ECの拡大で膨れあがる荷物――中国ECで知っておきたいイベント時の顧客&発送対応法
中国のEC市場では、「W11(ダブルイレブン)」などさまざまなイベントが行われており、受注数が爆発的に伸びます。そのため、多方面から物流や配送といった業務に圧力が掛かります。中国向けECを手がける事業者は、イベント時での配送業務、顧客対応は最新の注意を払いたいところ。春節(中国のお正月。国民の祝日で7連休となる)を例に、イベント時の物流・配送業務の裏側、EC事業者が採用すべき対策などを紹介します。
配送センターの山積みの荷物に驚愕
2018年の旧正月の一週間前。私はあるECサイトで忘年会に使う特殊衣装を購入しました。しかし、色違いの衣装が届いたため、返品処理を行うためある配送センターに向かいました。
配送センターの入り口に立つと、60平米ほどの倉庫が箱であふれそうな光景を見て愕然。アルバイトのおじさんたちが、手慣れた手つきで荷物を仕分けているのですが、山積みの荷物はそう簡単に減るような状況ではありませんでした。
2018年の旧正月の5日前にも、ECで別の商品を購入しました。販売事業者は荷物を発送したとのことですが、荷物が届きません。そこで、販売事業者に尋ねてみると、
私:もしもし。一週間前にそちら(最寄の配送センター)に荷物が到着しているようですが、まだ手元に届いていません。至急届けてもらえませんか。配送員に連絡しましたが、携帯が電源オフの状態でつながりません。
販売事業者:大変申し訳ございません。新年を迎えるこの時期は配達が大変混みあっています。できるだけ早く対応させていただきます。
このような状況の後、販売事業者からは連絡も来なくなってしまいました。
春節の膨大な荷物、原因はEC購入の増加
こうした事象は、中国の1級、2級、3級都市における複数の配送拠点で発生しています。原因は、物流業界の繁忙期である旧暦新年(春節)を前に、年越しグッズのEC購入が一気に増えているため。ただでさえ春節前は繁忙期なのですが、ECの物量が急増しているので物流業界の負荷は膨大なものとなっています。
ちなみに、旧暦新年は一刻も早く帰省したいという人が多いため、配送員の人手不足は深刻な事態となっています。
春節のEC購入が進んだのはここ数年のことです。「618」(JD.comの会社設立記念日、6月18日にちなんで行われる大型キャンペーン)、「ダブルイレブン」(11月11日の独身の日に行われる世界最大のECサイト「Tmall」の販促イベント)、「ダブルトゥエルヴ」(12月12日のネット通販イベント)とは異なり、数年前まで空白マーケットだったんです。
数年前までは配送スタッフ、カスタマーサービス担当者は帰省していたため、ほとんどのECプラットフォームではサービスが停止された状態だったんです。
しかし、数年前からニューリテール事業の台頭や物流サービスの拡充などによって、主要ECプラットフォームは春節期間を狙ったキャンペーンを始めました。天猫(Tmall)、京東商城(JD.com)、蘇寧(SUNING)などのECプラットフォームは年越しキャンペーンを実施し、春節期間もサービスを継続。国内外の高品質商品を消費者に届けるようにしました。
こうしたECプラットフォームの取り組みに伴い、順豊速運(SFエクスプレス)、EMS、圓通速逓(ユゥエントン)、韻達快運(ユンダー)、百世匯通(バイシー・フイトン)などの宅配会社も、「春節は休まない」というサービスの提供をスタート。ただし、春節期間は多くの宅配会社で、荷物1個あたりプラス10元の配送料金をユーザーから徴収することにしました。
実家へ帰省し家族と春節を過ごす消費者にとって、ネット通販は購入した年越しグッズを実家に直送できるので、長距離移動が格段に楽になります。配送料金が上がっても、ECで年越しグッズを買う消費行動は伸び続けています。
送料は値上げしたものの、配送サービスの品質は追いついていません。そのため、配送業者が運搬中に乱暴に扱い、荷物が破壊されることは少なくありません。EC事業者にとって大きな損失となることはもちろん、ECサービスをワンストップで提供しているトランスコスモスチャイナにとっても大きな課題となっています。
こうした春節期間において、どうすれば顧客に高品質なサービスを提供できるのか。トランスコスモスチャイナが考えている対策は次の通りです。
EC事業者へのTips
① 春節の前にトップページにお知らせを出す
ECサイトのトップページに、春節期間より前にお知らせを出します。たとえば、
- ○月○日から○月○日まで春節となります。期間中は、商品の配送が遅れる可能性があります。予めご了承ください
- ○月○日から○月○日まで発送はお休みです
- ○月○日から○月○日までに、支払を完了したお荷物は○月○日に発送します
- カスタマーサービスは、○時から○時までにお問い合わせいただいたものに対応します
など、事前に事業者としてできる限りの対応を顧客に知らせます。
② 実店舗での購入を提案する
代案(実店舗での購入、返金など)を提案します。どうしてもこの時期にほしいという顧客に対して、配送可能なプラットフォームで商品を購入するようアドバイスします。このような対応によって、顧客満足度を維持すると同時に顧客の購買体験向上につながります。
今年の春節期間にあった事例を1つ紹介します。ある日系アパレル企業では、中国で500店舗以上を持つ強みと365日無休で営業するOtoO(Online to Offline)のニューリテール事業を生かし、「ネット上で購入した商品を最速24時間以内に実店舗で受け取ることができる」サービスを提供。大きな荷物を持ち歩く不便さを解決すると同時に、確実に商品を受け取ることができるサービスの提供を実現しました。
また、実店舗では他に「サイズ無料変更、商品楽々交換」といったアフターサービスの提供もスタート。消費者の多様なニーズに応えると同時に、春節期間の買い物の不便さを解決しました。
③ EMS、順豊速運(SFエクスプレス)など、春節期間も配送サービスを行う宅配会社を優先的に選択する
④ 顧客に年越しグッズをプレゼントする
⑤ 配送員に直接依頼する
商品の配送状況を随時確認。配送員に連絡を取り、新年の挨拶をして「この商品をなるべく早く配送してくれますか」など、礼儀正しく依頼します。
⑥ 梱包に注意する
乱暴な扱いによる商品の破損が頻繁に発生するため、商品の梱包方法に注意をしましょう。いくつかの梱包方法を紹介します。
みんなが休みたい春節期間に頑張って仕事を続けるカスタマーサービス担当者や配送員。商品が無事届いたときには、心からの「ありがとう」を送ってあげてほしいですよね。
参考資料
年味越来越淡?优衣库想要这样陪你玩转新年 | 服装新聞
http://news.efu.com.cn/newsview-1246286-1.html
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[主要30の国・地域のEC市場概況]
- 世界のEC市場規模予測
- 地域別EC市場データ
- 30の国・地域のEC市場ポテンシャル
- 越境EC市場規模およびEC利用者の推移
- 国別EC市場規模ランキング
- 世界8都市のEC利用動向
- EC市場データランキング(TOP10)
- 各国のEC市場環境比較表2021年
などを掲載。アジア太平洋、北米、中南米、欧州、中東・アフリカなど、主要30の国・地域について、各国のEC市場環境比較表などを掲載しています。
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