米国・欧州Amazonの顧客があなたの自社ECサイトで簡単に買い物できる方法とは? 「Amazon Pay」「ジグザグ」が実現したスゴイ仕組み
米国・欧州のAmazonのアカウントを保有する顧客が、日本の自社ECサイトにアクセスし、自身のAmazonアカウントを使って簡単に買い物できる――。このように、海外の消費者が簡単に越境EC形式で日本の商品を購入できる仕組みがついに実現した。
この取り組みを実現したのは、越境EC・ウェブインバウンド対応サービス「WorldShopping BIZ」を提供するジグザグと、Amazonが提供するオンライン決済サービス「Amazon Pay」。“越境EC購入でも買いやすい”ショッピング体験の提供に至った背景などについて、ジグザグの仲里一義社長、アマゾンジャパン Amazon Pay 事業本部 本部長の井野川拓也氏に話を聞いた。
「Amazon Pay」「WorldShopping BIZ」の協業で実現したことは?
「Amazon Pay」が海外のAmazonアカウントを持つ顧客による決済にも対応できるようになったらありがたい。
「Amazon Pay」導入企業から要望があがっていた「海外のAmazonアカウントを持つ顧客による決済」に対応したのが今回の協業策。ジグザグの越境EC・ウェブインバウンド対応サービス「WorldShopping BIZ」を導入している日本の自社ECサイトでは、アクセスしてきた海外の消費者が、自身が使用している米国・欧州のAmazonアカウントを使い、「Amazon Pay」を通じて越境EC形式で決済できるようになったのだ。
「WorldShopping BIZ」を導入している日本のECサイトにアクセスした米国・欧州の消費者は、クレジットカードなどの決済手段に加えて、「Amazon Pay」を選ぶことができるようになった。普段使いしているAmazonアカウントで買い物ができるようになるため、異国のECサイトでも安心・安全に決済できるという仕組みだ。
このスキームは、米国・欧州のAmazonアカウントを使い日本のECサイトでも決済できる特別仕様の「Amazon Pay」を、「WorldShopping BIZ」が実装することで実現した。「WorldShopping BIZ」を導入している日本のEC事業者は、開発や運営オペレーションの変更を行わず、「WorldShopping BIZ」のタグを1行設定するだけで、米国・欧州のAmazonアカウントを保有する顧客に越境EC形式で自社ECサイトでの買い物体験を提供できる。
これまで、海外のAmazonアカウントを持つ顧客は、日本国内の自社ECサイトでの買い物に際して「Amazon Pay」を使うことができなかった。今回の協業は、海外のAmazonを利用する顧客が初めて日本の自社ECサイトで「Amazon Pay」を利用して決済できる取り組みとなる。
拡大する越境ECの利用に対応できる
この仕組みにより、EC事業者は拡大傾向にある越境ECの利用に対応することができるようになる。『海外ECハンドブック2019』(著者:トランスコスモス株式会社)によると、グローバル越境EC市場規模は2020年に9940億ドルまで拡大する見込み。特に、北欧、西欧、そしてアジア太平洋などの各地域で越境EC利用が進むと見られている。
また、米国のAmazon.comが公表した「年次報告書(2019年)」によると、全体売上(AWSなど含む)における地域別売上の割合は米国が69%、ドイツが7.9%、イギリスが6.2%。この3か国でAmazonの全体売上の83.1%を占める。他のエリアを含めるとその割合はさらに増えるとみられる。
「WorldShopping BIZ」と「Amazon Pay」を実装した日本のECサイトは、Amazonアカウントで買い物する多くの海外ユーザーを、見込み客とすることができるようになる。
「Amazon Pay」と協業した「WorldShopping BIZ」とは?
