高野 真維 2022/12/14 7:00

コロナ禍で越境EC市場が注目を集めている。海外ユーザーの獲得はEC事業者にとって売上拡大に欠かせない一方、参入障壁の高さなどに不安を感じて二の足を踏んでいる事業者も少なくない。

越境EC市場に進出するメリットと成功のポイントを、佐川グローバルロジスティクス取締役などを歴任し、国内・国際物流、海外ビジネス戦略構築の経験を持つCAFE24 JAPANの正代誠代表取締役社長に聞いた。

EC化率上昇傾向のいまが狙い目! 顧客獲得の勝機を掴め

―― コロナ禍の昨今、越境EC市場に進出するEC事業者が増加している。改めて、越境EC市場に進出するメリットを教えてほしい。

正代社長:メリットはいくつかある。1つ目は、コロナ禍でEC化率が上昇傾向にあるため、マーケットで注目されやすく、越境ECに参入すると顧客数を増やしやすいこと。

2つ目は、インバウンド消費を通じて外国人を将来の顧客に育成しやすいこと。越境ECの販売チャネルを通じて、本国に帰国してからも越境ECで日本の商品を買ってもらいやすい。

このほか、ローコストで海外市場に進出できるという点もあげられる。海外にリアル店舗を出店したり、卸売りをするのは何かと莫大な費用や時間がかかる。越境ECならその点、最低限の運用コストで海外の市場に食い込める点が魅力だ。

国内外のビジネス展開を支援するECプラットフォームを手掛けるCAFE24 JAPANの代表取締役社長、正代誠氏
国内外のビジネス展開を支援するECプラットフォームを手掛けるCAFE24 JAPANの代表取締役社長、正代誠氏

EC運用は【国内マーケット+海外マーケット】をフル活用して

 

―― 正代社長は越境ECの活用をどのように捉えているか。

正代社長:ECに国境はなく、開かれたマーケットだ。ECを国内向けにしか運用していない事業者は、ECのポテンシャルを本来の半分しか生かせていないといっても過言ではない。ぜひ、海外向けのECを視野に入れてEC市場を100%活用してほしい。

―― 越境EC進出のデメリットや注意点は。

正代社長:デメリットもいくつかある。1つ目は、返品対応のハードルが国内向けのECよりも高くなること。返品だけでも海外運賃の配送コストがかさみやすく、現地で検品するための人件費がかさむこともある。また、返品にかかるコストを削減するために、たとえ再販売できる状態の商品でも現地で破棄しなくてはならないケースもある。

2つ目は、クレジットカードの不正利用を国内向け以上に注意すること。複数のクレジットカードをECサイトで利用する人が増えるため、その分不正利用のリスクが発生しやすい。たとえば、IDやパスワードを使いまわししているユーザーの情報が第3者に漏えいした場合、パスワードリスト攻撃の被害に遭いやすくなってしまう。

クレジットカード不正利用のリスク管理や、商品の返品・破棄対応に注意の必要がある
クレジットカード不正利用のリスク管理や、商品の返品・破棄対応に注意の必要がある

3つ目はラストワンマイルの配送。パートナー企業との連携は欠かせない。パートナー企業の選定は、日本企業とこれまでに取引の実績があるなど、日本の企業を理解したパートナーを選ぶことを強くお勧めする。

進出する国の市場リサーチは入念に

 

―― 越境ECのマーケットで成功するためのポイントをぜひ教えてほしい。

正代社長:まず、越境ECで販売する商材の選定をしっかり行うこと。日本で売れ行きが好調な商材が、必ずしも海外で反響を得られるわけではない。また、その逆パターンもある。それぞれの国によって売れやすい商品、売れにくい商品があるので、越境EC市場に進出する前に慎重なリサーチを重ねることが大切だ。

また、進出する国の言語にローカライズしたECサイトを構築してほしい。国内向けのECサイトを機械的に翻訳するだけでは、海外の顧客向けにどのようなニュアンスで言葉が変換されているのかわかりにくい。商品の訴求力や顧客満足度に関わる。

入念なリサーチがヒット商品になるかどうかの明暗を分ける
入念なリサーチがヒット商品になるかどうかの明暗を分ける

勝機はSNSマーケティングにあり! 

 

―― 国内向けのECでは昨今、SNSの運用がUGCマーケティングなどで注目されている。越境ECではどのような位置付けか。

正代社長:SNSの運用は国内向け以上に力を入れてほしい。海外の顧客は日本以上にスマホでECサイトを利用する人が多い。このため、SNS経由の購入も盛んだ。

プロモーションは、海外市場は日本よりもSNSによるマーケティングが強力だと考えて販促に臨んでほしい。ECサイトのユーザーインターフェース(UI)・ユーザーエクスペリエンス(UX)も、スマホファーストを意識してみると良いだろう。

SNSマーケティングは国内以上に肝要となる(画像はイメージ)
SNSマーケティングは国内以上に肝要となる(画像はイメージ)

―― 国内外におけるアフターコロナのEC市場の展望を聞かせてほしい。

正代社長:国内EC市場では、コロナ禍の巣ごもり需要などが落ち着き、成長の度合いは鈍化していくのではないかとみている。すでに2022年は、2021年と比較すると鈍化しているように思う。

一方で、国外のEC市場は成長チャンスがまだ豊富だと思う。プレイヤー(EC事業者)が
まだ、国外に進出しきれていないからだ。

先述のインバウンド観光客を例に挙げると、国内の店舗に卸売りしている商品に、越境ECで購入するときに利用できる割引クーポンや、越境ECのサイトリンクをQRコードで誘導すれば、アフターコロナでインバウンドの盛り上がりがあるときにもECサイトの回遊を増やすことができる。

このチャンスに気が付かず、「インバウンド需要があるときはECサイトの利用は見込みにくいだろう」とあきらめてしまう事業者は多い。非常にもったいないと思う。

アフターコロナで期待されるインバウンド需要の復活はECサイトの回遊につなげる好機にもなる(画像はイメージ)
アフターコロナで期待されるインバウンド需要の復活はECサイトの回遊につなげる好機にもなる(画像はイメージ)

国内・海外の両方の販売を強化する「ハイブリッドEC」を進めるために

 

―― 改めて、越境ECを始めるときに抑えておきたいポイントを整理してほしい。

正代社長:これまでに解説した内容とも一部重複するが、抑えておきたいポイントは次の通りだ。

■現地にローカライズしたECサイトの構築
■現地の消費者需要やトレンドを捉えた商材の選定
■ECモールとの併用(認知度向上に寄与、販売促進のスピード向上につながりやすい)
■最適なペイメントサービスの立ち上げ(決済スキームの整備)
■輸送手段の確保(ラストワンマイルの配送まで考慮した輸送手段の確保)
■現地に適したマーケティングの展開(SNSの運用、SEO対策など)


また、越境EC進出にあたっていきなり高額の投資にかじを切るのではなく、少額のコスト感から徐々にPDCAサイクルをまわして市場の感覚をつかんでほしい。

たとえば、越境ECが盛んな中国市場でいきなり、莫大なコストをかけて越境ECの成功を狙う事業者が少なくない。成功すれば何よりだが、うまくいかなかったときに中国以外の市場に挑戦する企業体力が残っていないケースもある。

正代社長は市場の反響を踏まえながら少しずつアクセルをかける進め方を勧めている(画像はイメージ)
正代社長は市場の反響を踏まえながら少しずつアクセルをかける進め方を勧めている(画像はイメージ)
この記事が役に立ったらシェア!
これは広告です

ネットショップ担当者フォーラムを応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]

[ゴールドスポンサー]
ecbeing.
[スポンサー]