松原 沙甫[執筆] 1/6 7:00

家電のEC、レンタル、サブスクサービスを提供しているレンティオが安定した成長を遂げている。年商は非公表だが、累計注文数は120万件を突破。月間の利用者数は2ケタ成長を続けている。レンティオの成長要因や今後の展望などを、レンティオの三輪謙二朗代表取締役社長に聞いた。

アクティブユーザー数14万人超+累計注文数120万件超

――レンティオの事業、昨今の業績推移、EC事業の推移や足元の動きについて教えてほしい。

三輪謙二朗氏(以下、三輪氏):創業は2015年で、2024年で10期目となる。家電のサブスク・レンタルサービス「レンティオ」を提供している。サブスクサービス利用後にレンタルした商品を買い取ることができる「試してから買う」というビジネスモデルであり、実際に買い取りをするお客さまも多い。そのため、サブスクの継続率は他社ほど重視していない。

事業規模だが、年商は公表していないが、累計注文数は120万件を超えている。サービスを利用するアクティブユーザー数は月間14万人で、これはお客さまの6割となっている。決済数の伸び率は、2021年8月が前期比209増%、2022年8月期は同114%増、2023年8月期は同115%増で推移している。

「レンティオ」の決済数の推移(画像提供:レンティオ)
「レンティオ」の決済数の推移(画像提供:レンティオ)

「NPS(ユーザー満足度指標)」の過去最高値は31、2024年3月に実施した調査では+29.46%。顧客満足度が高い理由は、お客さまが使いやすいように設計したUI/UXの高さ。また、問い合わせは電話だけでなくメールなどでも対応しており、その返答の速さも評価されるポイントだと思っている。

「レンティオ」の月間利用者数、提携メーカー数などについて(2024年11月時点、画像提供:レンティオ)
「レンティオ」の月間利用者数、提携メーカー数などについて(2024年11月時点、画像提供:レンティオ)

このほか、「商品をきれいな状態で届けよう」ということを社員が意識していることもプラスに働いている。また、業務を内製化していることで、「自分の業務にきちんと取り組まないと、社内の人間に迷惑をかけてしまう」という意識を持つことにもつながっているのだろう。

レンティオ 代表取締役社長 三輪謙二朗氏(画像提供:レンティオ)
レンティオ 代表取締役社長 三輪謙二朗氏(画像提供:レンティオ)

――EC事業における自身の役割、担当業務は。

三輪氏:EC運営、マーケティング、サイト設計、仕入れ商品の選定まで、ECに関連する業務を広く管掌。家電メーカーとのやり取りのほか、事業開発も担当。商品仕入れに近い部分を担当し、細かい部分は営業部門が実施している。以前は人気の調理鍋などの仕入れにつなげたこともある。

「レンティオ」で扱っている商品の一例(画像は「レンティオ」サイトからキャプチャ)
「レンティオ」で扱っている商品の一例(画像は「レンティオ」サイトからキャプチャ)

所有権移転モデルを採用。「払いすぎている」というサブスクのイメージ払拭につなげる

――EC事業における自身のチャレンジを教えてほしい。

三輪氏:家電販売企業に勤めていた際、お客さまから「家電を借りたい」「買ったけれど気に入らない」という意見が寄せられていた。仕事以外の経験では、結婚式の余興で獅子舞が必要になることが多かったが、レンタルだと2万円、購入すると3万円かかる。

こうした経験から、「商品をレンタルするビジネスが儲かるのではないか」と思いレンタルビジネスを調査。ニーズや売り上げを立てる方法を学び、サブスクビジネスにチャレンジしていった。

また、所有権移転モデルを採用することで、サブスクにありがちな「払い過ぎている」というイメージの払拭につなげた。ただ、商品価格以上のサービス料を支払うようになると、「レンティオ」の評価が下がることになってしまう。

そのため、損失はあるが「レンティオ」らしさを出すために、2020年11月から商品ごとに定められた期間を超えると所有権がユーザーに移転するモデルに切り替えた。月額制プランの新規注文は、ビジネスモデルを変更してから顕著に伸びており、所有権の移転によって売り上げにきちんとつなげられている

レンタルした商品を返却せずに購入できるサービス「そのまま購入」(画像は「レンティオ」サイトからキャプチャ)
レンタルした商品を返却せずに購入できるサービス「そのまま購入」(画像は「レンティオ」サイトからキャプチャ)

「新たな売り方ができる場」を提供し、メーカーからの満足度も高い

――「レンティオ」ならではの魅力、やりがいは。

三輪氏ユーザー満足度が高いことがうれしいし、やりがいにつながっている。

サービスの仕組み上商品を返品するのだが、手紙を封入しやすいということもあってか、お客さまから感謝の手紙をいただくこともある。そういう手紙をいただけることもやりがいにつながっている。モノを売るだけでなく、お客さまに買わなくても良いモノを提案し、面倒な手間や予算を抑えて気になるモノを利用できるサービスを提供することが、感謝されることにつながっているのだろう。

メーカーにとっても新しい商品の売り方になっていると思う。通常の小売だと価格競争になってしまうが、私たちがメーカーの良いモノをお客さまに理解してもらえる場を提供することで、お客さまに納得して商品を利用してもらえる機会につながっている。「商品をレンタルしたお客さまのうち、何割が購入につなげているか」といったデータの共有もしているため、メーカーからの満足度も高い。

――今後の事業戦略、成長計画についてうかがいたい。

三輪氏:今後は取扱商品のジャンルを広げていきたい。サービス開始当初はカメラがほとんどだったが、2019年から家電を取り扱ったことで事業が拡大。リピート率が向上しただけでなく、ユーザーからの評価も上がった。現在は、家電以外の着物なども伸びてきており、家電以外を伸ばすことでリピート率向上やロングテールを作ることにもつなげられるだろう。

また、レンタルECサイト構築プラットフォーム「Rentify(レンティファイ)」の提供を始めた。すでにレンタル事業を行っている事業者、「レンタル事業を行いたいが、オペレーションがない」というメーカー・サプライヤーに提供。2024年春ごろからスタートし、現在約15社から契約が入っている。

2024年春ごろから提供を開始したサービス「レンティファイ」(画像は「レンティファイ」サイトからキャプチャ)
2024年春ごろから提供を開始したサービス「レンティファイ」(画像は「レンティファイ」サイトからキャプチャ)

「レンタルして試して、気に入ったら購入する」という消費行動はとても良い流れだと思っているので、自分たちのノウハウなどを他社にも提供していき、より良い社会作りに取り組んでいきたい。

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