「WorldShopping BIZ」は、大幅なサイト改修を伴わずに、JavaScriptを1行、自社ECサイトに設置するだけで、越境ECに対応できるサービス。世界125か国を対象とした海外販売対応を実現できる。
海外IPアドレスとブラウザ言語を識別し、海外ユーザーに最適化した「多言語ナビゲーション」「かな入力が不要なフォーム」などを表示。「WorldShopping」専用カートで注文を受け付け、ジグザグが受注処理や発送までを運用していく仕組み。インボイスの作成、国際配送の手配、多言語カスタマーサポートもジグザグが行う。
特別な開発、運営オペレーションの変更を行わずに越境EC販売に対応できるため、海外の消費者によるショッピングニーズに対応したい国内EC事業者からの引き合いが増加。大手から中小企業まで500社以上が利用している。
決済という側面では「WorldShopping BIZ」は主要クレジットカード、「PayPal」「銀聯カード」「Alipay」など多様な決済手段に対応しているが、今回、これらの決済に「Amazon Pay」が加わった。
「Amazon Pay」「WorldShopping BIZ」が協業した理由
ジグザグ仲里一義社長(以下仲里):海外の人が日本の実店舗などを訪れるインバウンドのように、オンラインでも日本のECサイトでインバウンドが発生しています。当社では“ウェブインバウンド”と呼んでいますが、自社ECサイトへの海外からのアクセスは全体アクセスの2~8%と言われています。アクセス解析をすれば海外ユーザーが訪問してきていることがわかるはずです。平均的には日本国内のアクセスが95%前後を占めているため、EC事業者は海外からのアクセスをほとんど意識することなく見過ごしてしまっている。しかし、“ウェブインバウンド”ニーズを開拓しようと考えているEC事業者は、リアルのお店に来店する海外ユーザーへの対応と同様に、わずかな海外からのアクセスにも注目し、対応しているんです。
海外ユーザーが日本の自社ECサイトにアクセスし、商品ページが翻訳されていなくても商品をショッピングカートに入れるところまではできます。しかし、仮名入力、住所選択などで次のステップに進むことができません。つまり、日本のショッピングカートは海外ユーザーのアクセスに対応していないんです。仮にカートシステムが海外対応できるとしても、EC事業者側でのカスタマーサポート、不正決済対応、国際物流対応といった別の課題も存在します。
「WorldShopping BIZ」は越境ECに対応したいEC事業者さまのニーズに応えるもので、タグ一行をECサイトに埋め込めば、“ウェブインバウンド”に対応できるようになります。初期費用は3万円、月額5000円。海外発送、決済、カスタマーサポートはジグザグが対応するので、EC事業者さまは現状の業務オペレーションを一切変えることなく、ほぼノーリスクで越境ECに対応できるようになります。
アマゾンジャパン Amazon Pay 事業本部 本部長 井野川拓也氏(以下井野川):Amazonの理念は「地球上で最もお客さまを大切にする企業になること」です。決済分野でも、お客さまに簡単・便利にお買い物いただけるようにするため「Amazon Pay」を提供しています。Amazonは出品サービスを通じて中小規模の事業者さまの越境ECのサポートを強化しています。そうした中、日本のEC事業者さまから「海外のお客さまにも『Amazon Pay』で自社商品をご購入いただけるようにしてほしい」といったお声をいただいていました。ただ、越境ECに関しては、インボイスや国際配送、カスタマーサポートなど、決済サービスである「Amazon Pay」ではサポートできない領域があります。今回、それらの課題を解決し、米国・欧州のAmazonアカウントをお持ちのお客さまも簡単に、安心・安全に日本のECサイトで「Amazon Pay」を使ってお買い物いただけるよう、ジグザグさんと協業することになりました。
仲里:そうなんです、海外からの注文対応は決済対応だけでなく、国内販売とは異なるシステムやオペレーションといった課題が多いんです。1つの例が配送住所のデータの郵便番号や国など。例えば郵便番号がない国や、日本と桁数が異なるのは当たり前です。日本国内の住所フォーマットに海外の住所が入ると、システムエラーを引き起こす可能性があります。国内向けECサイトシステムは、海外からの注文を想定していないのでエラーが発生してしまうんですよね。
ほかにも国際輸送には通関手続きに必要な書類に商品内容を英文で記載する必要もあり、商品情報を英語で管理する必要も出てきます。不正決済対応や国際輸送の梱包、カスタマーサポートなど、海外からの注文に対応できる体制を構築しなければなりません。「Amazon Pay」の活用で、海外アカウントからの決済に対応できたとしても、EC事業者さまのバックオフィスが海外からの受注に対応していなければ、ご注文にきちんと対処することができません。今回の「WorldShopping BIZ」と「Amazon Pay」の取り組みは、決済から言語対応、受注、配送までの課題を一気に解決するものなんです。
βテストで20以上の海外エリアの顧客から「Amazon Pay」で決済
井野川:テスト段階から非常に高いニーズがあったとお聞きしています。
仲里:約3か月間、すでに「WorldShopping BIZ」を導入している25社限定でクローズドのβテストを行いました。3月から実施したところ、21の国と地域のお客さまからご注文が入りました。アメリカ、カナダ、メキシコ、台湾、シンガポール、香港、韓国、タイ、マレーシア、マカオ、ベトナム、イギリス、スイス、オランダ、フランス、ドイツ、リトアニア、イタリア、アイルランド、……。米国・欧州のAmazonアカウントをお持ちのユーザーですが北米や欧州の他、南米、アジア、オセアニアなどさまざまなエリアにお住まいのお客さまが、「Amazon Pay」を使って決済しました。商材によって異なりますが、平均比率で示すとアジア圏が57%、北米が25%、ヨーロッパは15%でした。
井野川:EC事業者さまにとっては、ほぼ手を煩わすことなく、21の国と地域にお住いのAmazonのお客さまが新しいお客さまになったのですね。それぞれの企業さまの反応はどうでしたか?
