地上デジタルテレビの反動で、売上高が1170億円に激減したジャパネットたかたの2012年12月期。高田明氏は「(2013年12月期に)過去最高の経常利益を達成しなければ社長を退任する」と明言した。結果として、2013年12月期の売上高1425億円、経常利益は過去最高となる150億円を計上し、社長職を継続した。そして2016年1月15日、最後となるテレビショッピング生放送の生出演を終えた。

一見順風満帆な事業成長を遂げているように見えるジャパネットたかただが、外部環境の変化が逆風となることもあった。浮き沈みも味わった当時を振り返る。写真は浦川祐史(うらかわスタジオ)

ジャパネットたかた創業者の高田明氏が語る「モノ売りが大切にすべきこと」(前編)はこちら

生き残るためには変化を創り出す、変化を創造するということが重要

――2012年から2013年にかけては厳しい時期がありました。その経験は大きなものになったのでしょうか。

2013年は前期と比べて売上高は600億円程度下がりましたが、一度も心配したことはなかった。私自身がめざしてきたことは、売り上げでも利益でもない。日々の結果なのです。だから、良いこともあれば、悪いこともある。そんな考えで、過去最高の経常利益をなぜ計上できたのか? と思いますよね。

そのとき思ったのが、「1000人もいる社員はやっぱりめざすものが必要だろう」ということ。それが、「過去最高の経常利益を計上できなかったら社長を退任する」という発言だったのです。

私はプロセスを大事にしたいと思う人間です。社内では「売り上げ目標を立てなさい」といいますよ。でも、それはどうでもいいこと。私が辞めると明言したときは、「社員全員で一緒に何かへ向かってやることに重きを置いた」んですよ。結果は良しなりましたが、結局はプロセスを重視すれば、結果が付いてくるんだと思いますよ。

結果として、過去最高益を計上した後に「2年で社長職を辞める」と公表し、2015年1月に退任。全権を長男(旭人氏)に任せました。2016年1月でテレビ出演も終わり、と社員には伝えています。

ジャパネットはなぜ売れるのか 高田明氏が明かすモノ売りの神髄①
高田明(たかた・あきら)氏
1948年、長崎県平戸市生まれ。1971年、大阪経済大学経営学部卒業、株式会社阪村機械製作所に入社。1974年、父親が経営する有限会社カメラのたかたに入社。1986年、有限会社カメラのたかたから分離独立し、株式会社たかたを設立。1999年、社名を株式会社ジャパネットたかたへ変更。2015年、株式会社ジャパネットたかたの代表取締役を退任。株式会社Aand Liveを設立。

――「変化」ということを高田さんはどのように考えますか。

4~5年前まで、「変化対応しなければ、企業は生き残れない」と言われていましたよね。しかし、それでは今はダメ。変化に対応しても生き残れない。それ以上に変化の方が早いからです。生き残るためには変化を創り出す、変化を創造するということが重要です。そうしなければ、今の時代生き残っていくことは難しくなっている。

商品開発を例にすると、「3年後にこんな商品を作るぞ」といっても今の時代はもう遅い。3年後にどのような世の中になっているかわかりません。世の中の流れが早くなっていますよね。だから、変化を自ら作っていかなければ、生き残っていくのが難しいのです。

変化を創り出すということは、“新しいことをやる”ということが革新・改革ではありません。企業が大変な時期に、畑違いのことを手がけて成功するかといったら、それはなかなか難しい。今まで手がけてきたことをコンバインし、新しいものを作り上げていくことも大切です。

変化を創り出す前に、自分たちのビジネスを振り返ってみましょう。最善のことを本当にやってきましたか? 考えてみてください。原点に戻ってみることは、新しいことを始める以上に大事なことなんです

――通販はデータビジネス。一方で、小売りには感性が必要な側面もあります。

データは参考になりますが、その数字は将来を決めるすべてではない。たとえば、3個売れた商品の中には、将来100万個も売る可能性を持った魅力を感じることがあります。逆に、1万個売れても、将来は萎んでいくんだろうなぁと実感するものもある。データが示した数字の裏の背景には見えないものがたくさんあります

たとえば、このインタビューで使っているボイスレコーダー。ジャパネットでも10年くらい前にヒットしました。一般的には会議や取材の用途で使われるもの。世間でもそのイメージしかなかった。当時、ナショナルブランドで年間40万台くらいの販売台数でした。でも、提案方法を変えれば、ジャパネットだけで年間40万台は軽く売れると思いましたね。

その提案方法というのが、会議以外で使うことの提案。「子供が早く帰ってきたときのメッセージとして、声を残しましょう」といったように、子どもへのメモやメッセージ代わりに使ってみたら、と家庭内での利用を提案したんです。

データだけではわからないことがある常に現場に足を運び、経験を培っていくことで、こうした“感”は培われるのかもしれません

ジャパネットはなぜ売れるのか 高田明氏が明かすモノ売りの神髄①
ジャパネットたかた本社内で撮影

――ネット通販の今後はどのようになると考えていますか。

ネット通販は私たちの会社とは真逆のビジネス。私たちのビジネスは、消費者の選ぶ手間を省くために、当社が選んだ商品を、こだわりを持って販売していきます。一方、ネット通販は、たくさんある商品の中から消費者が選択していくモデル。売れない商品も掲載できますよね。

私たちは提案によるプッシュ型のビジネスですが、ネット通販はプル型。どっちが伸びるの? と言えば、両方とも将来も伸びていく可能性があるでしょう。

ただ、高齢化社会が進む中で、70~80歳の方が自分で探すことができず、「ジャパネットに頼ろうか」となったときは、それに見合った価値を提供できるようにしなければなりません。

僕の勝手な考えを2つ。今後、スーパーの半分以上はネットスーパー用の倉庫機能になるんじゃないかな。コンビニエンスストアも集約されていって、倉庫機能を持つようになる可能性がありますよね。物流の変化というのはダイナミックに起きていくでしょう。

私たちの業界で言えば、電話での注文がなくなる可能性があると感じています。ジャパネットは、専用アプリをダウンロードしたスマホをテレビにかざせば、商品を購入できる仕組みを提供していますが、こうしたことが当たり前になってくるでしょう。テレビのリモコンで商品が購入できるような時代はすぐにやってくるはずです。

ただ、コールセンターの役割は変わっていくと思いますが、なくなることはない。アフターフォローなど、人間が介さなければならないことはたくさんあります。人を介することによる安心感の提供が注文などにつながっていく可能性だってあります。世の中はそうして変わっていくのでしょう。

――最後に、ネット通販業界に携わる人たちへのメッセージを。

私は40代までホテルの宴会とかでスナップ写真を撮影していました。その歳で通販業界に入ったのです。「自分が頑張るんだ」という情熱を持ち続けてきたからこそ、今の自分があると思います。「ミッション」「パッション」「アクション」。この3つを業界に携わる人は持ち続けてほしい。「アクション」が強すぎると若手がかわいそうになりますが(苦笑)。まだまだ若者には負けませんよ。

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瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、現在に至る。EC業界に関わること約13年。日々勉強中。

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