2022年のモバイルアプリ市場、ダウンロード数とアプリ利用時間は好調だが消費者支出は減少。日本は消費者支出が多い一方ダウンロード数は減少傾向
米data.aiが発表している「モバイル市場年鑑」では、自社データを元にしたモバイル市場全体の傾向やアプリのダウンロード数の推移などをまとめている。ゲーム、ファイナンスなどさまざまな業界があるなかで小売・EC業界についても触れているが、世界全体と日本ではそれぞれどのような傾向があるのだろうか。
モバイルの1日の利用時間は約5時間
世界の上位10市場における1日あたりのモバイル利用時間は平均5時間6分で、2020年から9%増加した。
ダウンロード数とアプリ利用時間は好調だが、消費者支出は減少
2022年のダウンロード数、消費者支出、利用時間をみると、消費者支出は世界全体で前年比2%マイナスだった。ダウンロード数は前年比11%増、滞在時間は前年比9%増。
各項目について、モバイル市場トップ20か国の状況を発表しており、ダウンロード数が最も多かったのは中国、次いでインド、米国だった。
消費者支出(米ドル)でもトップは中国で、2位に米国、3位に日本がランクインした。2021年と比べて中国は増加しているが、米国、日本は減少している。
利用時間ではトップが中国、次いでインド、米国となり、いずれも2021年から増加している。
この結果について、data.aiの矢野恵介氏(既存事業責任者)は、「アプリのダウンロード数が増加している一方で、消費者支出額が昨対でマイナス成長となったのは、モバイル市場調査を開始してから初めての現象だ」と話す。
また、2022年における世界全体と日本の違いは、世界全体でアプリのダウンロード数は増加傾向にあるが、日本では消費者支出が多い一方でダウンロード数は14位である点だ。
日本は2021年と比較してアプリダウンロード数は5%マイナスになっているが、これはコロナ禍の変化とは関係なく、元々減少傾向にあった。
国内でスマートフォンの普及率が成熟してくると、アプリをダウンロードしにくくなる傾向がある。一方で、スマートフォンの普及が急速に進んでいる国では、普及率に比例してアプリのダウンロード数も増加傾向にある。(矢野氏)
ゲームへの支出が減少し、非ゲームアプリの支出が増加
2022年、消費者の可処分所得に対して大きな影響を受けたのはゲームアプリで、消費者支出が大幅に減少した。
2022年、世界全体で消費者がショッピングアプリに費やした時間は約1000億時間
2022年のショッピングアプリの年間利用時間をみると、世界全体では約1000億時間で、成長率は前年比9.1%だった。コロナ禍となった2019年から2020年の年平均成長率が20%だったことと比べると、成長率はやや鈍化した。
日本だけで見ると、ショッピングアプリの年間利用時間は約11億時間、前年比成長率は3.7%だった。2019年から2020年の年平均成長率は26.5%。
世界全体、日本ともに2019年から2020年時と比べると成長率は鈍くなっているが、「2019年から2020年はコロナ禍で、消費者の可処分時間が増えたことで異常な上がり方になった。その後は等分に増加している」と矢野氏は分析する。
クーポン&ポイントアプリのダウンロード数が上昇
2020年は、消費者が対面での買い物を避けることが多かったため、小売業者を中心にモバイルショッピングが急成長し、2020年における小売業向けアプリのダウンロード数は、前年比43%増加を記録した。
2022年には外出や実店舗でショッピングを行う消費者が増えた。一方で、商品価格の高騰などが消費者の懐を圧迫していることもあり、クーポン&ポイントアプリのダウンロードは前年同期比27%増加した。
2022年の日本では、「SHEIN(シーイン)」の前年比アプリダウンロード数が上昇した。また、急上昇ダウンロード数を見ると、10位以内に「マツモトキヨシ」「ココカラファイン」といったドラッグストアがランクインしている特徴がある。
「ドラッグストア=商品を安く買える」という意識が消費者のなかにあることや、実店舗で買い物をする機会が多く慣れ親しんでいることから、クーポンなどが紙からアプリに移行しても抵抗が少ないのではないだろうか。(矢野氏)