仲里:テスト前からポジティブな意見があがっていました。テスト展開で25社の皆さまにご意見を伺ったときには、「衝撃的ですね」「これは本当にすごいですね」といったお声がありました。
井野川:皆さん待ち望まれていたサービスだったのですね。テスト導入されたECサイトではどのような反響がありましたか?
仲里:「WorldShopping BIZ」を以前から活用しているハースト婦人画報社さまのECサイト「ELLE SHOP(エル・ショップ)」では、「Amazon Pay」導入後にあたる3月度の月次売上は2月度比384%でした。さらに、合わせ買いが同1.2倍で、購入単価も飛躍的にあがりました。国別レポートでは、アメリカからの受注が4倍で、その他の国が2倍に。セール品はもちろん、定価商品のご購入もありました。また、「Amazon Pay」でリピート購入しているケースも増えています。
井野川:「Amazon Pay」「WorldShopping BIZ」を一緒にご提供することで、事業者さまは、便利に、簡単に、そして安心・安全にお買い物ができる環境をお客さまにご提供できるようになります。海外のお客さまからすれば、日本という異国のECサイトでも、Amazonのロゴが入ったボタンがあることで、ご安心いただけるのかもしれません。Amazonと同じように、簡単にお買い物できる。ですので、リピート頂けるお客さまも多いのでしょう。
日本の質の高い商品を購入したいと思っているお客さまが世界各国にいます。今まで、そうしたお客さまのニーズに日本の自社ECサイトとして対応するために多くのハードルがあったと思います。「Amazon Pay」「WorldShopping BIZ」双方のサービスを使うことで、事業者さまは世界中のお客さまに安心して商品をお届けすることができます。それが最大の価値です。
仲里:確かに、自社ECサイトで世界中の“欲しい”に応えることが難しい環境でした。日本の自社ECサイトが売り手としてこだわりのあるメッセージを届けながら、世界中の消費者の方にどんどん商品をお届けできるようになるという、ショッピング環境作りにさらに貢献していきたいですね。
「WorldShopping BIZ」「Amazon Pay」を導入したい事業者はどうすればいい?
仲里:お買い物されるお客さまが「WorldShopping BIZ」上で「Amazon Pay」を利用するという仕組みになります。新規に「WorldShopping BIZ」を利用される事業者さまは「WorldShopping BIZ」のHPからお申し込みください。
その後、「Amazon Pay」への審査申込を行い、「Amazon Pay」の審査を経た後、「WorldShopping BIZ」上でAmazon Payをご利用いただけるようになります。すでに国内の「Amazon Pay」を実装されているEC事業者さまは、Amazon Payの出品者IDで照合するといった仕組みとなるので、簡単な手続きで申し込むことができます。
井野川:「Amazon Pay」をすでに導入しているEC事業者さまは、「WorldShopping BIZ」のお申し込み後、ECサイトにタグを1行設定するだけなので、すばやく越境ECに対応することができますね。
世界のお客さまにコンタクトできる機会を
井野川:今回の「Amazon Pay」「WorldShopping BIZ」の協業は、手軽に越境ECに対応できるとても魅力的な方法だと思います。「こだわりのある商品は自社ECサイトでしっかりと伝えて売っていきたい」という日本のEC事業者さまには最適な販売手法になると感じます。手間をかけずに世界各地からのご注文に対応できるのですから。それにコスト面においても魅力的なのではないでしょうか。
仲里:今、海外で日本ブランドの商品が転売されていて困っているということをよく耳にします。こうした事態を防ぐためにも、ブランド各社さまがご自身で海外からの注文に対応できるようになることは今後、より求められていくことでしょう。これまでリソースやコスト、仕組みの問題で「できなかった」というブランド、EC事業者の皆さまには、「Amazon Pay」「WorldShopping BIZ」の活用で、顧客に自社ECサイトにアクセスして購入いただける環境を用意するということを実現してほしいですね。
井野川:販売元のECサイトに直接アクセスして商品を購入できれは、それも安心・安全、簡単なお買い物体験ですからね。そうすれば、日本のECサイトを訪れるために検索し、購入されるお客さまが増えていきますよね。こうした好循環を生み出すためにも、1社1社の事業者さまの取り組みが重要であり、「Amazon Pay」としても決済サービスという観点から引き続きサポートしていきたいと思います。
EC事業者さまが販売チャネルを広げることによって、お客さまの購入時の選択肢が広がります。事業者さまにとって、国内だけでなく、海外にもチャネルを広げて、世界のお客さまにコンタクトする機会を作っていくことの重要性がこれから増していくのではないでしょうか。今回の「Amazon Pay」「WorldShopping BIZ」の協業は、販売事業者さまの新規顧客の獲得、そして商品をご購入されるお客さまのご満足へとつながるはずです。