鳥栖 剛[執筆] 7:30

MM総研が発表した「ポイント/決済サービスの携帯キャリア別利用状況調査」(2025年8月時点)によると、ポイントサービス/クレジットカード/ECサイトのクロスユース率は、楽天モバイルが前回調査(2024年8月時点)に続きトップだった。

調査は、携帯電話利用者が契約先の携帯キャリアが提供する各種サービスを「最も利用している」と回答した比率(クロスユース率)を指標にしている。①ポイントサービス②QRコード決済③クレジットカード④ECサイト――の4領域を分析。なお、携帯電話はメインで利用しているものを対象としている。

ポイントサービス/クレジットカード/ECサイトのクロスユース率は楽天モバイルがトップ。経済圏の要となるポイントサービスのクロスユース率は75.5%で過去最高を記録、2位のドコモ(39.6%)に大差をつけた。3位のソフトバンクは37.5%まで伸ばし、前回調査からドコモとの差を縮めた。QRコード決済のクロスユース率では、ソフトバンクが前回調査比1.8ポイント増の57.3%でトップだった。

携帯キャリアユーザーのクロスユース率、ECサイトは「楽天市場」が6割、ポイントは楽天モバイルが過去最高の75%でトップ
ポイントサービス/クレジットカード/ECサイトのクロスユース率は楽天モバイルがトップ

ECサイトのクロスユース率

携帯キャリアが提供するECサイトのクロスユース率は、楽天モバイルユーザーによる「楽天市場」が61.4%で最も高く、前回調査から1.7ポイント上昇した。2位はソフトバンクユーザーによる「Yahoo!ショッピング」で26.4%、3位はauユーザーの「au PAYマーケット」で6.7%、ドコモの「dショッピング」は1.7%にとどまった。

携帯キャリアユーザーのクロスユース率、ECサイトは「楽天市場」が6割、ポイントは楽天モバイルが過去最高の75%でトップ
ECサイトのクロスユース率は楽天がトップ

「楽天市場」では、楽天モバイル契約者に対して常時ポイントが4倍になるSPU特典を提供しており、モバイル利用とEC利用を強固に結びつけていることが高いクロスユース率の維持につながった。

ソフトバンクは「Yahoo!ショッピング」利用時に最大10%還元が受けられる「SUPER PAYPAY COUPON」を毎月発行。また「LYPプレミアム」で2%のポイント還元が加わる仕組みを提供している。こうした優待施策がクロスユース率の押し上げ要因と見られる。

auは「Pontaパス」加入者は最大39%の還元が受けられるキャンペーンを展開。さらに最大1万円の割引クーポンが当たるガチャ施策などで利用を促進している。

ドコモは「dカード」決済時に通常より多くのポイントが貯まる仕組みを導入、今後の利用拡大に向けた取り組みを進めている。そのほか、ドコモユーザーのなかでこれまで「楽天市場」に次ぐ2位だったAmazonが今回の調査では33.3%で1位になった。2024年4月からのAmazonとの協業で、Amazonで「dポイント」を使える仕組みを整備。ドコモ回線契約者がドコモを通じてAmazonプライムに登録すると毎月120ポイントが還元される施策を導入している。こうした取り組みから、ドコモユーザーのEC利用先としてAmazonの存在感が一気に拡大したと見られる。

携帯キャリアユーザーのクロスユース率、ECサイトは「楽天市場」が6割、ポイントは楽天モバイルが過去最高の75%でトップ
ドコモユーザーのEC利用先は連携を深めているAmazonがトップ

ポイントのクロスユース率

楽天モバイルユーザーによる「楽天スーパーポイント」が75.5%と最も高く、2019年の調査開始以降最高を記録した。2位はドコモの「dポイント」で39.6%、3位はソフトバンクの「PayPayポイント」で37.5%となった。

携帯キャリアユーザーのクロスユース率、ECサイトは「楽天市場」が6割、ポイントは楽天モバイルが過去最高の75%でトップ
ポイントのクロスユース率も楽天モバイルがダントツ

楽天モバイルの契約者は常に「楽天市場」で通常の4倍のポイント還元率を受けられる。契約者が「楽天市場」を使うメリットが大きい仕組みのため、クロスユース率の押し上げに寄与している。

前回調査時と比較して最も高い伸びだったのは、ドコモユーザーによる「dポイント」で3.0ポイント増の39.6%。2024年12月に「dカード」「d払い」の利用でポイント還元率が上がるプランをスタート。さらに、「Netflix」「YouTube Premium」などの動画サブスクサービスの利用料金が最大25%ポイント還元される仕組みを導入し、「dポイント」を中心としたユーザーの囲い込みを強化している。

ソフトバンクは、新料金プラン「ペイトク」を提供、契約者は「PayPay」決済で1~10%の「PayPay」ポイント還元が受けられる。2022年3月末に「Tポイント」との提携を終了し、一時的に低下していたクロスユース率は2025年調査で37.5%まで上昇、2020年調査時点の「Tポイント」提携時の水準を超えた。「PayPay」を中核とした経済圏戦略が一定の成果を上げたと分析している。

auは、2024年12月開始の新プランでポイント還元率を大幅に強化し、「au PAY」特典を1%から最大5%、「au PAY」ゴールドカードの還元を1.5%から最大5%に引き上げた。同時期にスタートした「サブスクぷらすポイント」では、「Netflix」「YouTube Premium」などの対象サービス利用料金が最大20%ポイント還元される仕組みを導入。こうした施策が奏功し、auユーザーのクロスユース率は前回調査から2.6ポイント増の29.4%となった。

