SNSを活用して海外ユーザーに向けて発信することが大切――ジグザグが語る越境EC成功のポイント

コロナ禍やインバウンド復活により越境ECを利用する海外ユーザーが増加している。EC事業者のなかでも注目度が高いが、成功につながるポイントは何だろうか? 「WorldShopping BIZ」を提供するジグザグに聞いた

松原 沙甫[執筆]

1月14日 8:00

越境ECを支援するソリューション「WorldShopping BIZ(ワールドショッピングビズ)」を提供しているジグザグ。導入企業数は3000社を超え、国際色豊かなスタッフ構成で228の国と地域へ対応をしている。ソリューション事業を統括する鈴木賢氏(取締役 ウェブインバウンド エバンジェリスト)に、越境ECの現状や今後の見通しを聞いた。

国内3000以上のECサイトを海外対応化。越境ECに挑戦する事業者を支援

――ジグザグの事業、導入実績、担当業務について簡単に紹介してほしい。

鈴木賢氏(以下、鈴木氏):WebサイトやECサイトに訪問した外国人に対して、ジグザグが代わりに商品を購入し配送や問い合わせ対応もする、いわゆる購入代行を手がけている。国内事業は私が管掌しており、2020年1月の入社後、ジグザグのサービスを活用して、国内3000以上のECサイトの海外対応化を進めた

入社当時から取締役として、国内事業者と海外カスタマーをつなぐサービス「WorldShopping BIZ」事業を指揮している。コロナを機にサービスが大きく伸長。クライアントからも「売上ダウンしてしまった実店舗分をフォローするために、ジグザグのサービス導入を検討している」という問い合わせが大幅に増えた。また、「EC事業を伸ばすために、海外対応を強化しよう」というEC担当者も増加した。

ジグザグ 取締役 ウェブインバウンド エバンジェリストの鈴木賢氏(画像提供:ジグザグ)
ジグザグ 取締役 ウェブインバウンド エバンジェリストの鈴木賢氏(画像提供:ジグザグ)

――越境ECマーケット全体に関する現状、先行きについて鈴木氏の見解を伺いたい。

鈴木氏コロナ禍でECサイトを運営する事業者が増え、国内事業者の売り上げも伸びた。海外顧客が購入する商品量も増え、日本のブランドを知る外国人が増えたことが要因だ。

アフターコロナでも日本のブランド・商品への注目は引き続き高く、越境ECの成長は続いている。訪日外国人自体の数も増え、帰国後も越境ECを利用してリピーター化している顧客が増加しているからだ。

しかし、各国・各地域にそれぞれの法律やルールがあり、事業会社が1社だけで対応するのは厳しい。そのため、228の国と地域に対応しているジグザグのようなエージェントがEC事業者と海外ユーザーの間に入ってグローバル販路の支援をすることは、有意義だと思っている。

対応している国・地域の一例(画像は「WorldShopping BIZ」サイトからキャプチャ)
対応している国・地域の一例(画像は「WorldShopping BIZ」サイトからキャプチャ)

SNSを無料の販促ツールとして活用し、「訪日外国人の情報源になっている」意識づけが大切

――越境ECの現況を踏まえて、事業者が取り組んだ方が良い施策などを教えてほしい。

鈴木氏:国内だけでなく世界ともつながっているInstagram、X(旧Twitter)、FacebookなどのSNSは、無料の販促ツールとしてぜひ活用してほしい。海外ユーザーがよく使っているハッシュタグもそうだ。自分たちのブランドを国内消費者だけが見ているわけではなく、「訪日外国人にも見られている」という意識づけをすることから取り組んでほしい。そうすることで何かを始める際に、「海外にも既に自社のファンがいる」という状態から始められる。とにかく発信していくことが重要だ。

――注目のエリア、ターゲットとしてお勧めの国・地域などはあるだろうか。

鈴木氏:越境ECマーケットとしてお勧めのエリアは台湾。親日家が多いことや、人口が大きすぎないため、小規模から越境ECをチャレンジできる。

引き合いが一番大きいのは米国だ。中華系をルーツに持つ米国人が購入者になることが多い。国という単位ではなく、人種のくくりでターゲットを考えると良いかもしれない。

――越境ECマーケットに関して、ジグザグのサービスが日本製品および事業者の越境ECにとって、GMV(流通取引総額)や越境ECスタートなどにどのように貢献していると思うか。

鈴木氏:海外対応のハードルを著しく下げたのがジグザグだと自負している。国内の中堅から大手事業者だけなく、年商1億円以下の事業会社でも導入実績が多い。タグを1行入れるだけですぐに海外対応できるという、海外進出の1歩を踏み出すチャンスを提供している。

越境ECを始めたとしても、どのような結果になったかわからないと施策の意味がない。そのため、ダッシュボード機能(管理画面)を開発し、どの国でどのような人が購入し、どれくらい売れているかを可視化して、事業者が把握できるようにした。個人情報保護の観点から、名前と連絡先は伏せた状態にしている。

それまでは「購入代行側が海外カスタマーの買いたいEC Shopの購入を代行する」ので、個人情報保護の観点から消費者の詳細は購入代行者しかわからない仕様になっており、EC Shopは「いくら売れたか」しか情報を得られない状況だった。

自社のECサイトにタグを1行追加すると海外販売に対応できる(画像は「WorldShopping BIZ」サイトからキャプチャ)
自社のECサイトにタグを1行追加すると海外販売に対応できる(画像は「WorldShopping BIZ」サイトからキャプチャ)

――EC業界に携わる人に「ポジティブに、かつ現実的に」という目線を持つ大切さを啓発している。そのように啓発している具体的な理由は。

鈴木氏:一気にグローバル販路を拡大しようとしてもうまくいかない。海外から自社の商品・サービスへの引き合いが大きくなってきたり、海外販路が出てきたりしたときに初めて具体的になってくることを認識してほしいためだ。

たとえば、SNS上で海外ファンからの反応があったら、「なぜお客さんになってくれたのか」「どのようなルートで商品を見つけてくれたのか」をきちんと掘り下げて、海外からの反応をもらいやすい環境作りも大切になる。いろいろな国で少しずつでもファンが増えていくというやり方が大切だ。1つの市場でドカンと当てるのではなく、広くさまざまな国で少しずつファン作りを行う方が今の時代に合っているということを事業者の皆さんには知ってほしい。

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