアプリ

自社ドメインでの出店成功の難しさはそこにもあり、そもそも検索エンジンでの商品検索が少ない中で、自社ドメインに誘導することは至難の業ともいえる。

この記事が役に立ったらシェア!
これは広告です

ネットショップ担当者フォーラムを応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]

[ゴールドスポンサー]
ecbeing.
[スポンサー]