QRコード決済のクロスユース率

携帯キャリアが提供するQRコード決済のクロスユース率では、ソフトバンクユーザーによる「PayPay」が57.3%で最も高く、3年連続で半数超を維持した。次いで楽天の「楽天ペイ」が35.0%、ドコモの「d払い」が33.1%、auの「au PAY」が30.6%と続いた。

携帯キャリアユーザーのクロスユース率、ECサイトは「楽天市場」が6割、ポイントは楽天モバイルが過去最高の75%でトップ
QRコード決済はソフトバンクとPayPayのクロスユース率がトップ

ソフトバンクはモバイルユーザー向けに「スーパーPayPayクーポン」を提供し、レストランやドラッグストアなどで「PayPay」利用時に使えるポイント還元クーポンを毎月配布。そのほか「ペイトク無制限」契約者にはPayPay(クレジット/残高/ポイント)の買い物で最初の3か月10%、その後も5%還元を提供するなど、「PayPay」の利用メリットを強化している。また、「ソフトバンクプレミアム」の優待クーポンや、「1年間ずっとおこづかい増量キャンペーン」での送金額10〜20%還元など、多くの施策でユーザーの利用を促進している。

楽天は、「楽天ペイ」のバーコード・QRコード払いの利用で最大10万ポイントが当たるキャンペーンなど、モバイルユーザー向けにポイント還元施策を展開し、利用定着を図っている。

ドコモは2025年6月に開始した「ドコモポイ活MAX」や「ドコモポイ活20」では、d払い決済利用時に通常より最大3〜10%、1〜5%のポイント還元を上乗せする仕組みを導入。利用メリットを明確化し、クロスユース率の上昇につなげた。

auは同2.4ポイント増の30.6%となった。「auマネ活プラン+ 5G/4G」や「auマネ活バリューリンクプラン」で、au PAY決済で毎月最大1500円相当のポイント還元(実質5%還元)を提供。決済特典の強化がクロスユース率押し上げの要因とみられるとしている。

クレジットカードのクロスユース率

楽天モバイルユーザーによる「楽天カード」が65.5%で最も高かった。次いでドコモユーザーによる「dカード」が前回調査比2.6ポイント増の25.5%。ソフトバンクの「PayPayカード」は同2.1ポイント増の18.0%、auの「au PAYカード」は同1.9ポイント増の15.8%だった。

携帯キャリアユーザーのクロスユース率、ECサイトは「楽天市場」が6割、ポイントは楽天モバイルが過去最高の75%でトップ
クレジットカードのクロスユース率も楽天モバイルがダントツ

「dカード」が伸びた要因は、料金プランと連動したカード特典の強化があると分析。「ahamo」を除く全プランで「dカードお支払割」が適用され、通常の「dカード」契約者には毎月220円、「dカード」ゴールド以上では550円の割引が受けられる仕組みを提供している。また、「ポイ活プラン」では通常、1%の還元率に1~5%が上乗せされるほか、終了日未定のキャンペーン期間中はさらに5%が還元される。これらの施策がユーザーの実質的な還元率を高め、クロスユース率の上昇を後押ししたと見られる。

ソフトバンクは2023年10月に始めた「PayPayカード割」により、「PayPay」カードで通信料金を支払うと毎月187円の割引が受けられる仕組みを導入。また「ペイトクプラン」では、「PayPay」での「PayPay」カード決済(残高・ポイント払いも含む)に対し、3~10%のポイント還元を提供している。こうした料金割引とポイント還元の二重施策がクロスユース率を押し上げたとみられる。

auは「auマネ活プラン+ 5G/4G」「auマネ活バリューリンクプラン」で、「au PAY」カードでの決済特典として毎月最大1500円相当のポイント還元(実質5%還元)が得られる仕組みを導入。さらに「au PAYカード特典」として、通信料金の支払い時に毎月300円割引が受けられる制度も継続している。こうした料金割引とポイント強化策がクロスユース率を底上げしている。


楽天モバイルは前回調査時点(2024年8月)のユーザー数(770万人)から1年間で100万回線以上ユーザー数を伸ばしており、ユーザー数は900万回線規模へと拡大した。1年以内の新規ユーザー割合が高まる中でもクロスユース率は高水準を維持しており、楽天経済圏にいる既存ユーザーをモバイルに取り込む戦略が奏功している。

QRコード決済に関しては、2019年時点でソフトバンクを除きクロスユース率が各キャリアで1割以下だったが、2025年調査ではいずれも3割超に達し、各社が経済圏の拡大を着実に進めていることがわかった。

クロスユース率そのものでは楽天が前回調査に続き圧倒的だが、この1年間でドコモ、au、ソフトバンクが相次いで独自の料金プランを刷新し、料金とポイント還元を組み合わせて経済圏への取り込みを進めていることがわかった。各社の施策により、自社ユーザーの囲い込み強化と、ライトユーザーのヘビーユーザー化が進んでいる。MM総研では「今後も料金プランを起点とした経済圏戦略が深化し、クロスユース率を一段と高めることで、各社はより強固な経済圏の構築をめざすと考えられる」と調査を総括している。

携帯キャリアユーザーのクロスユース率、ECサイトは「楽天市場」が6割、ポイントは楽天モバイルが過去最高の75%でトップ
各項目のクロスユース率

調査概要

  • 調査対象:15~79歳の男女
  • 回答件数:2万6979人(4キャリアを個人利用かつメインで利用している回答者を対象に分析/ドコモ49.8%(1万3442人)、au 21.5%(5809人)、ソフトバンク 14.2%(3821人)、楽天モバイル 14.5%(3907人))
  • 調査方法:Webアンケート
  • 調査期間:2025年8月7日~25日
この記事が役に立ったらシェア!
これは広告です

ネットショップ担当者フォーラムを応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]

[ゴールドスポンサー]
[スポンサー]